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天藤(浅草)にて天丼を食べる。3年半ぶりの味、お父様との思い出。

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浅草の天丼

久々に浅草で天丼でも食べようと思い立ったゴールデンウィーク。

浅草の天丼は、知らない人が見るとギョッとするほど黒い。
関西の天丼は野菜が多く入るが、関東の天丼は野菜は1つで残りは魚介類が基本だ。
関西の天丼がサラダ油などでさらっと揚げているのに比べ、関東は胡麻油でしっかりと揚げる。
これは、江戸時代、東京湾で取れた魚介を、臭みを取るために香りの強い油でしっかり揚げていたからと言われている。
それをさらに味の濃いツユで食べやすくしたのが江戸の天丼である。
江戸時代随一の繁華街・浅草で力仕事をしていた男たちが、短い時間でカロリーと塩分を補給できる食べ物。
そう考えると、浅草の天丼が、黒い理由がよくわかる。
 

天藤(てんとう)

ホッピー通りの入り口の交差点に天藤はある。
さすがGWの中日のせいか、お昼時を外した午後3時半に訪れたのに、1組待っているお客さんがいる。
5分ほど待って入店した。

魅惑の天丼

天丼の他にかき揚げ丼もあるが、ここは迷わず天丼を注文。
待つことしばし、で、ついに登場。

蓋が閉まらないところを見せるものサービスの一つ

中身は、海老2本、キス1匹、小海老と小柱のかき揚げ、ナス1切れ。
写真では何がなんだかよく分からないが、これでもずいぶん分かるようになった(詳細は後述)

お味噌汁とお漬物が付いて、2000円である。

ぱっと見、黒くて濃く見えるが、甘ったるさもしょっぱさもなく、飽きることなく最後まで美味しく食べられる。
油が上質なのか、食べている途中も食後もまったく胸焼けや胃もたれもしない。
とても美味しかった。

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天藤の思い出

食べ終わった後、険しい顔で天ぷらを揚げていたご主人に聞いた。
「前にいらしたお父様の息子さんですか?」

私が天藤を訪れたのは3年半ぶりである。
前回訪問した際は、もっとお年を召したお父さんが揚げていらした。
お父さんが揚げる天ぷらは迫力があって、食べてみないと何が入っているか分からないものだった。
それでも、食べると、具の味がしっかり引き出されていて、美味しかった。

全部食べると、お父さんはにっこり微笑んでこう言った。「おうおう、全部食べたねえ。」
お母さんも私の丼を覗き込んで、にっこり微笑んでこう言った。「まあ、一粒残らずきれいに食べて。」
40歳も近いというのに、4歳の子供のように褒められて照れ臭かったけれど、悪い気はしなかった。

お父さんが揚げた天丼。2013年撮影

その後、天藤には「休業中」という紙が貼られた。
最初の頃は、お父さんが病気療養中と聞いていた。
その後、お父さんが亡くなったと聞いた。
1年近く休業したあと、ひっそりと店が開いた。

お父さんの笑顔を思い出すと寂しくて、なかなか新しい天藤に足を踏み入れることができなかった。
でも、やっぱり天藤がどうなったか知りたくて、ようやく訪ねることができたのだった。

「娘婿になります。」
天ぷらを揚げていた若いご主人は答えた。
天ぷらを揚げる時は険しい顔だったが、笑うとかわいらしかった。
新しい主人が揚げた天ぷらは、お父さんの天ぷらより、衣が薄く食べやすくなっていた。
そして、最後まで飽きずに夢中で食べられる美味しさは変わっていなかった。

「美味しかったです!」
3年半前と同じようにお礼を言って店を出た。
「海老が美味しかっただろう?」と笑うお父さんはもういない。
代わりに「ありがとうございます」とはにかんだ笑顔が返ってきた。

お店情報

天藤
東京都台東区浅草1丁目41-1
03-3841-5802
営業時間:10:30~17:00
休業日:月曜日


 

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