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しずかみちこ
Gallup認定ストレングスコーチ
ストレングスファインダー(クリフトンストレングス)の専門家として、個人やチームが「強み」を活かして最大の成果を生み出すためのコーチングと研修をしています。

リクルートスタッフィングで経理したり、レアジョブの管理部門立ち上げたり、ブラック企業に入ったり、上司の横領見つけて辞めさせられたり、人の会社2つ作ったりと波乱万丈な職歴の後、独立して今に至ります。

投資と経理スキルでお金をデザインし、ストレングスファインダーで強みを活かしたら、人生が楽しくなりました。

趣味は野球観戦と美味しいものを食べること

収集心・最上志向・戦略性・未来志向・分析思考
ストレングスファインダーのnote
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緒方孝市が最後まで緒方孝市であり続けた引退試合。2009年10月10日

2009年10月

秋になりプロ野球シーズンも終盤になると、長い間我々を楽しませてくれた選手が引退を発表する。
2009年、この年もあちこちで引退試合が行われた。
ロッテ小宮山悟が一球セーブにて史上最年長セーブ記録を更新した。
中日立浪が二塁打を打ち、通算二塁打の日本記録を更新した。

一方で、中日の井上一樹は、ファーム日本選手権で野球人生最後の打席として代打で登場したのに、ランナーが牽制死になり、何もできないまま3アウトでチェンジになるという衝撃の展開をくらった。
しかし、もう一度登場した次の回で、仕切り直しのホームランを打つのだから、惚れ惚れする。

引退試合を見るのは切ないけれど、それぞれの個性に合ったいい終わり方を見るのは嬉しくもある。
 

2009年10月10日

そしてこの日の広島×巨人戦は、緒方孝市の引退試合。
30年程前は巨人の緒方耕一の方が有名で人気だったけれど、広島緒方も、息の長いいい選手になっていた。

8回の表に守備につく緒方。
かつてカープで緒方と一緒にプレーしていた、現巨人のキムタクこと木村拓也がバッターボックスに。
カープのピッチャーは大竹。
キムタクは大竹の玉を軽くすくい、打球は緒方の守るセンター方向へ飛んで行った。

あ、キムタク、笑ってる!

平凡なセンターフライで嬉しそうに笑うなんて、普通なら怒られる。
でも、この日は特別だ。

緒方はもちろんしっかりとキャッチして、笑顔を見せる。
アウトになったキムタクも一塁ベース上でもう一度にっこり笑う。

言葉を交わす代わりに、ボールを使って気持ちが通っているのだろう。
グラウンドに立つ人間だけが理解できるコンタクトを羨ましく思う。
 

8回の裏。巨人のピッチャーはゴンザレス。
一人目の打者、石井琢朗。
緒方孝市が、ネクストバッターズサークルにいる。
琢朗は、心なしか切ない表情をしているようにも見える。
ゴンザレスの2球目はバットを砕き、ファーストゴロに倒れた。

ウグイス嬢が、緒方の打席を告げる。
ゆっくりとバッターボックスに向かい、素振りを2回。
無心、といった表情で打席に入った緒方孝市は、いきなり初球を叩いた!

打球は、外野手の間を抜けた。
もつれそうになる脚を必死に前に出す。倒れこむようなヘッドスライディング。
結果は三塁打!
 

ファンとしては、最後に応援歌をゆっくり歌いたかったかもしれない。
緒方だって、ゆっくりと最終打席を味わいたかったかもしれない。

しかし、初球から狙っていくとは、最後まで緒方は緒方だった。
代打のセオリーである初球打ち。
ここ数年は、スターティングメンバーとして試合に出られず、代打での出場が多かった。
それでも常にチームに貢献できるように考えていた緒方の姿勢は、最後の打席まで貫かれた。
 

ゆっくりと身体を起こした緒方は笑顔だった。
三塁コーチの高信二とハイタッチをし、汗を拭う。
ふと、緒方の顔から表情が消えた。
みるみる鼻が赤くなっていく。

しかし、泣くのはまだ早いのだ。試合は終わっていない。
緒方は真顔に戻った。
次のバッターはピッチャー大竹。
ピッチャーながらに、必死にバットを振り、緒方を本塁に帰そうとしている。

そのとき、ゴンザレスの投球がワンバウンドとなり、後ろに逸れた。
ホームに向かって走り出し、もう一度ヘッドスライディングをする緒方。
でも、塁に、届いていない…。
はいつくばるようにホームを目指すが、あと一歩、手が、届かなかった…。

脚力で魅せてきた緒方だが、これが「引退」ということだ。
二度のヘッドスライディングで汚れきったユニフォームは緒方孝市の野球人生の象徴だ。
セレモニーでの最後の挨拶のあと、泥で汚れたユニフォームが9回宙に舞った。

目次

2017年10月

あの引退試合から8年が経過した。

この日、先発だった大竹寛は、今では巨人軍の選手だ。
緒方に向かって打球を放った木村拓也は、もうこの世にいない。

緒方孝市は、背番号を9から79に変え、広島カープの監督である。
緒方の前に打席に入った石井琢朗と、大竹の次にバッターボックスに入るはずだった東出輝裕は、共に打撃コーチとなって緒方を支えている。
 

2017年のシーズン。
広島カープは、リーグ優勝を果たしたが、クライマックスシリーズで悔しい敗退をした。

緒方孝市は、グラウンドで喜ぶDeNAベイスターズの選手たちを、無表情に見つめていた。
微動だにせず佇むその心の奥で、どのような感情が渦巻いていたのだろうか。

最後の最後、あと一歩で手が届かない。
この状況に、誰よりも歯がゆい思いをしているのは、緒方自身だろう。

泣くのは、まだ早いのだ。野球人としての務めは終わっていない。
次のシーズンこそ、欲しいものをその手につかめ。

その日まで、ファンは歌う。
この一打に闘志燃やして、勝利の地へ駆け抜けろ!
 

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