直葬を考えたときの葬儀社の選び方
直葬をしようと調べた結果、葬儀社にお願いすることに決めた。
そして、葬儀社はどこも似たりよったりだと思っていたが、そうではないようだった。
私の母は福岡県糸島市というところに住んでいた。
この記事は糸島市で直葬を行うために葬儀社を探した経験談である。
地名をぼやかすと説明がかえって面倒になる部分があったため具体的な地名を出したが、内容については全国共通に起きることだと思うので、福岡以外の方にも参考になる部分があると思う。
葬儀社がやってくれること
葬儀社に直葬の手配をお願いしたが、具体的にやってもらったのは下記の項目になる。
搬送
私の母は病院で亡くなったので、病院まで迎えに来てもらった。
エンゼルケアは病院でやってくれた。
棺の用意、納棺、安置
病院で引き取った遺体は、担架のようなベッドのようなものに載せて運ばれていった。
葬儀社の方で用意した棺に納めて、火葬の時間まで葬儀社の安置場所で預かっていただいた。
役所の手続き
葬儀社の方に病院で受け取った死亡診断書を渡したら、夜にも関わらず役所に届けを出してくれた。
その場で火葬場の予約も取ってくれた。
火葬場までの移送
安置場所から火葬場までの移送もやってもらえた。
火葬場での案内
火葬場に付いても何をしていいか分からなかった父と私を案内してくれた。
僧侶は呼んでいなかったのだが、お焼香の準備をしてくれた。
待合室への案内や、骨を拾うときの案内に支払の手続きなど、最後までずっと案内してくれた。
骨壷の用意
骨壷も用意してもらった。
素材や形は選べず、大か小かの二択だった。
私がやったこと
一方、私がやったことはほとんどない。
母の棺に入れるお別れの花とお菓子を準備したことと、代金を用意しただけだった。
直葬をお願いする葬儀社選び
葬儀社を選ぶ際、ツテや心当たりがなかったので、最初はどう選んでいいか分からなかった。
まずは「糸島市 直葬」で検索をし、そこで出てきたところに電話をして確認をした。
葬儀社を選ぶにあたって、代理店にお願いするかか葬儀社に直接依頼するかを考える必要がある。
代理店は、代理店が決めた基本メニューがあって、申し込むと、葬儀をお願いする地域でそのメニューで葬儀を行う葬儀社を紹介してくれる。
葬儀社に直接お願いするなら、自分で地域の葬儀社を選んで、その葬儀社がやっている基本メニューをベースに、どういう葬儀をするかを相談する。
私の場合
まず私の結論であるが、葬儀社に直接依頼をした。
最初は代理店にお願いしようと思い情報を集めていたのだが、違和感が出てきたためだ。
各葬儀社に電話を掛けたときの印象を書き残しておく。
電話の応対をした担当者によって印象が大きく変わると思うので、店名は伏せておく。
なお、直葬プランの金額は、安い順に、代理店B、代理店A、葬儀社D、葬儀社C、葬儀社Eである。
一番高い葬儀社Eの値段は、一番安い代理店Bの値段の2倍弱である。
・代理店A
検索をしたときに、大きく広告が出てきた葬儀の代理店。
まず、名前と住所と電話番号を聞かれた。
残念ながら、母の住む福岡県糸島市はエリア外と言われたが、数時間後に隣の福岡市に遺体の安置をするなら引き受けられるとあらためて電話を頂いた。
調べてくれたことに好感を抱いたが、搬送料が追加で掛かるのと、なぜ福岡市まで運ぶのかがこの時点では分からなかったため、詳細な話を聞く前にお断りした。
・代理店B
検索で広告が出てきた葬儀の代理店。
こちらも、最初に名前と住所と電話番号を聞かれた。
糸島市はエリア内ということで話を詳しく聞いた。
火葬だけのシンプルなプランについて話を聞いたのだが、シンプルなプランだけだと侘しいものになるということで、オプションをいろいろと勧められた。
印象的だった営業トークに「棺に花を入れるのも別料金ですが、他の棺は花でいっぱいなのに、自分のところだけ無いとみじめですよ」(正確に「みじめ」と言ったかの記憶は曖昧だが、それくらいインパクトある言葉だった)がある。
母は庭で花を育てていたので、その花を持ち込めないかと聞いたが、火葬場が禁止している場合もあるので不可能だという返事だった。(後日火葬場に直接確認したところ、少なくても糸島市公営では禁止していなかった)
最初に伝えた住所や名前以外にもこちらの情報をお伝えすると割引があるとのことだが、入院している病院名や病名や母がいつ頃死にそうかなどを聞かれ、いたたまれない気持ちになってしまった。
そのため、話を途中で打ち切らせてもらった。
・葬儀社C
「糸島市 直葬」で検索して出てきた葬儀社。
WEBサイトに知りたい情報が全てまとまっていたので、それだけで好感を持った。
電話をしてみたところ、私からの質問に全てお答えいただいたうえで、「事前にこちらからお伺いする情報はありません。私共が必要となりましたときにお電話をいただければ大丈夫です。24時間365日、いつでもお電話ください」と言ってくださった。
代理店AやBに「余命宣告はされてますか?」的なことを聞かれて心が重かったので、この対応は助かった。
また、オプションについても、「こちらからおすすめすることはありません」ときっぱりと言っていただいたのも安心だった。
・葬儀社D
ここは、代理店Aの福岡県内の特約店である。
同じシンプルなプランでも、代理店Aを通してお願いするより5万円ほど値段が高くなるが、電話をしてみた。
とても感じのいい人が出たが、糸島市はエリア外ということ。
糸島市内に系列の葬儀社があるため、直接の依頼は受けられないのだそうだ。
(代理店Aが遺体の安置は福岡市でしかできないと言った理由も、系列同士での融通は利かせていないためなのだと思う)
糸島の系列の葬儀社の連絡先を教えてもらったが、値段は更に3万円ほど高くなるとのこと。
そこを葬儀社Dと同じ値段でやってもらえないかと口添えをしておくと言ってくれた。
・葬儀社E
葬儀社Dの系列の葬儀社。
値引を相談しておいてくれると葬儀社Dの方は言ってくださったが、葬儀社Eとしては値引をするつもりは一切ないらしく、けんもほろろ。
私は招かざる客らしく突き放す口ぶりだったので、早々に引き下がる。
代理店と葬儀社、メリットとデメリット
代理店と葬儀社それぞれのメリットとデメリットが見えてきた。
代理店のメリット
・その地域の葬儀社や火葬場が分かる
・受付電話の担当者は葬儀を担当する会社とは違う会社の人なので、聞きづらい質問もしやすい
代理店のデメリット
・オプションの提案をされる
・電話受付担当はその地域の風習を知らないため、質問をしても「一般的にはこうですが、詳細は葬儀をやる際の打合せで確認してください」といった回答となり、参考にならない
葬儀社のメリット
・葬儀を担当する会社の方と直接話すことができるので、実務的なことを詳しく聞ける
・その地区の施設の情報に詳しい
・その地域の風習に詳しい
葬儀社のデメリット
・居住地域で直葬をやっている葬儀社を調べるのが難しい(小さい葬儀社は検索では出てきずらい)
ざっくり言うと、情報収集という観点では、代理店はあまり役に゙立たなかった。
質問をしても一般的な話ばかりで、自分の場合はどうなるかを知ることはできなかった。
葬儀社はさすがに地元密着だけあり、具体的な回答を得ることができた。
料金は、一見すると代理店が安い。
上記の代理店Aと葬儀社Dの関係のように、葬儀社に直接お願いするよりも、代理店を通したほうが料金設定が安い。
だが口コミを見ると、オプションを付けるようにとかなり言われるようだ。
電話受付だけではなく、葬儀の打合せの際にも言われるらしい。
言われるがままオプションを付けていたら、結果的に直接お願いするよりも割高になってしまう。
ただ、オプションの営業を受けて、良かったことはある。
「棺に入れる花が余所より少ないとみじめですよ」
「僧侶を呼ばないと、体裁を悪く感じる人もいますよ」
といったオプションの営業文句は、そのまま周囲の反応でもあると思ったからだ。
口うるさい親戚がいたら、こういうことを言ってくるであろう。
何を言われるのかの予行演習を事前にできたのは悪くなかった。
代理店ではなく葬儀社を選んで感じた良い点
我が家では、上記の葬儀社Cにお願いした。
WEBサイトでも電話でも、余計なことを聞かず、言わず、必要なものは全て簡潔に提示してくれたため、やり取りが気持ち良かったことと、電話に出た方の語り口に信頼が持てたからだ。
私はこちらの葬儀社にお願いして、本当に良かったと感じた。
その理由は大きく2つある。
1.全くオプションを請求されない
最初、代理店にお願いしようと考えていたときは、オプションの営業は断ることができると考えていた。
経理歴20年以上という仕事柄、見積書の内容をチェックして、不要なものを削る交渉をするというのは日常業務としてやっていたからだ。
しかし、母が亡くなった直後にそれをやらなければいけないのは、うんざりする。
気持ちに余裕がなかったため、「これがないとお母様も寂しいと思いますよ」なんて言われた日には、「母の何を知ってるのか!」と声を荒らげてしまったかもしれない。
父は、母のそばで交渉をするのは嫌だと言っていた。
言われてみたら、確かに死人の枕元でお金が絡む話をするのは抵抗がある。
私がお願いした葬儀社さんは全くオプションについて触れなかったので、無駄に気持ちをざわつかせることが無くて、本当に良かった。
母が育てた庭の花を棺に入れたいというお願いも、代理店には断られたが、こちらの葬儀社は気持ちよく許可してくれた。
2.ドライアイスの融通をきかせてくれる
代理店の一番安いプランでは、ドライアイスは1泊2日分しか付いてこない。
しかし、死亡後24時間は火葬ができないことを考えると、実際の遺体の安置が1泊2日で済むとは限らない。
私の母のように夜に亡くなった場合は、24時間後は火葬場が営業時間外のため、最低でも2泊は必要になる。
糸島の火葬場は1日の枠が埋まってしまうことはないらしいのだが、都会の火葬場は順番待ちが発生しているとも聞く。
ドライアイス代の追加分を請求されることがほぼ確定しているようなものだ。
お願いした葬儀社は、一番安いプランでも2泊3日ぶんのドライアイスを用意してくれていたため、追加料金の心配をせずにいられて安心だった。
後日、「もし、火葬場がいっぱいで、2泊以上安置が必要な場合はドライアイスの追加はおいくらですか?」と聞いたところ、「火葬場の都合でしたら、追加が発生しないように考慮します」と言ってくださった。
遺族の都合で日程が合わない場合はドライアイス代の追加請求を考えるが、そうではない場合の1日程度の延長であれば、融通を利かせてくれるらしい。
本当に延長料金が不要かどうかは、季節や状況によるだろうとは思う。
それでも、隙あれば遺族にオプションを請求しようとする営業を受けた後では、なるだけ遺族に請求しないようにしようと考えているこちらの葬儀社に誠意を感じた。
葬儀社を選ぶために考えておくこと
不用意に流されること無く直葬を済ませたいのなら、葬儀社を選ぶ際に自分がどういったお葬式を開きたいのかということを考えることが大切になる。
自分にとって必要なものと不要なものをしっかり決めて、葬儀社との打合せに臨めば、不要なものを請求されて微妙な気持ちになることはないだろう。
求めているのは何か?
直葬を考えている人の中には、葬儀料金をなるべく抑えたいという動機の人もいるだろう。
その場合は、オプション追加を断りきる覚悟を持って最安値を謳っているところを探すといい。
お金ではなく、シンプルに済ませたいという動機の人もいると思う。
その場合は、いくら式をシンプルにしても、そのための交渉で疲れてしまったら心は全然シンプルでは済まないので、少々割高でもオプションなどは請求しないと言っているところがいいだろう。
一方、工程はシンプルであっても、お花や僧侶などポイントになる部分は手厚くやりたい人もいるだろう。
その場合はオプションが沢山用意されている葬儀社が合っている。
直葬で聞かれる三大オプション
自分が目指しているものが分かったら、次は必ず聞かれるオプションの有無について、あらかじめ考えておくといい。
花
棺に入れる花である。
私は「他の棺は花でいっぱいなのに、自分のところだけ無いのは〜」と言われて一瞬ひるんだが、冷静に考えると、余所の家族の棺の中を見ることはないと気づく。
人の目を気にする必要はない。
僧侶
火葬の前に読経するかどうかだ。
故人や遺族が必要とするかどうか次第であろう。
お別れの時間
火葬前の最後の対面の時間をどれだけ取るかだ。
家族のみなら数分でいいと思うが、もし親戚や親しい方などをお招きするなら、時間を用意したほうがいい。
最後に
ここまで書いたことは、私がたまたま今回した経験であって、出会った担当者が良かったり悪かったりしただけという面があるはずだ。
なので、ここで書いた葬儀社について良い悪いを考えるよりも、こういうことが起きる可能性があるという物語として読んでいただけるとありがたい。
お葬式は、結婚式等の他の人生の節目のセレモニーと違って、本人不在で行われる。
近しい人を亡くした直後の精神状態で、本人の意向が確認できないまま、いろいろなことを決断する難しさがある。
まだ何も起きていない平穏なときに、こういう情報を仕入れておくことで、守れるものがあると感じた。