採用の場で面接官が見るものは 〜大事なものは言葉ではない
印象深い採用面接
私の3回目の転職活動で、今でも忘れられない、とても不思議な採用面接を受けた。
仕事については何も聞かれなかった
面接官は、私の履歴書を見ながら話を切り出した。
面接官:「趣味は、野球観戦ですか。私はサッカー派なのでこう思うのですが、野球も1部リーグと2部リーグを作って入れ替え戦をやる方がいいと思いませんか?」
私:「野球はそれぞれのチームが2軍を持っていてチーム内で入れ替えがあるので、2部リーグをあらためて作る必要はないと思います。」
面接官:「でも明らかに弱いチームがあるのはいかがなものでしょう?」
私:「確かに最近の横浜は見てていたたまれませんね。」 ※注 2009年時点
(ここでひとしきり横浜の話題で盛り上がる)
面接官:「それでは高校野球についてはどう思いますか?」
私:「一つ負けたら終了、というシステムがいたずらに悲壮感を煽っていて好きではありません。」
面接官:「あれは大人のために試合をやっている気がして私も好きではありません。」
私:「マメがつぶれて血染めのボール、のようなものが美談として語られるのはどうかと思うのですよ。・・・」
(ここでひとしきり高校野球の話題で盛り上がる)
面接官:「独立リーグは今後どうなるんでしょうねえ。」
私:「実は野球、相当お好きでしょう?独立リーグの話題は普通の人はしませんよ。」
面接官:「いえ、社会の動き、という意味で押さえているだけです!今、独立リーグが熱いですよね?」
私:「確かに私の周囲などごく一部では熱いですが、世の中的にはそうでもありませんよ(笑)」
面接官:「え・・・。そうですか??」
(ここでひとしきり独立リーグの話題で盛り上がる)
面接官:「ではこれで私の聞きたいことは以上です。何か質問はありますか?」
私:「え?」 (野球の話しかしてないっ!)
結果は…
面接の翌日、転職エージェントから電話があった。
「一次面接通過の連絡が来ました。おめでとうございます!能動的にお仕事ができる方という印象を持った、という評価がきています。二次面接もこの調子で頑張ってくださいね!」
この会話のどこから能動的に仕事ができると判断されたのだろうかと、とても驚いた。
結局、この会社には入社していないのだが、この採用面接はとても印象に残った。
自分が採用面接をするようになって
このときの3回目の転職活動で入社した会社は、フィリピンに子会社を持っていた。
ある日、そこでの採用活動にも関わることになり、マニラに飛んだ。
英語ができないのに英語で面接官をした
採用面接の時間がやってきた。
私とフィリピンのスタッフが数名で、応募者を1名ずつ面接する。
面接は英語で行われる。
英語のできない私は、事前に質問をいくつか考えてメモして臨んだ。
しかし、応募者は私の想定をはるかに超えた回答を返してきたので、全く聞き取れず、会話にならなかった。
こんな調子で5人ほどの面接を行った。
結果は…
すべての面接が終了し、面接官が集まって、印象を話し合う時間がきた。
「誰が一番いいと思った?」という回答に皆で答えを出し合って、とても驚いた。
私が一番いいと思った候補者を他の面接官も採用したいと言い、私が物足りないと思った候補者は他の面接官も何かが足りないと思っていたのだ。
前述の通り、面接で相手が何を答えたかを、私は全く理解していない。
一番いいと思った候補者は、複数の候補者の中で、一番私の言うことを一生懸命聞き取ろうとし、きちんと考え、自分の意見を述べた、という気がしただけなのだ。
それなのに、きちんと会話をしていた他の面接官と評価が一致したことが、とても興味深かった。
採用面接で見ているもの
私が受けた採用面接では仕事の話を全くしなかった。
私がした面接では、仕事の話をしようとはしたが会話にならなかった。
でも、それで分かるのだ。
結局のところ、採用面接においては、何の話をしているかはあまり関係がないのだ。
要するに、自分が面接を受ける際には、立派な受け答えができるように答えを練るよりも、相手の目を見て話したり、相手の言葉を受け止めて、感情的にならずに自分の意見を伝えることができるかを意識したほうがいい。
自分が好きな分野で既存のシステムを否定されても、面接官と会話ができないといった想定外の事態が起きても、感情を乱さず冷静に対処できるような心のゆとりがある方がいい。
もちろん、経理職の中途採用のように、ある一定のスキルが必要な職種に関してはスキルチェックを行う必要はある。
私が受けた採用面接では、二次面接で私の持っている経理スキルについて確認された。
マニラでの面接では、事前に筆記試験があり、基本的なスキルの確認をしている。
しかし、その人の仕事に臨む姿勢を知るためには、仕事の話をする必要はなく、ただ人とどう向き合うかを見ればいい。
それを見るのが、人と人が顔を合わせる採用面接なのだ。
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