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2015年9月26日 森本稀哲引退試合

2017/05/04

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2015年9月26日の西武ドームは、西武vs楽天の最終戦で、森本稀哲(もりもと ひちょり)の引退試合だ。

西武3−1楽天。西武の2点リードで迎えた8回表に今日の主役が守備についた。
7番ライト、森本稀哲。
楽天の攻撃はあっさり3人で終了し、8回裏の西武の攻撃に移る。
このままでいけば、この回が西武の最後の攻撃だ。

 

8回裏、西武の先頭打者は1番の秋山翔吾。
7番の稀哲まで、あと6人。
最低でも4人が塁に出ないと稀哲まで回らない。
4人が塁に出るということは、少なくても1点は入るということだ。
つまり、稀哲が最後の打席に立つのは簡単ではない。
「稀哲を守備につかせるときに打順も考えて選手交代してよ」と田辺監督に文句の一つも言いたくなるが、3位争いをしている西武にそんな余裕はないのだろう。

 

先頭打者の秋山は今シーズンとても調子がいい。
マートンが持つシーズン安打記録にあと7本まで迫るほど安打を量産している。
この打席でも、打球をレフトに運んでヒット。

よし、あと3人塁に出て、稀哲に打席を回してくれ。

 

2番打者は渡辺直人。
稀哲と同学年の直人はDeNAと西武の2球団で稀哲と一緒だった。
何としても稀哲に最後の打席をプレゼントしたいだろう。
楽天の投手・相沢が投げたボールは直人に直撃した。デッドボール!
背中が痛むだろうに、塁に出た直人は自分の仕事をやり遂げたさわやかな顔をしていた。

あと2人、塁に出てくれ。

 

3番打者は浅村栄斗。
バントの構えをしている。
アウトカウントを増やすようなことをしないでヒットを狙って欲しいが、今日の成績は2三振に1併殺だから仕方がないだろう。
浅村は三塁側に絶妙にボールを転がした。うまいバントだ。
楽天の捕手・伊志嶺がボールを拾って一塁に投げる。
そのボールは一塁手のグラブに収まらず、はるか遠くに飛んでいった。
悪送球!浅村も塁に出た!!
あと1人!

 

4番打者はおかわりこと中村剛也。
言うまでもなくいいバッターだが、今日はヒットが1本も出ていない。
力強く振ったバットにボールが当たる。
外野まで飛んでいったボールは、センター福田があっさり掴んだ。

稀哲まで回すため、あと1人、塁に出てくれ。

 

1アウト、ランナー1塁となったところで5番打者はメヒア。
「ゲッツーだな…」と夫がつぶやく。悲しいけれど私も同意見だ。
この時点で、スコアは、西武5-1楽天。
楽天がこの4点差を9回表に追いつかなければ、西武の攻撃はこの8回裏が最後となる。

祈るようにメヒアを見たが、予想通り、打球は3塁側にボテボテと転がっていった。
5−4−3でゲッツー完成とため息をついた時に、目に飛び込んできたものは、巨漢を揺らして懸命に走るメヒアの姿だった。

激走がきいて一塁はセーフ!
メヒア!この一年で一番の走りだ!
間一髪で可能性を繋いだ。

2アウト、ランナー1塁。
頼む!あと1人塁に出てくれ!

 

6番打者は栗山巧。
ネクストバッターズサークルに稀哲が登場し、球場内が異様な興奮に包まれている。
この雰囲気の中で打席に立つのはプレッシャーが大きいだろう。

楽天の投手・相沢は、初球からとても打てるとは思えない凄いボールを投げ込んできた。
しかし栗山は定評のある選球眼を活かして、ボール球は見送り、怪しいものはカットする。

そして、2ボール2ストライクからの6球目。
栗山は見送った。一瞬の間の後、審判はボールを宣告した。
もしストライクで三振となっても、抗議はしないであろうギリギリのコース。
球場内の緊張感が高まる。

7球目は外角高めのボールをカット。
そして8球目。
殆どの打者が引っ掛けて内野ゴロに終わるであろう、外角にほんの僅かだけ外れたボールを、栗山は自信を持って見送った。

フォアボール。ついに4人目が塁に出た。

 

「稀哲さんに回せ!」というチームメイトの必死の願いが叶ったこの瞬間、7番打者の森本稀哲はグラウンド上で泣き崩れた。

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試合終了後。
ヒーローインタビューで西武の先発投手・十亀は「稀哲さんのために勝ちたかった」と言って泣いた。
投手と野手は練習スケジュールなども違い、交わることが少ない。
ましてや稀哲は西武に来てからまだ二年しか経っていない。
それなのに涙を流す十亀。
野手からだけでなく、投手からも慕われていることがよく分かる。

 

そして引退セレモニー。
贔屓目に見ても、西武に来てからの稀哲は引退セレモニーをしてもらえるほどの活躍はしていない。
しかし西武ナインは皆真剣な眼差しで、最後の挨拶に臨む稀哲の背中を見つめている。
すっかり仲間として受け入れられている稀哲がどれだけ仲間から愛されているのかが伝わってくる。

バックスクリーンに西武ナインからのメッセージが映し出される。
そして、日ハム時代、最強の外野陣を築いた新庄と稲葉からのメッセージも映し出される。
「ヒッチョリ〜ノ、おっつかっれちゃ〜ん」で始まる新庄のメッセージは場内に笑いを巻き起こし、稀哲らしい涙と笑いのセレモニーとなった。

 

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