自分の人生とは? 「皆と一緒」が息苦しい羊の話

『FACTFULNESS』無知と思い込みが、どれだけ現状を見誤らせるかを教えてくれる本


『FACT FULNESS』ハンス・ロスリング

手にとったきっかけは、私が尊敬する読書家の方がお勧めしていたからだ。
実は自分がどれだけの思い込みに毒されているかが、データを見ることによって明らかになる本と聞いて興味を持った。

あらすじ

この本で扱われているのは、世界全体、この地球上に住む全ての人類についてだ。

我々は、世界について、どう思っているだろうか?

どんどん良くなっている?どんどん悪くなっている?
貧困層が増えている?
オゾン層がどんどん破壊されている?

実際のところ、世界はどんどん良くなっている。
1日2ドル以下で生活する極度の貧困層の割合は、1997年には29%だったが、2017年には9%まで下がっている。
オゾン層を破壊する物質の使用量は、1970年には1663千トンあったが、2016年には22トンまで減っている。
全世界で教育を受けられる女子の割合は増えているし、電気を利用できる世帯も増えている。

このことが、私には意外だった。
データも見ずに、世界は悪くなっている印象を持っていた。

では、なぜそのように思い込んでしまったのだろうか。
その思い込みが生まれる理由と、世界の事実がこの本では明らかにされている。

特に心に残った部分

私がこの本で一番学びになったのは、世界の所得のレベル分けだ。

「開発途上国」という言葉を聞いたことがあるだろう。
「先進国」という言葉もある。

日本語で書かれたこの文章を読んでいる人は、先進国に暮らす人が多いと思われる。
先進国に暮らす人は、途上国に暮らす人達を自分たちとはかけ離れた遠い存在と思いがちだ。
では、「途上国」と呼ばれる基準は何なのだろうか?

また日本でも「低所得層」「貧困層」という言葉を聞く。
その人達は、世界レベルで見ても低所得で貧困なのだろうか?

この本では、所得レベルを4つに分けて解説している。

例えば、レベル1の人の移動手段は、自らの足。
レベル2の人の移動手段は、自転車。
レベル3の人の移動手段は、オートバイ。
レベル4になると、車となる。

水を手に入れるにしても、
レベル1の人は、数時間歩いて泥水を汲みに行く。
レベル2の人は、自転車で水を汲みに行く。
レベル3の人は、蛇口を捻って水を得る。
レベル4になると、蛇口からお湯が出る。

この基準を知ることで、「先進国」と「途上国」というように二分されているのではなく、世界がグラデーション状に繋がっていることをイメージできるようになった。

感想

上で書いたレベル分けの話を深く理解したのは、かつて中国を訪問した経験に照らし合わせたからだった。

私は、1995年の2月から3月にかけて、北京に一ヶ月半ほど滞在をした。
北京を拠点に、いくつかの街を訪問した。

短期留学生として訪問したので(当時の中国は、留学生もしくは紹介状を持っていないと、訪問が難しかった)、北京師範大学の寮に滞在した。
外国人専用の新しい建物でお湯が出るという触れ込みだったが、実際は必ずしも使えるとは限らなく、極寒の2月の北京で水シャワーを浴びた日が幾日もあった。

大学からは、毎朝、沸かしたてのお湯の入った魔法瓶が1人1瓶配られた。
これは決して珍しいことではなく、当時の北京市民は毎日通勤のときにお湯の入った魔法瓶を持って移動していた。

机の上にある魔法瓶が毎朝配られるもの

 

北京から離れた町はもっと雰囲気が違っていた。
下の写真は大同だ。
駅前こそ車も走っているが、少し離れた住民の生活エリアに行くと、高い建物はもちろんないし、車も見かけない。

大同・華厳寺近く

 

さらに車で進むと、電気もほとんど通っていないエリアに着いた。
ここまで来ると、中国語の標準語である「普通語」が通じない。
テレビやラジオがないので、普通語を耳にする機会がないそうだ。

写真の中央部に水場があり、住民がラバに水を飲ませているのが分かる。
車が珍しいらしく、たくさんの子供達が集まってきた。
観光地の子どもたちと違って、物を売りつけるわけでもなく、物乞いするわけでもなく、黙って車と外国人である我々を見ていた。

雲岡石窟から車でしばし進んだ場所。岩を掘って作った家に住んでいる

 

振り返って思うと、当時は北京といった大きな都市はレベル3で、地方はレベル2だったと感じる。
今は、北京や上海を始めとした大きな都市はレベル4になっている。
地方も、多くの町で生活水準が上がっているだろう。
これが国が発展するということなのだ。

レベル別の世界の人口は、2017年時点では、レベル1:2:3:4=1:3:2:1だそうだ。
200年ほど前までは、世界の85%がレベル1だったらしい。
世界の暮らしは、国によってスピードの違いこそあれど、全体的にレベルが上がり続けている。

日本も、私の両親が幼い頃…第2次世界大戦後すぐだ…は今と全く違う風景が広がっていた。
そこから何十年が過ぎ、今は、レベル4となった。

さて、今、私が当たり前に享受しているレベル4の生活は、果たしてゴールなのだろうか?
これより先の発展があるとしたら、それはどういう世界なのだろうか?
その発展した場所に、人間の居場所はあるのだろうか?

もし発展した場所の主役が人間ではないとしたら。
我々が目指している「発展」とは、いったい何なのだろうか?

すぐには答えが出ない問いを突きつけられた本だった。

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