『進化思考』進化はいかに起こすのかについて考察された本
人が何かを生み出そうとするとき、それは進化を目的としている。
退化を目的にアイデアを出そうとする人はいない。
映画『三丁目の夕日』を見て、「昔は良かった」という人でさえ、そのままの状態のあの頃に戻りたいかというと違うだろう。
もし今から昭和を目指すとしても、汲み取り便所を復活させることはないだろうし、しょっちゅう停電が起こる電力事情の再現はしないだろう。
今の便利さを保ったまま昭和の良い部分を取り入れた社会を目指すはずで、それはやはり進化である。
人は進化を目指しているのだが、さてどうやって進化していくのだろう?
それを記した本に出会った。
進化はいかに生まれるか
この本によると、進化とは「変異」と「適応」の繰り返しによって起こるものらしい。
突然変異などという使われ方もする変異が起き、その変異が現実社会に適応していく。
適応した結果(もしくはできなかった結果)を踏まえて、さらに変異が起きる。
この繰り返しで、進化していく。
変異というと偶然の産物のようにも思えるが、それを意識してアイデアに取り入れることはできるのだろうか?
適応というと時間の経過によって起こるものに思えるが、意識して適応を早めることはできるのだろうか?
この本にはそのやり方が書かれていて、実践するためのワークも用意されている。
変異
変異には、9つのパターンが有る。
ここでは簡単に紹介する。
変量
超大きく、超小さく、超薄く、超厚く、超高く、超長く、超軽く、超早く、超遅く、超柔らかく…など、一部分が変化すること。
高いところの草を食べるために首が伸びたキリン。
ラジカセを小さくして持ち運べるようにしたウォークマン。
擬態
望ましい状況を真似てみる。
得体のしれない電子メールを世の中に馴染みのあるものにするために、アイコンを封筒にして、自然とメッセージを人に届けるものだと理解させる。
欠失
あるべきものを失くす。
羽のない扇風機(ダイソン)
店舗のない銀行(ネットバンク)、
増殖
常識より増やしてみる。部品の数を増やす。群れや巣を作る。
生き残るために3億もの卵を生むマンボウ。
小さい店舗をたくさん集めたショッピングモール。
転移
新しい場所に移動する。使う場所を変える。役割を変える。
時計を腕につけて、腕時計。
空気に触れると熱を持つ脱酸素剤を持ち歩いて、ホッカイロ。
交換
違うものに入れ替えてみる
交換1:物理的な交換。
似たようなもっといいものに変える。
ポテトチップを割れないように袋に充填していた空気を窒素に置き換えたら酸化防止になった。
交換2:意味的な交換。
似ていないが同じ目的や意味を持つものと交換する。
馬車の馬の代わりにエンジンにすることで、スピードアップ。
交換3:概念的な交換。
お金との交換。
分離
別々の要素に分ける
洗剤を、風呂用、トイレ用と用途別に分ける。
分離のための容器の開発をする。
逆転
真逆の状況を考える
逆転1:物理的逆転。
ワイングラスを吊るして収納する。
逆転2:意味的逆転。
ブラックライト。
逆転3:関係的逆転。
今当たり前と思っていることを、間違ってると考えてみる
天が回るのではなく、地球が回っている。
逆転4:地球環境危機の逆転。
使用済み携帯電話から、レアメタルを回収する。
融合
意外なものと組み合わせる。
カレーうどん。
カメラ付き携帯電話。
適応
適応には4つの概念が有る。
こちらも簡単に紹介する。
解剖
内側の構造と意味を知る
形態の解剖:内部にあるものを分類して形態を観察する
生理の解剖:各部位がなんのためにあるのかを理解する
発生の解剖:要素をどのように生産するのかを理解する
系統
過去からの影響や文脈を観る
分類:現在の事象を収集する
系統学:過去からの流れを理解する
生態
外部との関係を想像する
WHO:誰が関係している?
WHAT:何とつながっている?
WHEN、WHERE:どのような状況?
WHY:それぞれの存在意義は?魅力はある?存在し続けるだけの資源はある?天敵はいる?変化に対応できる?寄生されない?共生できる?ニッチなポジションにいる?同じ目的を共有する仲間はいる?領域を超えて繋がる?個への求心力を持つ?
予測
未来を明確かつ希望あるものとして想像する
・過去から現在までの流れの延長にある未来を、解剖的・生態的なデータから観る
・欲しい未来のビジョンを描き、そのディティールを解剖的・生態的に細部まで想像する
進化=変異と適応の往復
変異と適応、それぞれのプロセスを経て、繰り返し発現する。
繰り返す度に螺旋階段上に上っていき、進化していく。
変異と適応の統合を目指すならば、「変異の9つのパターン」と「適応の4つの概念」を頭に入れて、全ての観点をイメージする必要がある。
この本には、それぞれを具体的にイメージするためのワークが、全てのパターンと概念に対して用意されている。
このワークを繰り返し行うことで、変化と適応の統合のためのスキルが身につくだろう。
感想
冒頭に書いたように、私は「変異」とは偶然の産物だと思っていたし、「適応」は時間が生み出すものだと思っていた。
だが、変化と適応は意識することができる。
進化のための創造を生み出すことができる。
もちろん本を読んだだけで簡単に進化への一歩を踏み出せるわけではないが、糸口を掴むことができるだけでも見える世界が変わる予感がある。
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