スポーツホスピタリティーチケットでラグビーW杯・日本vs南アフリカの準々決勝を見た話・後編
この記事は、ラグビーワールドカップのスポーツホスピタリティー体験記です。
前編(チケット購入〜試合前)はこちらから。
→1人20万円のホスピタリティーでラグビーW杯・日本vs南アフリカの準々決勝を見た話・前編
試合会場へ
試合開始45分前に、ホスピタリティー会場からスタジアムへ行くように促される。
ドリンクバーで、スタジアムに持ち込み可能のプラスチックのコップに飲み物を入れてもらい、移動開始だ。
なお、クロークに預けていない荷物は全部スタジアムに持ち込むこととなる。
専用通路
ホスピタリティー会場からスタジアムへは、専用通路があるのでアクセスが楽だった。
会場からメインスタンドの入り口付近までは、ホスピタリティーの人しかいない通路を使うことができる。
我々の席はメインスタンドの向かいのバックスタンドだったが、スムーズにたどり着くことができた。
実は私はこの前日(準々決勝NZvsIRL)も同じく東京スタジアムで試合を見たのだが、そのときは人の多さに負けて流れにうまく乗れず、座席につく頃には疲れ果てていたので、とてもありがたく感じた。
座席
プラチナパッケージの座席は、一番高い席種のカテゴリーAである。
メインスタンドでの観戦を期待したのだが、到着したチケットを見たらバックスタンドだった。
メインスタンドで見るには、もっと高いパッケージを買う必要があるのだろうか?(情報求む)
メインスタンドとバックスタンドの違いは国歌斉唱の時に選手の顔を見るか背中を見るかだけの違いで、試合の見え方に差はないと自分を慰めていた。
逆に選手入場のときは、バックスタンドからだと先頭を行くリーチ・マイケルの顔が見られるという利点もある。
さて、いざ座席に着いて見ると、メインかバックかでくよくよしていた自分が馬鹿らしくなった。
私の席は、22mラインの延長線上にあった。
ゴール直前の攻防、激しいせめぎあいがよく見られる場所だ。
そして前から12列目の座席は、グラウンドが間近に感じる。
目の前すぐに選手がいる感覚なのだ。
とにかく、試合の迫力がダイレクトに感じられる。
試合が始まって気づいたこともある。
東京スタジアムには大きいモニターがあり、そこではグラウンドの真上にあるカメラで撮影した映像を見ることができる。
このモニターがありがたかった。
22mラインの延長上にいるということは、反対側のゴール前での攻防はやはり遠くなる。
そのときはモニターと交互に見ることで分かりやすかった。
そして目の前のせめぎあいでも、モールやラックだと何が起きているかラグビーに疎い私には分かりにくい。
そのときにテレビで見ているのと同じ映像を確認することで、状況を理解することができた。
ラグビー好きの夫はモニターに頼らなくてもボールを追って盛り上がっていたので、ラグビー好きもにわかファンもどちらにとっても見やすい席なのだと思う。
なお、前も後ろも横も、私の周囲は見える限りプラチナのホスピタリティーパスを首から下げている人たちばかりだったので、このバックスタンド前方はホスピタリティーエリアなのだろう。
それが一体感を生んで、両隣の人と会話をする機会が多かった。
両隣とも海外の方だったので、私が英語をうまく話せたらもっと盛り上がれたのに!
試合後
日本は負けてしまったが、試合終了後もしばらくスタジアムで余韻を味わっていた。
プレイヤーオブザマッチのプレゼンテーターはなんとYOSHIKI!
しかしバックスタンドからは後ろのマスターカードの背景に邪魔されて見えず、モニターで拝む。
(なお、このあと、私にとっての大事件が起こることには全く予想していない。)
日本選手も南アフリカの選手も、観客席に向かっておじぎをしてくれる。
バックスタンドの中央の前の方は選手の家族席になっているようで、選手たちは試合中とは全然違う表情を向ける。
我々もその顔のおすそ分けをいただく。
この堀江選手の温かい笑顔!
子どもを肩に乗せても全く姿勢が崩れないリーチ・マイケルの屈強さ!
ずっとその場にいたくなる心地よさが漂っていたが、ホスピタリティープログラムは試合終了後も用意されている。
ホスピタリティー会場に戻ろう。
軽食
ホスピタリティー会場は、試合前とは違い、喪失感と興奮が入り混ざった「祭りの後」を愛おしむ空気で満ちていた。
南アフリカのディフェンスを前に手も足も出なかったやるせなさと世界トップクラスの戦いを目の当たりにした興奮を、同じ思いを抱えている人々とともにお酒で癒やすことができるのはとてもありがたい。
テーブルの上には、おかきとくるみが用意されていた。
このくるみが大きくて美味しくて、一人で食べ尽くしそうになるのをかなり自制した。
軽食も用意されていた。
豚肉の水餃子。
温かいものが食べられるのは嬉しい。
グリルドサーモンのブリオッシュバーガー。
これもシェフズテーブルで焼きたてのものを作ってくれる。
焼きビーツのポケボウル。
これは…何と言うか…私には理解しづらい味だった。
見て分かるように、ご飯にビーツと枝豆と完熟マンゴーが添えられ、ドレッシングが掛かっている。
ご飯も、ビーツも、枝豆も、完熟マンゴーも、単品だと美味しい。
特にマンゴーはとても甘くて、とろける柔らかさだった。
しかし、完熟マンゴーとご飯の相性がすこぶる悪く、そこにドレッシングが輪をかけて不協和音を広げている。
上に乗っているかいわれ大根ではどうにも収めることができない不協和音だ。
ビーツの代わりにマグロが入っているものもあったが、これも厳しかった。
(ご飯+マグロ)×ワサビ醤油=美味
この計算式に同意してくれる日本人は多いだろう。
しかし、これが、
(ご飯+マグロ+マンゴー)×ドレッシング
となると、私の脳では処理できないらしく、脳内にエラーの警告音が鳴り響いた。
ここの食事は日本ではなく、海外でメニューが考えられていると確信した瞬間だった。(実際は知らない)
気を取り直して、デザート。
一口ワッフル。
用意されている飲み物は、試合前と同じだった。
私は酔うと眠くなるので、試合前はアルコール度数の高い飲み物は控えていたのだが、試合後は解禁。
大好きな日本酒に手を出した。
ドリンクスタンドに行くと、ビールは缶や瓶で渡され、それ以外のものはコップ一杯ずつ注いでくれる。
日本酒は、コップではなく、お猪口に注いでくれる。
本格的だ。
本格的なのだが、お猪口一杯を何度もドリンクスタンドに取りに行くのがどれだけ非現実的なことかを、誰か主催者に教えてあげてくれ!
結論としては、試合後は、チーズとワインでまったりと過ごすのがいいだろう。
チーズも豊富に用意されている。
特にブルーチーズが気に入ったが、ウォッシュタイプのチーズも上品なクセで美味しかった。
トークショー
試合後にもポストマッチトークショーが用意されている。
ゲストは試合前と同じジョエル・ストランスキ、イズラエル・ダグ、アンドリュー・マコーミックの3人。
確か10分程度だと思うが、試合についてのプロの見解を聞くことができた。
試合終了後、1時間後の22時半に閉会が告げられた。
心地良い酔いと疲労感で満たされていた。
夢のような一日が終わろうとしていた。
さあ、現実に戻って、家に帰ろう。
お土産
このホスピタリティーチケットはお土産もセットになっていて、入場時に渡される。
この日、いただいたのはこちら。
1つ目は公式プログラム。
表紙に印刷されている通り、この試合のために作られたもので、内容も対戦相手が決まってから大急ぎで書き上げたのだろうと思う。
全ページカラーで、読み応えがある。
2つ目は立派な箱と袋に入った双眼鏡。
幅やピントを調整できるものだ。
試合前にいただけるので、試合中に使うこともできる。
ドレスコード
事前に送られてくる招待状に、ドレスコードが記載されていた。
書かれていたのはこの3点だ。
- スマートカジュアル
- ラグビージャージならなお良し
- 企業のロゴが入った服はNG
公式ホームページには、もっと詳細に書かれていたので、まとめるとこうなる。
- 穴あきや色落ちしたデニムはNG
- 襟のついたもの推奨。トレーナーはNG
- 女性はジーンズにジャケット、もしくはフォーマルすぎないワンピース
- 応援するチームのジャージ、チームカラーのマフラーやスカーフがおすすめ
女性誌風に言えば「きれいめカジュアル」といったところだ。
我々は、日本と南アフリカのジャージがあったので、それを着ていった。
ラグビージャージは襟がなくても問題ない。
私は日本ジャージにホワイトデニム。夫は南アフリカのジャージにチノパンを合わせ、足元はレザーのスニーカーにした。
当日、中には襟のないTシャツの男性も少しはいたが、スタイルが良く「きれいめ」の範疇に収まっていた。
場馴れしていない場合は、あまり無茶はしないほうが良さそうだ。
参加者について
この1人20万円もするチケットを買うのはどんな人なのか、興味津々だった。
当日、周りを見た印象で言うと、
- 企業の招待客:60%
- 海外からの観光客:30%
- 日本の個人客:10%
といったところ。
ちなみに、企業の招待客の中には海外の方も含まれるので、会場の中は半数以上が海外の方に感じた。
会場内では、世界中にネットワークがある保険会社の日本法人の社長や、ラグビーの放映権を獲得できなかった某テレビ局の社長や、日本シリーズに進出できなかった某プロ野球チームの監督を見かけた。
おすすめできる人、できない人
ホスピタリティーチケットは、どんな人におすすめできるか考えてみた。
一番におすすめできるのは、企業の接待だ。
個人参加の私でさえ、他の海外からの参加者の方と一体感を味わえたのだから、企業の方が取引先の方と参加したら距離がぐっと縮まるだろう。
取引先の方同士の交流も深まり、新たな縁が生まれると思う。
逆に、絶対おすすめしないのは、お金を払ったら物理的に元を取りたいと考える人だ。
準々決勝のカテゴリーAの席は一般販売で4万円。
お土産の双眼鏡も、たぶん2000円くらいで同等のものが買えると思う。
どんなに食べたり飲んだりしても、20万円を取り返すのは不可能だ。
あのチケットは、物を買うものではない。
海外から来た方と話していた時に、このチケットはどういう人が買うのかを理解した。
その人は、シンガポールに住むノルウェー人だった。
シンガポールもノルウェーもW杯には出場していないのに何故?と訝しむ私に、彼はこう言った。
「日本ですっごく盛り上がってるって聞いたから、見に来てみたんだ!」
そして、一緒に来た仲間を紹介してくれた。
ニュージーランド人やオランダ人など6名ほどでやってきていた。
彼らは盛り上がっているイベントを体験するために、シンガポールから来ていた。
世界的なイベントを経験するためだけに何十万と払って国境を超えてやってくる人たちがこの世にはいるのだ。
一般販売のチケットが売り切れた後も手に入り、いい席が確約されているホスピタリティーチケットは彼らの強い味方だ。
スポーツホスピタリティーは、特別な経験を確実に手に入れたい人が買うチケットなのだ。
最後に:YOSHIKI降臨
あまりに盛り沢山の、濃い一日が終わった。
16時の開場から22時半の最後まで、ずっと夢を見ていたかのような楽しい時間だった。
ホスピタリティー専用の出口から外に出られるので、帰りもスムーズだ。
駅はどっちだろう?と地図を見るためにスマホを取り出した。
夫が一足先に、会場を出て左に向かう。
そのとき、右の方から、何かまばゆいものが押し寄せてきた。
スマホから顔を上げ、右を見ると、そこにはYOSHIKIが立っていた。
後で気づいたのだが、スポーツホスピタリティーの出口と、大会スポンサー関係者用の出口が隣同士にあったのだ。
左には、歩き去る夫。右には、こちらに来るYOSHIKI。
もちろん、迷わず右を選ぶ。
プレイヤーオブザマッチの表彰式のプレゼンテーターをしていたから、同じ会場にいたのは知っていた。
ただ、表彰式では壁で直接姿が見えなかったので、現実感がなかった。
少しでも直接姿を見たかったなあとは思っていたが、まさか本人が目の前に現れるとは予想だにしなかった。
あっという間に、その場にたまたま居合わせた幸運な10人ほどの人たちに囲まれるYOSHIKI。
一人ひとりと握手をしたり、写真を撮ったりしている。
う、羨ましい…。
私も、と思うが、係員の方が「もう時間ですので、こちらへ…」とYOSHIKIを促している。
あああどうしよう。
邪魔はしたくない。でもこんな一生モノのチャンスを逃したくない。
あああああ!!!
そう考えてワタワタしている私の手をYOSHIKIはすっと握りしめた。
顔を上げると、YOSHIKIがしょうがないなあというように微笑んでいる。
YOSHIKIの手は、ふわりと柔らかかった。
写真もお願いするとOKしてくれた。
あ、でも、誰にシャッター押してもらおう!?
パニックになった私の目の前で、夫がスマホを構えて「早く並べ」と言っていた。
私の夢のような一日は、奇跡のような出来事で幕を下ろしたのだった。