非常食の袋に詰めるのは基本の品と思い出。思い出がお腹と心を温めてくれる
非常食は、災害の直後は準備するけれど、時が経つとメンテナンスを忘れがちだ。
いざという時に賞味期限切れのものばかりだと意味がない。
我が家ではメンテナンスが楽しみになるように、基本の非常食の他に食べるのが楽しみになる旅のお土産を入れている。
仙台の友人の話
2011年のあの地震の後、私の故郷の仙台宛に宅配便が送れるようになったと同時に、友人宛に荷物を送った。
何を送っていいか分からなく、でも連絡は途切れ途切れにしか取れなくて、しょうがないから目に付いた食べ物をあれやこれやと詰めこんだ。
その後、新幹線が復旧し、ようやく故郷の仙台に帰ることができた。
仙台の友人は言った。
「あのとき送ってくれたレバーパテ。あれ見て、ワインが飲みたくなって、震災後初めてお酒を飲んだんだ。
お酒を飲むことをすっかり忘れていたから、なんかほっとした…。」
お酒好きの夫婦が、半月もお酒を飲むことを忘れるほどだったんだ。
地震が奪うものをあらためて感じつつ、食べ物のもたらす効果に驚いた。
その後、友人からいろいろと話を聞いて、我が家でも非常食を用意するようになった。
非常食
非常食は闇雲に買えばいいものではないが、型通りだとつまらない。
基本のセットとおまけのお楽しみの両方を用意するといい。
基本
基本のセットは、栄養を多少考慮する。
炭水化物
[box class=”box2″]米、袋麺、そうめん[/box]
非常食というと、米を真っ先に思い浮かべる人が多いだろう。
並んで、カップラーメンや袋麺といったところだろうか。
そこにもう一つ、そうめんを加えておくのがおすすめだ。
そうめんは日持ちがするし、コンパクトにまとまっている。
そして、茹で時間が短いため、余震が頻繁に来る中でも調理がしやすい。
その中でも、特にお勧めなのが白石温麺(うーめん)。
宮城県白石市の特産物のため、宮城県外の人には馴染みが薄いが、とても優秀だ。
一般のそうめんとの違いは2点。
・長さが短い
・油を使用していない
白石温麺は長さが9cmほどと短く、小鍋で調理ができるので扱いやすく、食べやすい。
また手延べそうめんが麺を伸ばすために油を使用するのと違い、温麺は油を使用しないので、疲れた胃にとても優しい。
ゆで時間は素麺より少し長めの3分。
沸騰したお湯に投入したら火を止め蓋をして、そのまま3分待てば茹で上がる。
スープに直接入れれば、一つの鍋で調理が完結する。
タンパク質
[box class=”box2″]ツナ缶、サバ缶、即席味噌汁[/box]
地震の直後には、ツナ缶やサバ缶といった火を通さずに食べられるものが、ありがたい。
非常食と気を張って用意するよりも、普段から買い置きをして、無くなる前に補充することを心がけておくといいだろう。
そして即席のお味噌汁。
大豆から作られた味噌からもタンパク質をとることができる。
小袋に入った味噌汁の素を用意しておくと便利である。
その他
[box class=”box2″]野菜ジュース、乾物、甘いもの[/box]
野菜類はどうしても不足する。
ビタミンやミネラルの補給のために、野菜ジュースや干し椎茸や乾燥わかめなどがあるといい。
そして、甘いもの。
いつも好んで食べる人はもちろん、普段食べない人でも、緊張と疲労が続く生活の中では、甘いものを食べるとほっとするだろう。
※賞味期限が5年ある甘いもの
思い出
我が家では、上記の友人から聞いた基本を踏まえて、旅のお土産に非常食になりそうなものを選ぶようにしている。
この写真は、我が家の非常食の一部だ。
左上から、富山県高岡市の素麺、宮城県気仙沼市のツナ缶、福井県小浜市のサバ缶、北海道の鹿の味噌漬け、宮城県石巻市のカレイの縁側、山形県真室川町の蕗の甘露煮、フランスのオリーブ、茨城県神栖市のねぎサバ、スペインのイベリコ豚、韓国で買ったサンマ煮のようなもの、沖縄の黒糖、岐阜県各務原市のカレー、仙台のカレー。
この中には友人からもらったものもあり、どれも思い出深い。
特にイベリコ豚の缶詰!
友人からの頂きもので、これを開ける時はワクワクするだろう。
もし、悲しいことに、災害が起きた中で開けることになったとしても、これをくれた友人の思いと、イベリコ豚への期待感が、心を温めてくれるだろう。
※オススメのご当地品
非常食の入れ替え
我が家では、毎年、3月と9月に非常食の入れ替えをしている。
向こう半年のうちに賞味期限が切れるものを出し、全体のバランスを見て、足りないものを買い足す。
そして旅に出るたびに、賞味期限の長いものを買って帰る。
非常食に思い出を詰めると、もう一ついいことがある。
思い出の品々が増えてくると、入れ替えの作業が楽しくなるのだ。
うっかり忘れがちな非常食の入れ替えが、旅の思い出が蘇る楽しい時間に変わる。
使わないに越したことがない非常食の数々。
でも無ければ本当に困る非常食。
お腹を満たすものだけでなく、心を温めるものも、忘れずに詰め込もう。