自分で自分を「変わってる」という人がつまらない人なのはなぜか
誇らしげに自分のことを変わっていると言う人
「俺(私)って、ちょっと変わってるからさあ。」という人がたまにいる。
そういうとき、その人の顔は誇らしげか、もしくは他人を見下すかのような顔をしている。
しかし、そう言うその人を、面白いとか変わっていると思ったことは、残念ながらない。
逆に、私が「この人本当に面白いなあ、変わっているなあ!」と思って、その相手にそう言うと、誰もが不思議そうに「え!そうなかあ?普通だと思うけど。」と答える。
変わってると思えない人が自分のことを変わっていると言い、変わってると思う人は自分のことを普通と言う。
この現象は何だろうとずっと思っていた。
まず言葉の定義から
変わってるって何?
自分のことを変わっているという人は、どういう意味で変わっていると言っているのだろうか。
話を聞いていると、どうやら「周囲の人々とは一味違う」と言っているようだ。
周囲の人々=普通、であって、その普通と違うことを言ったりしたりする自分は変わっているということらしい。
普通って何?
では、普通とは、何だろう。
全く同じ人間はいない。全員がそれぞれ個性を持つ。
同じ場所にいて同じものを見ていても、感じるものは違うし、行動も違う。
どこをどう切り取って「普通」と呼べばいいのだろう。
こういうことを言ったり聞いたりしたことがある人は多いだろう。
「ゲーム買って!みんな持ってるんだよ!」
みんなって誰よ?と冷静なツッコミを受けた経験がある人もいるだろうが、この「みんな」がここで言う「普通」を指す。
集団に属することは、安心感をもたらす。
幼い子が親と同じ柄の服を着ると喜ぶのは、他者と同じことをすることが同じ集団に属しているという証になるからだ。
大人になっても、自分が属する集団の意向に従って、洋服を決めたり、言動を制限したりすることが行われる。
これはTPOとも呼ばれ、周囲を見渡して周囲から外れた浮き方をしないようにすることが、大人のたしなみとして求められる。
この周囲から変な浮き方をしないことが「普通」なのだ。
自分を「変わってる」という人がつまらないのはなぜか
自分を「変わってる」という人
それであれば、自分のことを「周囲のみんなとは一味違う」と思っている人が、変わっている人と思えないのは何故だろう。
それはこういうことだ。
自分のことを「周囲のみんなとは一味違う」と思っている人の視線は、周囲を見ている。
周囲を見て、皆と違うことをすることが、行動基準になっている。
周囲と比較するからこそ、自分のことを周囲とは違うと思い、自分は変わっている、という思うのだ。
しかし、人間は、「あなたは、アリやスズメよりも随分大きいですね」という会話をしないように、かけ離れているもの同士をわざわざ比較しない。
比較するのは似ているもの同士の間に限られる。
つまり、ある人が自分と周囲を比較している時点で、そのある人と周囲は似たもの同士なのだ。
同じ集団の中では密かな違いがあるのかもしれないが、集団の外から見ると同じカテゴリーの似たもの同士に過ぎない。
そういう人に「俺(私)って変わってるし」と言われても、「どこが変わっているのだろう?」という疑問を生む結果となる。
そして、集団の外からはよく分からない微差を主張されて終わるので、それを聞かされた人はつまらないと思ってしまうのだ。
自分を普通と言う変わっている人
では、変わっている人が、自分のことを「普通」と言うのは何故だろう。
変わっている人は、ある分野、もしくは人生全般において、自分の気持ちを軸に走っている人だ。
何かにのめり込み過ぎて誰もついていけない領域に行ってしまっていたり、自分が正しいと思うことを曲げずに行ったりすることができる。
そういう人の行動基準は自分の心の中にあるので、周囲と自分を比較しようという発想がない。
何とも比較をしなければ、「変わっている」と思いようがない。
変わっていないのだから「普通」という答えになる。
普通でも変わっていても構わないけれど
人が普通だろうが変わっていようが、それはどうでもいいことだ。
しかし、自分の行動基準の全てが他者との比較になってしまうのは寂しい。
もちろんTPOを守るべき場はあるが、それが人生の全てではない。
必要のない部分まで周囲の存在を意識しすぎて、息苦しくなっていないだろうか。
周囲と同じにすることも、周囲と違うことをすることも、周囲と比較している時点で自分の心が二の次になっている。
自分がやりたいことをやっていたら、たまたま周囲と同じだった、たまたま周囲とは違っていた、が正しい順番だ。
というよりも、周囲と同じか違うかを、検証する必要もない。
普通だろうが変わっていようが、それはどうでもいいことだ。
人と比較して、自分が普通か変わっているかを定義することは、全くもって必要ない。