『15分の少女たち-アイドルのつくりかた-』からプロデュースとマネジメントを思う
発売日を楽しみにしている漫画があった。
『15分の少女たち アイドルのつくりかた』という漫画だ。
その漫画が突然終わってしまった。
バタバタと志半ばで無理矢理に終了した感じがするので非常に残念だが、私は好きだった。
15分の少女たち
この漫画の公式の紹介文はこれだ。
昨今 大流行しているアイドルオーディション番組。
そこでは、アイドルたちがもがきながら成長していく姿が描かれているが、
そこには「映し出されていないもの」があった―――
紹介文から分かるとおり、オーディションで選ばれた少女たちがアイドルとして成長する姿を追うストーリーなのだが、私はこの漫画には3つの視点が盛り込まれていると思った。
1.少女たちの成長
2.アイドル業界の裏話
3.マネジメントやプロデュースとは何か
この中の「マネジメントやプロデュースとは何か」の部分が私には面白かった。
マネジメントとプロデュース
この漫画の主人公は小林という新人のマネージャー。
小林の上司は雨宮という敏腕のプロデューサーである。
マネジメント
マネージャーの小林くんは、とことん熱意はある。
残念なことに、その熱意は上滑りなのだが、本人は気付いていない。
熱が伝わらないことに小林くんは苛立つが、雨宮Pを始めとするプロフェッショナルの仕事に触れて、自分に何が足りないのかに気づいていく。
小林くんは、マネジメントの仕事とはアイドルに期待を寄せて才能を信じて一番近い味方として応援することだと思っている。
しかし、期待の大きさが、相手を潰すこともある。
マネジメントに必要なことは、まずは容量の把握だ。
アイドルがどれだけの負荷に耐えられるのか。
そしてどれだけの時間を持っているのか。
それを知った上で、そこに見合った期待に留めておかないと、相手を潰してしまう。
でもそれは、相手が負荷なく受け取れるだけを渡せばいいわけではない。
大きな負荷を掛けることで、殻を破って大きく花開く。
ここぞというところでは負荷を掛け、そうではないところでは負荷がないように留める。
このサジ加減がマネジメントの難しさだ。
プロデュース
プロデューサーの雨宮さんはキレッキレと評判のプロデューサーだ。
雨宮さんは言う。
「目指しているものが、アイドルでなくても手に入るなら、アイドルはおすすめしない」
アイドルは過酷だ。
少女たちの自由な時間は無くなり、常に人目にさらされる生活となる。
オーディションを受けに来た少女たちが求めているものは、そこまでしてでも欲しいものなのだろうか?
実は、少女たち自身は、自分が何を求めているかを分かっていない。
本人にさえ分かっていない心の奥を、雨宮さんは見極める。
他にも雨宮さんの仕事はいろいろあるが、重要なのが、ストーリーの演出だ。
アイドルをどういうストーリーに乗せて売り出すか。
世界観の確立とも言いかえられる。
そして、その世界観を生み出すために、いろいろな分野のプロの手を借りる。
プロたちに世界観を伝え、その気にさせるにも雨宮さんの仕事だ。
感想
この漫画は全6巻だが、私が一番面白かったのは3巻だ。
3巻は、デビューが決まったアイドルグループの世界観を作り上げるために、デビューシングルに入れる曲を制作し、ロゴマークを作るシーンが描かれている。
特に小林くんが音楽制作会社に熱意の上滑りを見抜かれて打ちのめされるシーンと、ロゴ制作のデザイナーの仕事に圧倒されるシーンは、私自身のことも振り返って考えさせられた。
私は一人で仕事をしているので、自らのプロデューサーとマネージャーであるとも言える。
でも私は、雨宮さんがアイドルのことを考えるほど、私のことを考えていない。
私自身の容量も分かっていないし、世界観やストーリーもない。
手に入れたいものも、きちんと言語化できていない。
もちろんアイドルを目指している訳ではないので、これでいいのかもしれない。
しかし、私自身のプロデューサー兼マネージャーとして、もっと私のためにできることがあるのではないかと、思いを巡らせている。
この漫画は全6巻。
アイドルとなった少女たちが壊れていく様子などの描写も引き込まれるものがあった。
明るくキラキラしているだけではなく、でも金と欲だけが渦巻いているのでもなく。
最後、突然大団円で終わるのがあっけないが、興味ある方はぜひ。