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1.日本の野球 野球

We are パ・リーグ! あの日、守りたかったもの。

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We are!

2017年7月15日。プロ野球オールスター戦が、千葉ロッテマリーンズの本拠地であるZOZOマリンスタジアムで行われた。
3対1でパ・リーグが勝利した試合後、思いがけないことが起きた。

パ・リーグベンチから、全出場選手28人が飛び出し、ライト側観客席の方向に駆け出す。
横一列に並び、肩を組む。
千葉ロッテのキャプテンの鈴木大地が「We are!」と叫ぶ。観客が「We are!」と答える。
もう一度、鈴木大地が「We are!」と叫ぶ。観客が「We are!」と答える。
そして「パ・リーグ!」と叫ぶと、選手と観客が一体になって「パ・リーグ!パ・リーグ!」と叫び、肩を組んだまま飛び跳ねる。
選手は、皆、笑顔だ。
普段は敵同士で戦っている選手たちが、今は肩を組み、笑顔で勝利の喜びを分かち合っている。

これは元々「We are」と呼ばれる千葉ロッテの勝利の儀式なのだが、ソフトバンクホークスの内川選手発案でパ・リーグの勝利の儀式としてこの日限りでお目見えしたのだ。

 

パ・リーグが消滅の危機に立たされた日

笑顔で肩を組む6球団の選手たち。「We are パ・リーグ!」と叫ぶ声。
13年前のあの時を思うと、目の前に広がる光景が夢のように思える。
脳裏に蘇るのは、日本ハムファイターズの新庄剛志の「これからは、パ・リーグです。」という言葉だ。
オールスター出場の全選手が、12球団のチームカラーを編み込んだお揃いのミサンガをつけて臨んだ、2004年のオールスター戦のことだった。

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合併報道

オールスターのひと月前に、事件は起こった。
2004年6月13日。日経新聞が掲載したとあるスクープ記事。
それは、近鉄バファローズが、オリックス株式会社に譲渡されるというものだった。

これまでも身売りする球団はあった。
例えば、南海ホークスがダイエーに売り渡され、阪急ブレーブスがオリックスに売り渡され、大洋ホエールズがマルハからTBSに譲り渡されたことなどがあたる。

しかし、今回の譲渡報道がこれまでの身売りと全く意味が違うことは、野球協約第183条を見ると分かる。
そこには、「同一資本が複数の球団を所有することは禁止」と記されているのだ。
すでにオリックスブルーウェーブという球団を持つオリックス株式会社に球団を譲渡するということは、すなわち、オリックスブルーウェーブと近鉄バファローズという2つの球団が合併し、1つになることを表していた。

パ・リーグが5球団になったら、リーグが成り立たないではないか!
その疑問は、翌日あっさり解消されることとなる。
追加の報道が出たのだ。
「次の合併は、ダイエーとロッテか!?」
「プロ野球、10チームで1リーグ化へ!」

消滅するのは、近鉄バファローズだけではなかった。
パ・リーグそのものが、消滅する方向へ向かっているのだ。

6月13日の時点では対岸の火事として見ていた他球団ファンも、我が事として立ち上がった。
ここから、合併反対運動が巻き起こるのである。

合併反対運動について書くと、本一冊くらいの分量になるので(実際に『合併反対』という本が出版されている)、ここでは詳しく書かないが、ファンたちの署名活動が全国に広がり始めた。
 

そのとき、選手は

「たかが選手が。」

もちろん選手達にとっても、対岸の火事ではない。
しかし、各球団オーナーの選手に対する姿勢はひどいものだった。

7月6日、合併反対の署名活動への参加を表明した近鉄バファローズ選手会長の礒部公一に対し、近鉄の山口社長は「署名に加わったら?プロテクトされへんよ」と実質クビ宣告といえる発言をした。
7月8日、オーナー達から直接説明を受けることを望んだ古田敦也プロ野球選手会長に対して、読売巨人軍の渡辺恒雄オーナーはこう言い放った。
「無礼なことを言うな。分をわきまえなきゃいかんよ。たかが選手が。」

この1リーグ構想は、渡辺恒雄オーナーが主導で進めていたという話がある。
かつては野球といえば巨人一色だったが、2004年には、パ・リーグにも西武ライオンズや福岡ダイエーホークスといった人気球団が生まれていた。また野茂英雄やイチローのメジャーリーグ挑戦もあり、野球ファンの視野がセ・リーグから離れ、他所へと向くようになっていた。
そこで、野球ファンの注目を集めるために、巨人を中心とした強固な1つのリーグを作ることを目指していると言われていたのだ。

球団が減るということは、選手にとってもスタッフにとっても、働く場所が減るということだ。
それを突然行うとはかなり乱暴なやり方だったが、当時の渡辺恒雄オーナーの力は強大で、反対意見を述べるのは、選手はおろか、他のオーナーでも難しかった。

「これからは、パ・リーグです」

ところが、そこに、オーナーの力を恐れない男が現れた。
SHINJOこと新庄剛志だ。

新庄剛志は、2004年に米球界から日本に復帰。東京から北海道に移転が決まっていた日本ハムファイターズに所属した。
球団が入団発表をする前日に、本人が勝手に入団を発表するなど、入団前から話題を巻き起こし、型にはまらないプレースタイルで北海道の野球ファンだけではなく、日本中の野球ファンの心を掴み始めていた。

「たかが選手が」発言の3日後の7月11日、オールスター第2戦で、オールスター史上初となるホームスチールを決め、新庄剛志はMVPに選ばれた。
試合後のヒーローインタビューで、大観衆を前にして、噛みしめるように言った。

「これからは、パ・リーグです。」

この一言が、合併反対・1リーグ制反対派を勇気付ける。

同日、オリックス選手会が、ファンの合併反対の署名活動を支援することを表明した。
5日後には、近鉄バファローズの選手が、実際に署名活動を行った。
中日、横浜、ヤクルト、阪神と、続々とセリーグの球団の選手会も署名活動を開始した。
そして、ついに、巨人軍の選手会も署名活動を開始した。
8月の頭には、12球団全ての選手会が合併反対の署名活動を開始したのだった。
 

合併反対運動の結果

合併反対運動の結果は、見ての通りだ。

近鉄とオリックスの合併は、予定通り行われた。
もう一つの合併球団と言われていたダイエーホークスは、ソフトバンクに身売りをした。
楽天イーグルスという新規球団が参入し、12球団による2リーグ制は維持された。
近鉄とオリックスの合併を阻止することはできなかったが、パ・リーグの消滅は免れた。

今では日本ハムファイターズや楽天イーグルスも地元にしっかりと根付いた人気球団だ。
ダルビッシュ有、田中将大、大谷翔平といった、人気も実力もある選手がパ・リーグから排出されている。
「人気のセ、実力のパ」という言葉は遠い昔のものとなり、名実ともに力のあるリーグとなった。
「これからは、パ・リーグです」という新庄剛志の言葉が、現実となったのだ。
 

2017年

時が流れるのは早いもので、オリックスブルーウェーブに在籍していた選手はイチローしか残っていなく、近鉄バファローズに在籍していた選手も岩隈久志、坂口智隆、近藤一樹の3人しかいない。
12球団全体を見ても、合併反対の署名運動に加わった選手は数少ないだろう。

合併反対の署名活動期間中、選手は、試合中は敵と味方として戦っていても、試合前や試合後は、リーグを守るために球団関係なく協力をしていた。
ファンも同じく、試合中は敵と味方でも、試合前や試合後は共に署名活動をしていた。

冒頭の「We are パ・リーグ!」を見て、あのとき選手たちとファンが守りたかったパ・リーグが、残っていることを感じた。

レギュラーシーズンになると敵と味方に分かれる6球団の選手たちが肩を組み、同じくファンも肩を組む。
そして、叫ぶ。

We are! パ・リーグ!

選手とファンがあの日守りたかったパ・リーグが、今ここにある。
 

関連動画&記事

◯ロッテ広報撮影の「We are パ・リーグ」

◯試合前の微笑ましい練習風景

◯動画が見られない方はこの記事をどうぞ

◯「We are」は鈴木大地が守ったものである


 

参考図書

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