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2017年No.1投資本『プライベートバンクは、富裕層に何を教えているのか?』

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プライベートバンクは、富裕層に何を教えているのか?

もともと投資には興味があって、かれこれ20年近く金融資産を中心に投資をしているが、ここ数年の世界情勢の移り変わりの激しさを目の当たりにして、今後を読むことに対して少し疲れていた。
いっそのことプロが代わりに運用してくれないかしらと思った時に目に止まった本が、この『プライベートバンクは、富裕層に何を教えているのか?――その投資法と思想の本質』である。

プライベートバンクに資産運用して欲しいという私の願いは、3ページ目で打ち砕かれた。
例えば野村證券のプライベートバンクの顧客になるには、金融資産を1億円持っていることが最低ラインだそうだ。
そしてもっとハードルが高いプライベートバンクは数あれど、ここよりハードルが低いプライベートバンクはそうそう無いらしい。

本文に入る前のまえがきの段階で夢は砕かれたが、せっかくなので読み進めることにした。
 

本の全体構成

この本には、前半はプライベートバンカーの視点から見た富裕層の実態(同時に、富裕層の目から見たプライベートバンクの実態)、後半はプライベートバンクが勧める投資についてが書かれている。

投資の本には、机上の空論は言い過ぎかもしれないが、紙の上の数字遊びで書かれている本もある。
だが、この本の著者である冨田和成さんは、かつて野村證券のプライベートバンク部門に勤務されており、実際に目で見て手を動かした経験が書かれているので興味深い。
 

プライベートバンクの投資術

前半は読み物として面白かった(自分がプライベートバンクに手が届く存在だったら、もっと自分ごととして読んだかもしれない)が、後半は、食い入るように付箋を貼りつつ読み進めた。
 

新しい金融商品

私は金融商品を、株と債権に大きく分け、それぞれを日本・先進国・新興国の3つに分けた計6つの分野でポートフォリオを組み、運用している。
基本はインデックス投資(市場の平均値と同じような動きを目指す投資信託やETFに投資する)なので、各分野の配分をどうするかが一番の悩みどころなのだが、最近はこの6分野への投資だけでいいのだろうかという迷いも出ていた。
これは完全に私一人の感覚で経済学的な裏付けがあるわけではないが、先進国と新興国の値動きの差が縮まっていくような気がしている。
リスク分散のための分散投資であるが、本当にリスクヘッジになるのだろうかという迷いを感じていたのだ。

この迷いの一つの解がこの本に示されていた。
この本によると、プライベートバンクは、リスクをさらに分散させる手法として金融市場の動きとは別の動きをする「オルタナティブ投資」を積極的にポートフォリオに織り込むことを推奨しているそうだ。
オルタナティブ投資とは、農産物・鉱物・不動産などの商品や、未公開株・デリバティブ(金融派生商品)、そして、それを扱うヘッジファンドなどを指す。

例えば、莫大な額の寄付金を運用しているハーバード大学は、ポートフォリオの50%以上がオルタナティブ投資らしい。
2016年時点のハーバード大学のポートフォリオが掲載されており、その大胆さに唸らされた。
 

サラリーマンでもできるオルタナティブ投資

プライベートバンクが提供しているオルタナティブ投資の商品は、最低ロットが数千万円以上し、富裕層ではない人間に手が出せる商品ではない。
しかし、この本には、オルタナティブ商品と似た値動きをするETFや投資信託も紹介されており、こちらには月1万円からでも購入できるものがある。

この本には各商品の説明はさらっとしか書かれていないが、どういった商品があるかの紹介だけでも価値がある。
(正確に言うと、どんなに詳しく紹介されていても、商品の実際の内容とリスクは自分で調べないといけない。一冊の本に書かれていただけでその内容を丸ごと信じ込むことは、やってはいけないことの1つである)

そして、『家庭でも応用できる「ハーバード流ポートフォリオ」』として、ポートフォリオの一例が掲載されているのも興味深い。
同時に、野村アセットマネジメントがハーバード大学をモデルに作った投資信託「ノムラ・オールインワン・ファンド」のポートフォリオも掲載されているので、これも参考になる。
 

この本をお勧めしたい人

この本に書いてある内容を実践するには、ある程度の投資経験が必要である。
少なくても、掲載されているポートフォリオの例を鵜呑みにするのではなく、自分の状況に鑑みて調整できる必要がある。
ここで紹介されているオルタナティブ投資は上場株式や債券よりもリスクが大きいので、自分が金銭的にそして精神的にどこまでリスクを許容できるかの「自己判断」が非常に重要であるからだ。

しかし、投資初心者にも学ぶことは多い。
この本には、プライベートバンクが顧客の資産状況を把握するために行うことも書かれているが、それは一般的な投資の基本と同じだった。
個別の銘柄選定よりも、まず先に自分のお金と資産状況の把握をすることが大切なのは、投資初心者でも富裕層でも同じなのだ。
この本を読むことで、大事にすべき具体的な基本を再確認することができる。

また、単純にプライベートバンクについて知りたい人にとっても面白いだろう。

私にとっては、2017年で一番面白い投資本だった。
 

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