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しずかみちこ
Gallup認定ストレングスコーチ
ストレングスファインダー(クリフトンストレングス)の専門家として、個人やチームが「強み」を活かして最大の成果を生み出すためのコーチングと研修をしています。

リクルートスタッフィングで経理したり、レアジョブの管理部門立ち上げたり、ブラック企業に入ったり、上司の横領見つけて辞めさせられたり、人の会社2つ作ったりと波乱万丈な職歴の後、独立して今に至ります。

投資と経理スキルでお金をデザインし、ストレングスファインダーで強みを活かしたら、人生が楽しくなりました。

趣味は野球観戦と美味しいものを食べること

収集心・最上志向・戦略性・未来志向・分析思考
ストレングスファインダーのnote
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「流れ」について、3つの優勝を見て思うこと

スポーツの試合において「流れ」という言葉が使われることがある。
流れに乗ると勝利に近づき、流れを手放すとやることなすこと空回りする。

「流れ」なんて存在しない、と言われることもあるが、私はあると思っている。
そして、とある条件が揃ったとき…それは特殊なときではあるが…には、「流れ」は作ることもできると思っている。

なぜなら、その流れが作られた現場を、これまでに3回立ち会ったことがあるからだ。

目次

1回目:2001年9月26日 近鉄優勝

私が初めて「流れ」が生まれる瞬間を見たのは、2001年9月26日、近鉄がマジック1で迎えた大阪ドームでのことだった。

この年の近鉄は、壊滅的な投手陣(防御率が5点以上)をいてまえ打線と呼ばれる超強力打線が援護し、序盤は負けていても終盤に引っくり返して勝利するチームだった。

近鉄がリーグ優勝を決めた9月26日もそうだった。
先発のバーグマンが5回までに4点取られた。
しかし、それはいつものことなので、7回までは観客も余裕を持って見ていた。
7回裏に川口憲史のホームランにより2点差になったときには、これはいけるぞ、と思ったほどだった。

でも残念ながら、9回表に、対戦相手のオリックスがホームランを打ち、点差が3点に広がった。
さすがに、ドームに詰めかけた観客も「ああ、今日はダメかな」と感じ、諦めムードが漂い始めた。

その瞬間、聞き慣れた音楽が大阪ドームに響いた。
守護神・大塚のテーマ曲だ!

守護神が出てくるときは、試合に勝っているときだ。
つまり、大塚が出てくるということは、試合に勝っているということだ!

あのとき流れた大塚のテーマ曲には、観客をそのように勘違いさせる力を持っていた。
観客は「今日は勝つぞ!」と盛り上がった。
落ちかけた空気が、ガラッと変わった。
一瞬にして盛り上がり、勝利へのボルテージが急上昇したのだ。

観客の期待に応えた大塚が9回表を締めた後、9回裏に起こった奇跡、ノーアウト満塁から放たれた代打満塁サヨナラホームランは、今でも球史に語り継がれている。


この試合、代打に北川を出した梨田監督の采配が褒め称えられたが、本当に褒めるべきは、9回表に大塚を出したことだと思っている。
あの瞬間、空気がガラッと変わって流れを呼び込めたからこそ、生まれたサヨナラホームランだと思っている。

2回目:2013年9月26日 楽天優勝

私が2回目に流れが生まれた瞬間を見たのは、2013年9月26日、所沢でのことだった。

楽天がマジック2で迎えたこの試合。
札幌で同時刻に行われた日本ハムvsロッテ戦にてロッテが負け、所沢で西武vs楽天が勝つと、楽天の優勝が決まる状況だった。

しかし西武は乗りに乗っており、前日と前々日は、西武が楽天に2試合連続のサヨナラ勝利を収めていた。
完全に流れは西武にあった。

試合前、楽天監督の星野仙一は言った。
「この試合は、田中将大を抑えで使う」
このシーズン、ここまで22勝0敗という脅威の成績を収めていたエースを抑えで使うと言うのだ。


試合が開始して、やはり流れは西武にあった。
6回裏の時点で、3-1と西武が2点リードしていた。
更に、北海道ではロッテがリードしていた。

今日の優勝はないな、と観客が思ったとき、ブルペンに田中将大が現れた。

西武ドームはブルペンが観客の目の前にある。
ブルペンに田中将大がいることに気がついた楽天ファンのざわめきが広がる。

そのとき、北海道にも動きがあった。
日本ハムが逆転をし、ロッテが負けているようだ。
観客から「ロッテが負けているぞ!」と声が上がり、観客席のボルテージが上がっていく。

「ロッテが負けそうで、田中将大が準備をしているということは、今日は楽天が優勝するということだ!」

優勝を確信した観客が盛り上がる中で迎えた7回表、2アウト満塁からアンドリュー・ジョーンズが走者一掃のタイムリーを打って、楽天が逆転した。

その後、星野仙一の予告通り、田中将大が抑えを務めて、胴上げ投手となった。


星野監督は、西武ドームはブルペンが観客から丸見えだからこそ、田中将大を抑えに指名したのだと思っている。
この三連戦の悪い流れを断ち切るためには観客が優勝に向けて盛り上がることが必要と知っていて、その状況を作るためのキーワードとして、田中将大を抑えに指名したのだろう。
そのヨミは当たり、ブルペン近くの席からざわざわと広がっていったあのざわめきが球場の雰囲気を変え、楽天に流れを呼び寄せた。

ブルペンで投球練習をする田中将大

3回目:2023年9月20日 オリックス優勝

そして3回目。
またもや、流れが生まれる場面に立ち会うことができた。
京セラドーム大阪でのオリックス戦のことだった。


オリックスはマジック2。
マジック対象チームのロッテが対戦相手なので、この試合に勝利すれば優勝が決まる。

この日のスターティングメンバーを見て驚いた。
今シーズンはほとんど試合に出ていないベテラン野手のT-岡田の名がそこにあったからだ。
二軍で調子が良いとも聞いていなく、まさかこの優勝が決まる試合のメンバーに選ばれるとは思っていなかった。
このときは(オリックスは若手中心のチームだから経験が少なくて浮足立っているのかな?経験豊富なベテランを入れることでチームを落ち着かせようとしているのかな)と思っていた。

T-岡田は、打順が何番であっても、ここぞというときのチャンスに打席が回ってくる選手だ。
そういう不思議な星回りの選手が時々いて、T-岡田もそのように野球の神様に運命づけられている選手なのだろう。
そのチャンスで活躍できればいいのだが、残念ながら凡打に終わることも多い。
しかしどんなに悔しい思いをしたとしても、古いオリックスファンはT-岡田に夢を見ることを止められない。
暗黒時代からずっとチームの中心にいた精神的支柱なのだ。


この日もそうだった。
0-2の2点差で負けている7回裏の攻撃。
ここまで毎回のようにヒットを打つロッテとは違い、オリックスはランナーすらほとんど出ず、見どころがない状態だった。
7回裏、クリーンナップからの攻撃だが、あっという間に2アウトまで進む。
今日はもうダメかな、という空気が生まれ始めたとき、5番打者のゴンザレスが死球を受けた。

久々にランナーが出た。
打席にはラオウこと杉本が立つ。
ここでラオウが繋ぐことができれば、次の打者はT-岡田だ。

観客のラオウへの期待が高まる。
ラオウがバットを振った。
タイムリーヒットだ!!!
1点を返し、1-2となった。

2アウト、ランナー1塁。
打席にはT-岡田!!
タイムリーの喜びと、T-岡田に回った喜びで、客席は盛り上がる。

そのとき、普段とは違う演出があった。
通常、ランナーが2塁か3塁のいわゆるチャンスのときにしか流れない登場曲「カーニバル」が場内に響いたのだ。
「カーニバル」が流れると、客席のファンはタオルを回して声援を送る。
場内が一体になる特別な時間だ。

やはり、ここぞという場面は、T-岡田によく似合う。
「カーニバル」を聞くと、気持ちが沸き立つ。
まだ一点差で負けているはずなのに、球場内はまるで勝利を決めたかのような最高潮の盛り上がりになった。


盛り上がりの中で勝利を決める一打を放つT-岡田も、球場中に溜息をつかせるT-岡田も、両方知っている。
どちらかといえば、溜息をついたことの方が多いかも知れない。
もしここでT-岡田がアウトになって盛り上がりに水を差したら、この試合は負けるだろう。


でも、この日の盛り上がりは特別だった。
ロッテの投手は、その空気に飲まれているようにも見えた。
常に最高の応援を受けているロッテの選手でさえも怯んでしまうほど、このときのオリックスファンの応援は凄かった。

ロッテの投手は動揺が高まったのかストライクが入らない。
暴投も交えて四球連続ボール球となった。
T-岡田は、全てきちんと見極めて一塁へ歩いた。

場内の空気はそのまま盛り上がり続けた。
盛り上がりに乗った打線は、怒涛の連打を産んだ。
この回一気に6点を取るビッグイニングとなった。

そして、オリックスが優勝を決めた。


どうしてT-岡田がスターティングメンバーだったのかがよく分かった。
オリックス中嶋監督は分かっていたのだろう。
優勝が決まる試合では、流れを味方にしないと勝てないこと。
そして、流れを味方にするためには、特別な盛り上がりが必要なこと。
T-岡田は、その特別な盛り上がりを生み出す選手であること。
そして、ここぞという場面で打席が回ってくる選手であること。

勝手な推測ではあるが、ここぞというときにT-岡田に打席が回るときは、通常の登場曲ではなく「カーニバル」を流すように頼んでいたのではないかとすら思う。
そのヨミが見事に当たり、ここぞという場面で客席に特別な盛り上がりが生まれ、流れを引き寄せたオリックスが勝利することができた。

T-岡田のスタメンを告げるビジョン

「流れ」とは

「流れ」とは何だろう。
ただ応援の声が大きいことではない。
奇抜な作戦を取ることでもない。

私が立ち会った大きな流れが生まれた瞬間に共通することは、指揮官の何としてでも勝つという思いと、観客の勝利を信じる気持ちと、その流れに乗った選手たちと、そういうたくさんの人達の思いがあったということだ。

日々のゲームにも「流れ」は存在する。
どれだけの人が、どれだけの思いを持ち寄るのか。
その思いが流れの大きさを作り出すのだろうか?

答えは分からないけれど、球場には、人間の思いが作り出す特別なものがあるのは確かだと思う。

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