働くこと

現金で金一封を1300人を超える全社員に渡したときにやったこと

2017/04/04

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全社員への金一封

シャープが国内の構造改革にメドがついたと、約2万人の社員に一律3000円を支給したらしい。
これが、現金支給と聞いて驚いた。
私が前に勤めていた会社でも、全社員に金一封を現金支給したことがあるのだが、それがなかなか大変だったのだ。
約1300人の社員に現金を用意するのも大変だったのに、2万人とは、大変どころの騒ぎではないだろう。
 

全社員に現金を支給する意味

手間はかかるが、現金で支給することには意味がある。

口座振込では、もらった実感が湧きにくい。
今回のような少額の場合は特にだ。
目録をもらった瞬間は「おおっ」と思っても、ささやかに増えた口座の残高は、いつの間にか日々の支払いの一部として消えていってしまうだろう。

また、銀行口座を配偶者が全て管理している既婚家庭もあるだろう。
その場合、せっかくもらっても、ありがたみを感じる前に配偶者が生活費の一部に組み込む可能性が高い。

現金が手元にあると、ありがたいと感じる。
そして「何に使おうか?」と考える。
結局は生活費の一部になるとしても、いつの間にか消えているより、手元に現金がある方が使った実感が残る。
飲みニュケーションが好きな人なら、その夜のうちに飲んでしまったかもしれないが、そういう楽しかった思いは残る。
 

全社員に現金支給をする手順

現金で支給することに意味があるのだが、その用意は、なかなか大変だ。
ここからは具体的な手順を説明する。
 

配る金額の確定

全社員に金一封を支給するとして、まず、配布金額を決めなければいけない。
役職や在籍年数などにより差をつける案も思い浮かぶだろうが、用意する方からいうと、全社員一律金額が一番ありがたい。
人により金額に差があると、用意にかかる時間が数倍になる。
そして、間違いが発生する可能性が多くなる。

私がかかわったときは、全社員に一律3万円と決まった。
 

配る日程の確定

「今期中だったら、用意が出来次第、いつ配ってもいいよ」
トップはこういう指示を出しがちだが、日程が決まらないと、配る人数が確定できない。
特に月末と月初では、退職者や入社者が発生する可能性があるので、渡す対象者が違ってくる。
何日に渡すか、最初にきちんと決めた方がいい。

また、後述するが、遠方の支社に渡す際に警備会社の現金輸送を使用するならば、日程が決まり次第、早めに警備会社の選定と予約に移った方がいい。
 

配る対象者の確定

金額と渡す日が決まったら、配る対象者を把握する。

雇用形態

管理職、管理職以外の正社員、契約社員、アルバイト、派遣社員。
いろいろな立場の労働者がいるが、どこまでを渡す対象に含めるかを決める必要がある。

なぜこの人には渡さないか、という理由が明確に説明できる場合以外は、全労働者に配った方がいい。
皆が封筒をもらっている中で、もらえない人がいると疎外感が生まれる。
もらった方も、大々的に喜びにくい雰囲気になる。
そうなると、金一封をわざわざ支給する意味が薄れる。
 

退職者・新入社員

明日退職する人にも渡すのか?今日入ったばかりの人にも渡すのか?
そういった議論が出るだろうが、渡す日に在籍している人全員に渡す、と割り切った方がいい。

今まで一緒に働いてきた仲間がもらえないと、周りも寂しい気持ちになるし、これから働く仲間がもらえないと、周りは申し訳ない気持ちになるからだ。
せっかくの金一封なのに、遠慮の空気が生まれて喜べなかったら支給する意味がない。

「辞める奴がもらうのはおかしい!」と言ってくる人もいるだろうが、どこで線を引いても文句を言う人は何かを言ってくる。
ここは割り切って、決めるしかない。

※所得税についても早めに考慮しておこう

配る対象者が決まったら、所得税の源泉徴収についても確認する。
社員の手元に決めた金額を渡すには、いくら源泉徴収する必要があるだろうか。

また、派遣スタッフにも渡す場合には、派遣会社とも相談する必要がある。

配る人数の確定

配る対象者が決まったら、次は人数の確定だ。
人事部に対象者の名簿と入退社情報をもらう。

ただ、現場が採用権を握っているような場合だと、まだ人事に連絡が来ていない入社予定者がいる場合もあるので、注意。
(実際、私が配布したときは、人事の知らないうちにアルバイトが1人増えていて、気まずい思いをした)
 

配る形の確定

配る形といっても、基本は封筒に入れて渡すだろう。
封筒に現金以外のもの(社長からの手紙など)を入れるかどうかも決める必要がある。
 

物の準備

封筒

いちいちお札を折っていたら時間が足りないし、確認するときの手間になるので、お札を折らずに入れられる大きさの封筒が必須条件だ。
熨斗の絵がプリントされているものや大入り袋など、目的に合ったものを選ぶといい。
(こういったところですぐ見つかる→アスクル公式通販サイト

そして、できるならば、封筒に渡す対象者の名前を印字したい。
大々的にではなく、裏面の隅っこでいい。(もちろん大々的でもいい)
もらった方は、自分の名前が書いてあると、自分のために作られたものとして受け取る。
渡す方は、誰にまだ渡せていないかが一目でわかる。
用意する方も、数の把握にとても役にたつ。
例えば、封筒が一つ落ちたとして、印字していなかったら、どの部署の分が落ちたのかわからず、全部署分の封筒の束を数え直す必要があるが、名前が印字してあれば、その部署の束に入れればいいだけとなる。
 

手紙

もし、現金とともに手紙を入れるなら、紙の自動折り機を持っていない限り、折らなくても封筒に入る大きさの手紙にしたい。
封筒の大きさでも変わるが、B5サイズの紙の三分の一程度になるだろう。
賞状の枠のテンプレートがあるので、それを利用すると、感謝状らしさが出る。
紙に同じものを3つ並べて印刷をし、それを切れば準備完了だ。
 

現金

多額の現金になるので、扱いを慎重にする必要がある。
私が作業をしたときは、一人3万円を1300人以上の労働者に支給したため、4000万円の現金を用意した。

事前に銀行に下ろしに行く日を伝え、ピン札で4000万円を用意しておいてもらった。(手数料がかかる)
会社のすぐ隣に銀行があったので自分たちで下ろしに行ったが、銀行から距離がある場合(ほとんどの場合がそうだろう)は、銀行に現金を運んでもらえないか相談した方がいいだろう。

ちなみに、通常は銀行の窓口でお金をおろす場合、カウンターの上で金額の確認をするが、この時は人目に触れるカウンターの上ではなく、窓口の方の手元を覗き込む形で金額の確認をした。
そして、紙袋に入れ、それをさらに手提げ袋に入れてから渡してもらった。

窓口の方も「これだけの現金は初めて見ました!」と楽しそうだった。
4000万円は、かなり重かった。
 

封入作業

金一封の支給は社員には秘密のプロジェクトとして行われたため、封入作業は恐ろしく孤独だった。
窓のない小さな会議室に、経理メンバー3人がこもり、ひたすらお札を数えた。
間違ってはいけないため、集中力が要求され、自然と無口になる。
黙々とお札を数え続けた。

まず、封筒に3万円ずつ入れた。
入れ終わった時に、残った現金を数え、想定枚数が残っていることを確認した。

次に、もう一度封筒の中身を確認して、どれかが2万円、どれかが4万円といったことがないかを確認した。

最後にもう一度確認をして、手紙を入れて、封を閉じた。

そして、各部署毎に封筒を分けた。
 

運び方

近隣の支社には手分けをして自分たちで運んだ。
遠方の支社は、郵便局の郵便書留は保証上限が50万円であるため、警備会社の現金輸送をお願いした。

秘密裏に進めていたプロジェクトであるが、このタイミングで各支社長に連絡をし、現金の受け渡し時間を調整した。
 

いざ配る時が来た

社員に渡す

配布日当日、最後に訪ねた支社で、「今から渡すから、一緒にいなよ」と声をかけてもらい、同席した。
経理の私が支社を訪ねることはめったにないので(あったときは税務調査など、望ましくない用事だ)、チラチラとこちらを気にしている人もいる。

支社長が一人一人社員の名前を呼び、封筒を渡す。
最初に呼ばれた社員は、突然、全メンバーの前に呼ばれたので、完全に怯えていた。
恐る恐る封筒を開けた社員は、「きゃーっ!」と突然歓声を上げた。
他の社員も「何?何?」と騒ぎ出す。
全メンバーの手に封筒が渡って、念のためといった様子で支社長は言った。「全員金額は同じだよ。」
でも皆、突然の現金に大騒ぎで、その声が届いたかは確かではない。
 

現金配布を終えて

渡す場に立ち会った支社では、多くのメンバーに「ありがとう」と声を掛けてもらった。
私は準備と運搬をしただけで、お金は出していないので、ありがとうと言われて少し戸惑いはあった。

でも、とても嬉しかった。
管理部門や事務職全般に言えることだが、普段の仕事はちゃんとやって当たり前、ミスしたら怒られるけれど、ありがとうと言われることはない。
私がやった仕事で、誰かが喜び盛り上がることもない。
あんなにたくさんの人にありがとうと言われたことも、皆んなが歓声を上げて喜ぶ場に立ち会うことも、経理の仕事についてから一度もなかった。
とても、嬉しかった。

喜びを噛み締めた私の手元には、自分の分の封筒が一つ残った。
中には、当たり前だが3万円が入っていた。
さっきまで目の前に4000万円あったのに、これだけになっちゃったな、と苦笑いをした。

でも、あれから10年近く経つのに、支社のメンバーの笑顔と感謝の言葉が忘れられない。
プライスレス、とはこういうことを言うのだろう。
 

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