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しずかみちこ
Gallup認定ストレングスコーチ
ストレングスファインダー(クリフトンストレングス)の専門家として、個人やチームが「強み」を活かして最大の成果を生み出すためのコーチングと研修をしています。

リクルートスタッフィングで経理したり、レアジョブの管理部門立ち上げたり、ブラック企業に入ったり、上司の横領見つけて辞めさせられたり、人の会社2つ作ったりと波乱万丈な職歴の後、独立して今に至ります。

投資と経理スキルでお金をデザインし、ストレングスファインダーで強みを活かしたら、人生が楽しくなりました。

趣味は野球観戦と美味しいものを食べること

収集心・最上志向・戦略性・未来志向・分析思考
ストレングスファインダーのnote
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赤松真人、引退試合。胃がんと戦い抜いた3年の後に見せたやり抜いた笑顔

2019年9月27日、マツダスタジアム

2019年9月27日、広島東洋カープの外野手の赤松真人は、自身の引退試合のためにマツダスタジアムに向かった。

胃がん、発見

赤松の胃にがんが見つかったのは、2016年オフだった。
その時、既にステージ3。
すぐに胃を半分切除した。
しかしがんは、まだ34歳の若い身体を素早く駆け巡り、リンパ節への転移も見つかった。

日本のプロ野球は他のスポーツよりも試合数が多い。
3月終わりから10月までの長いシーズンの間ほぼ毎日行われる試合を戦い抜く体力をプロ野球選手は求められる。
健康な選手でも夏場に食が細くなり調子を落とすことがあるのに、胃を半分切除するのはプロ野球選手として致命的だ。
それでも赤松は試合に復帰したいという思いで、辛い抗がん剤治療を受け、筋力を回復するトレーニングに努めた。

その期間、3年。
しかし、病気を治して一軍復帰したいとの願いは叶わなかった。
赤松は引退を決意した。
この引退試合が3年ぶりの一軍復帰となった。

赤松真人、引退試合

試合は4-1で中日がリードのまま、8回が終了した。
自身の引退試合をベンチでずっと見ていた赤松は、9回表に守備についた。
湧き上がる拍手の中を向かうのは、足の速い赤松によく似合うセンターのポジション。
かつてはフェンスによじ登ってホームランになるはずのボールをキャッチしたこともあるほど軽快な身のこなしをする赤松には、外野の中心が本当によく似合う。
  
でもここで私は「?」と思う。
赤松の打順だ。
「四番センター赤松」とスコアボードに表示されている。

前の回は五番打者の松山のところで打席が終わっている。
このときカープは七番打者に投手が入っていた。

投手と赤松を入れ替えて七番に赤松を入れれば9回裏に赤松に打席が回る。
四番に入れたら、赤松に打席が回る可能性は限りなく少ない。

この日、カープはまだCS争いをしており、負けたくないのは私にも分かる。
でも、赤松は、ホームランこそ打てないかもしれないが、外野に抜けるゴロは打てるのではないだろうか。
赤松の俊足ならボテボテの当たりでもヒットにできるから、カープの勝利に貢献できるのではないだろうか。
打席に立つ赤松を見たい。
バットを振る姿を見たい。
この私の願いは叶わないようだった。

  
9回表の中日の攻撃は三者凡退。
あっさりしたものだった。
赤松のところにはボールは飛ばなかった。
それでも赤松は笑顔でベンチに戻ってきた。
  
いったんベンチ裏に下がり、9回裏のカープの攻撃を応援するためにベンチの一番前に出てきた赤松を見て、私は驚いた。
赤松の顔に汗がとめどなく流れていたのだ。

広島の気温はわからないが、9月終わりで、夜だ。
他の選手を見てもそこまで暑い日には見えない。

中日の攻撃は3人で終了した。短時間だった。
赤松もボールを追いかけたけど、守備機会はなかった。

それなのに、あんなに汗をかくとは。。。
 
赤松の全盛期を覚えているから、今でも軽快に走れるものと思っていたけれど、闘病明けの今の赤松にはそれは重労働なのかもしれない。
赤松がこの3年戦ってきた病の重大さがぐっと胸に迫ってきて、赤松が打席に立たなかった意味を理解した。
  

引退セレモニー

試合終了後、引退セレモニー。
赤松の2人の息子達が花束を持ってお父さんのところに歩み寄った。
2人とも泣いている。

選手の子供が花束を渡すセレモニーは引退試合の定番なのだが、小学生くらいの子供だとまだよく分かっていなくて「パパ〜!」とニコニコしていたりする。
でも赤松の子供はまだ小さい下の子でさえも泣いていた。

親ががんのような重い病気になった時、幼い子供に話さない家庭もあるだろう。
しかし赤松家の場合、病状がテレビで報道されてしまう。
野球選手だったお父さんが試合に出なくなった意味も、お父さんが病と戦う姿も、目の当たりにしていただろう。
引退を決めたお父さんの決意についても、幼いながらに感じているのだろう。

そんな2人の息子を赤松は笑顔で迎え、抱きしめた。
二人の息子を胸に抱き、一瞬感極まった表情をし、そしてまた晴れやかな笑顔を見せた。

通算15年のプロ野球生活の最後に見せたその笑顔は、何の悔いも感じさせないやりきった男の笑顔に見えた。
 

※トップ画像は2018年5月1日二軍戦のもの

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