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続・営業マンの言いなりになると危険だ

2016/12/24

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もう一つ、私が実際に不動産会社から紹介を受けた物件の話をする。
それは横浜駅の隣の駅から徒歩12分の物件だった。
新築のワンルームアパート。
横浜は人気のエリアなので魅力的に思えた。
現地を見に行った。
その物件の最寄り駅の改札で不動産会社の営業マンと待ち合わせをした。
営業マンは「タクシーで行きましょうか」と言った。
その日は5月の頭にも関わらず汗が吹き出す暑い日で、太陽の下を歩くのが億劫ではあったが、実際に歩いて12分で到着するかを確かめたかったのでお断りした。
駅を出て、国道を5分ほど歩いたところで、脇道に入った。
そこからは坂道が続いているようだった。
坂道は登れば登るほど険しくなった。
ついにどんなに頑張っても自転車では登れないであろう驚くほどの急坂が現れた。
息が切れ、足取りは重くゆっくりとなり、暑さも加わってクラクラとしてきた。
その坂を登り切り、続いてある緩やかな坂を登ったところに、その物件はあった。
営業マンが言うように、物件そのものは美しい外観を備え、日当たりは良好、風通しも良さそうないい物件だった。
間取りも一人暮らし向けにしては充分な広さを備え、新築ということもあって、建物だけを見れば人気がありそうなものだった。
しかし、立地が…。
確かに80m=1分と換算すれば徒歩12分なのだろうが、実際は17分かかってしまった。
しかもあの急坂。
 
完全に引いている私に、駅前の涼しい喫茶店で冷たい飲み物を勧めながら、営業マンは話した。
「坂はきついですが、横浜駅から1駅という立地に魅力を感じる人は多いのです。
 こちらの物件の管理会社さんは坂の上の他の物件の管理もしています。
 (ここで地図を広げ)この物件もこの物件もそうなのですが、どちらも満室です。
 客付けのうまい管理会社さんです。
 それに今回の物件の近くにあった大きなマンションを見ましたか?
 あのマンション、販売後、即完売でした。
 横浜は坂の多い土地なので、この辺の人は坂を気にしないのです。」
 
ほんとうに横浜の人は坂を気にしないのだろうか?
いったん「検討します」でその場はお開きとなった。
営業マンと別れた後、駅前を見て歩くことにした。
駅に直結してスーパーがあり、暮らしやすそうなところだった。
ある程度見て回り、駅に戻ろうとしたところで道を間違ってしまった。
明らかに駅から遠ざかっていることに気づいたが、なぜか引き返す気にならず、そのまま進んだ。
そうしたら、小さな不動産屋さんが目の前に現れた。
不動産屋さんの外壁にはられている「賃貸募集」のチラシを見ているうちに、中に入ってみたくなった。
思い切って扉を開けた。
中には「お母さん」と呼びたくなる雰囲気の女性が一人座っていた。
「部屋を探しているのではないのです。実はこの辺りのアパートを購入しようと思っているのです。でも坂の上なので悩んでいるのです。」
明らかに客ではない私に、椅子に座るよう勧めてくれた。
「その物件の資料ある?」と言って、チラシを受け取ると、眉をひそめた。
「この坂、実際に歩いてみた?毎日この坂を歩きたいという人はなかなかいないわよ。
 一度坂を上がっちゃえば小学校と中学校があってスーパーもあるから坂の上だけで生活は完結するけれど、単身者が住む場所ではないわね。」
「この物件の近くに大きなマンションがあったでしょ?このマンションは駅までシャトルバスを出しているの。それでも不便だと言って、今たくさん売りに出されているけど、全く売れていないのよ。」
「この管理会社、坂の上の物件をいくつか管理しているけれど、苦戦しているわよ。
 この物件とこの物件は満室だけど、こっちの物件なんか新築後1年経っても満室になっていないんだから。」
「このチラシには1部屋6万5千円で貸し出せると書いてあるけど、この値段では絶対に無理ね。
 だってこっちの物件を見てご覧なさい。築3年で駅から平坦な道を徒歩5分のこの物件が6万円でもう3ヶ月空室よ。坂の上の物件ならば5万円台前半にしないと入居者はいないと思うわ。」
実は、私が営業マンにどういうトークで勧められたかは全く話していない。
それなのに、まるで傍にいたかのように営業マンの話の裏を教えてくれた。
実際にレインズ(不動産情報が登録されているシステム)の画面を見ながら説明してくれた裏付けのある話なので説得力がある。
「人の商売の邪魔をしてはいけないけれど、あなたが私の友人ならば、絶対買っちゃダメって必死に止めるわ。」
念を押してくれた不動産屋さんに感謝である。
この物件を紹介してくれた営業マンは決して嘘は言っていない。
管理会社から聞いた情報を誠実に伝えてくれたのだろう。
自分に不利な情報を積極的に流さない管理会社があるのも仕方がない。
残りの情報は自分で集めるしかないのだ。
数多くの物件を紹介してくれるのは全国の物件を扱う不動産屋だが、情報の濃さは地元に根付いている不動産屋さんには敵わないだろう。
不動産投資にもセカンドオピニオンの視点で、違う観点からの意見を求めることが大切だということ、それは自分でやるしかないということを学んだいい経験だった。

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