自分に自信がない人ほど、見切り発車でスタートした方がいい理由
見切り発車が当たり前の業界もある
個別セッションで多くの方から相談を受ける。
思いのほか多いのは「やりたいことはあるけれど、いつまでたってもサービスを開始できない」という悩みだ。
個人でお仕事(本業でも副業でも)を始めたいが、最初の一歩がどうしても踏み出せないのだそうだ。
「自分の商品に自信が持てない」と、皆が口を揃えたかのように言う。
ストレングスファインダーで最上志向を持っている私も、かつては完璧ではないものを提供することなんて考えられなかった。
それが変化したのは、IT系企業に勤めてからである。
例えば、会社でアプリを開発するとする。
ある程度形になったら、社内で試しに使ってみる。
そこでバグ等を修正する。
そうすると、次はβ版として、完璧ではないうちに見切り発車するのだ。
まだ完全ではない製品をリリースすることに恐怖を感じたが、実際のところ多くのWebサービスでβ版がリリースされている。
Gmailに至っては5年ほどβ版で運用されていたほどだ。
実際にβ版を見切り発車した経験によって、利点を目の当たりにすることになる。
そして、私が会社員でありながら個別セッションをスタートできたのは、この見切り発車の考え方が根底にあるからだ。
見切り発車をするといい4つの理由
WEBアプリのβ版をリリースする利点については、本職の方はこの記事を必要としないほど十分承知しているだろうから、ここでは私が個人で仕事をする人が見切り発車を取り入れた方がいいと思う理由を書く。
見切り発車することで、このようないいことがある。
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○見切り発車がいい理由
・自分が提供したい商品(物・サービス)がお客様に必要とされているか分かる
・早い段階でお客様の声を聞けるので、商品に反映させる余裕がある
・お客様が商品をどのように利用するかがわかる
・値付けの参考になる
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お客様に必要とされているか分かる
あなたが精魂込めて作っている商品やサービスを必要としている人はいるのだろうか?
自分自身では「いるはずだ!」と思っても、実際どうかは分からない。
自分で完璧となるまで作りこんだものが、実は誰も必要としていないと分かったときほど虚しいものはないだろう。
そうならないためにも、完成する前の段階で人の目に触れる機会を作り、魅力があるかどうかを確認するといい。
もし誰にも必要とされていなければ撤退を考えることになるが、時間とコストを掛ければ掛けるほど、撤退するための勇気が必要となる。
お客様の声を商品に反映させる余裕がある
他の人に見てもらうことで自分の商品の足りない部分に気づくことができたとしても、既に商品が完璧に作りこまれていると、修正に手間が掛かる。
商品によっては、もう仕様の変更ができずに一から作り直す事態にもなりかねない。
提供する商品がサービスの場合、自分にスキルが足りないと感じてサービスのスタートができないときもあるだろう。
そのときもお客様の声を聞けば、このスキルは必ず身につける必要があるけれど、あのスキルは必要とされていない、といったことがわかる。
自分の商品を一番よく知っているのは自分であるかもしれないが、近すぎて見えていないものが必ずある。
他の人の目で自分の商品やサービスを見てもらうと、足りないものや逆に自分では気づかなかった魅力に気づくことができる。
その声を反映させることで、商品の完成度は高まっていく。
お客様が商品をどのように利用するかがわかる
お客様は、必ずしも自分の望むとおりに商品を利用するとは限らない。
私がかつていたオンライン英会話の会社では、当初はもちろん英語学習を目的とする人のためにサービスを開始したのだが、「夜、一人で寂しい時に話し相手が欲しい」という目的で利用する人も複数存在した。
そのことによって、講師に必要な資質は英語を教える力と同じように、人柄も重要だと分かった。
お客様に商品を体験してもらうことで、思いがけない使い方に気が付くかもしれない。
そのことが商品の完成度を高める。
また、営業するときのアイデアに繋がる。
値付けの参考になる
商品の値付けは難しい。
商品の価値より高い値付けをするのは抵抗があるし、かといって、あまりに安い値付けだと消耗してしまう。
これまで自分で自分の商品に値段を付けたことがない場合、最初から適正な値段を付けることは難しい。
そこで、見切り発車が利用できる。
まず、未完成のお試し版として、安めの値段を付ける。
そして、商品を体験してもらった人の反応を確かめる。
安い値段で提供していれば、相手は喜んでくれるだろう。
そのとき「これならもっと高い値段でも大丈夫だよー!」という言葉をそのまま受け取って、「じゃあ高くしよう!」と早合点してはいけない。
「これならもっと高い値段でも大丈夫だよー!(だったら私は買わないけど)」という声に出さない気持ちが隠されている場合もある。
もし、「これならもっと高い値段でも大丈夫」と声を掛けてもらったら、どうしてもっと高い値段でもいいと思うのか、その理由を聞く。
商品によって「美味しかった」「とても便利で使いたい」「頭が整理された」「やる気が湧いた」「悩みが解決した」等々の理由を言ってもらえるだろう。
次に考えるべきことは、自分自身が「その理由」を得るためにいくらなら払うだろうか、ということだ。
美味しい○○を食べるために、いくら払うだろうか?
頭を整理するために、いくら払うだろうか?
悩みを解決するために、いくら払うだろうか?
最終的にお客様になってくれるのは自分と価値観が近い人なので、自分の感覚で値段を付けるといい。
まとめると、順番はこうだ。
まず、お客様に自分の商品の価値を見出してもらう。
次に、その価値に自分ならいくら払うだろうか?を考える。
その価格が商品の価格になる。
値付けについて詳細に知りたい場合はこちら
見切り発車のポイント
商品を見切り発車で提供するときにポイントは2つある。
[box class=”box2″]○見切り発車をするときのポイント
・目に見える範囲を対象とする
・日数や人数に期限を設ける
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目に見える範囲を対象とする
ここでいう「見切り発車」は自分の商品を良いものにするために行う。
どこの誰だか知らない人が、いつの間にか使っていて、いつの間にか消えていたでは、情報を得ることができない。
「面識がある人」や「SNSで繋がっている人」や「家族・職場等の身近な仲間」といった自分の目の届く範囲に限定しておくことで、反応を得ることができる。
日数や人数に期限を設ける
見切り発車ではお試し版として低価格で提供する。
しかし、一度商品をリリースすると、値上げするのが難しい。
そのため、当初より、あらかじめ値上げをすることを織り込んでおくといい。
具体的には「先着限定○名様のみ」や「○月△日申し込み分まで」というように、初めからお試し価格で対応する人数を決めておくこと。
あまり人数を多くすると、いつまでたっても正式版の商品ができあがらないので、人数は多くしすぎないほうがいい。
適正な人数は、あらかじめ何人くらいに話を聞きたいかと、いつまでに商品を正式版としてリリースしたいかを合わせて考える。
お客様のためになる商品はお客様と作る
ここで言いたいことを一言でまとめると、「お客様に必要とされる商品は、自分一人で考えていては生み出せない」ということだ。
自分一人の考えが及ぶ範囲には限界がある。
お客様が必要とするものは、お客様に聞かないとわからないのだ。
それなので、「商品が完璧ではないから」や「自分にはまだスキルがないから」と言ってスタートできない人ほど、見切り発車をするといい。
見切り発車をしない限り、商品は完璧にはならないし、自分が獲得するべきスキルも分からないままなのだ。