入院の時の差額ベッド代について、私が経験したこと
昨年に自分自身。
今年は家族。
2年連続で入院手続きを経験して、差額ベッド代に関して気になったことがあった。
2022年、東京で
2022年、歩けないほどの激しい腹痛に襲われた私は、救急車で運ばれて入院した。
激しい腹痛に悶え苦しみながら、入院手続きをした。
入院手続きの担当の方から「もし個室に入ることになったら、差額ベッド代が掛かります」という説明があった。
息も絶え絶えながら、私は聞いた。「大部屋は…いっぱいなのですか…?」
担当「それは確認しないとわかりません」
私「大部屋が…空いているなら…大部屋で…お願いします…」
担当「空いていなかったときのために、差額ベッド代同意書にサインしてください」
私「大部屋が…空いていない…ときの…差額ベッド代は…無料ですよね…」
担当「それはどこに書いてありますか?」
私「厚生労働省の…ホームページです…」
担当「確認してきます(どこかに行く)」
担当「(戻ってくる)大部屋に空きがありましたから、大部屋に入ってください」
こんなことを言うくらいなので、よっぽど入院患者が多いのだろう。
そう思ったのだが、実際は個室は80%の埋まり具合なのに大部屋はガラガラで、私は6人部屋を2〜3人で使うことができた。
2023年、九州で
つい先日、家族が入院することになった。
地元のかかりつけ医から紹介された大きな病院に行ったところ、その場で急遽入院となったのだ。
付き添っていた私が入院手続きをした。
担当の方は「ご家族は2人個室に入っていただきました。個室は差額ベッド代が掛かるので、同意書にサインをお願いします」と言って、差額ベッド代の同意書を出してきた。
私「大部屋は満床ですか?」
担当「はい」
私「大部屋が満床の場合は差額ベッド代は掛かりませんよね?」
担当の方は、無言で同意書を引っ込めた。
差額ベッド代が必要なとき、そうでないとき
入院時の差額ベッド代については、厚生労働省が明確な指針を出している。
この指針を、簡単にまとめると、下記のようになる。
下記の場合は患者に差額ベッド代を求めてはいけない。
・同意書による確認をしていない時
・治療上の必要で特別療養環境室(個室など)を使う時
・病院側の理由で特別療養環境室(個室など)を使う時
要するに、治療上の必要や病院側の体制の問題など、病院側の都合の場合は患者に差額ベッド代を請求できないのだ。
しかし、上記の私が実際に経験した2つの例は、病院側の都合なのに差額ベッド代を請求されかけた。
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※下記のリンクが、厚生労働省のサイトに掲載されている診療報酬についての指針の全文。
このPDFの、16ページの(8)が該当箇所になる。
「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」
長くなるが、該当箇所を下記に抜粋する。
患者に特別療養環境室に係る特別の料金を求めてはならない場合としては、具体的には以下の例が挙げられること。
なお、③に掲げる「実質的に患者の選択によらない場合」に該当するか否かは、患者又は保険医療機関から事情を聴取した上で、適宜判断すること。
① 同意書による同意の確認を行っていない場合(当該同意書が、室料の記載がない、患者側の署名がない等内容が不十分である場合を含む。)
② 患者本人の「治療上の必要」により特別療養環境室へ入院させる場合
(例)
・ 救急患者、術後患者等であって、病状が重篤なため安静を必要とする者、又は常時監視を要し、適時適切な看護及び介助を必要とする者
・ 免疫力が低下し、感染症に罹患するおそれのある患者
・ 集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の患者
・ 後天性免疫不全症候群の病原体に感染している患者(患者が通常の個室よりも特別の設備の整った個室への入室を特に希望した場合を除く。)
・ クロイツフェルト・ヤコブ病の患者(患者が通常の個室よりも特別の設備の整った個室への入室を特に希望した場合を除く。)
③ 病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合
(例)
・ MRSA等に感染している患者であって、主治医等が他の入院患者の院内感染を防止
するため、実質的に患者の選択によらず入院させたと認められる者の場合
・ 特別療養環境室以外の病室の病床が満床であるため、特別療養環境室に入院させた患
者の場合
なお、「治療上の必要」に該当しなくなった場合等上記②又は③に該当しなくなったときは、(6)及び(7)に示した趣旨に従い、患者の意に反して特別療養環境室への入院が続けられることがないよう改めて同意書により患者の意思を確認する等、その取扱いに十分に配慮すること。
断った、その後
こうして騙すような形で差額ベッド代を請求する病院に不信感を持つこともあるだろう。
もしくは、病院側の意向に沿わずに異議を唱えることに恐怖があるかもしれない。
ただ、私の場合であるが、その後、嫌な思いをすることは全くなかった。
東京の病院も九州の病院も、看護師さんを始めスタッフの方は優しく、丁寧に扱ってくれた。
特に九州の病院は遠方に住む私に何度も電話をくれ、コロナ禍で面会できない中、家族が安心できるようにしてくれている。
断ったときの入院の担当の方の反応も、東京の方は少し粘られた気もするが、九州の方はあっさり引き下がってくれた。
断られることに慣れている印象があった。
「必要ない」と主張する患者は、まあまあいるのだろう。
差額ベッド代についてあらかじめ知っておく
この東京の病院と九州の病院は、どちらもその地区の大きな病院ではあるが、資本関係はない。
それなのに差額ベッド代をめぐって同じようなやり取りがあるということは、日本全国他の場所でもこのようなやり取りがありそうだ。
私は元々、自分から個室を希望しない限り差額ベッド代が掛からないと知っていたし、長いこと経理をやっていたため、お金についての疑問を遠慮せずに聞ける。
しかし、差額ベッド代について知らなかった人やお金の話が苦手な人は、病院の言われるがままに差額ベッド代を払わされそうだと感じた。
ただでさえ病院にいる時は心身ともに衰弱している状態なのに、明らかに説明が不足している中で、決断を迫られるのは辛い。
あちこちで同じことが行われているとしたら、そうせざるを得ない理由があるのかもしれないけれど、知識の有無やお金の話を気にせずできるかといった性格の違いで支払う金額が変わるのは引っかかる。
差額ベッド代は、入院日数が長くなるほど高額になる。
高額療養費制度の対象外のため、まるまる自分で負担しなければいけない。
詳細が分からないまま同意すると、後で大きな負担を求められて驚くことになる。
あらかじめこういったやり取りがある可能性を知ることで、余計なお金を払わずに済むと思う。
そして、ちゃんと不要なものは不要だと主張できる患者が増えることで、とりあえず請求してみるという悪習が廃れてほしい。