人生の豊かさとは心の豊かさだった。エルメス「彼女と。」による発見
人生を豊かにしたいと考えている。
どうすれば人生は豊かになるのかと、試行錯誤している。
お金や時間がたっぷりあれば豊かになれるかな。
やっぱり健康が一番かな。
友達がたくさんいることも豊かさなのかな。
仕事でも何でも自分が好きなことをするのが豊かさなのかな。
よく分からないままあれこれ手を出しては、何か違う、何か足りないと焦る日々だった。
そのとき、なんとなく訪れた展覧会が、人生の豊かさを教えてくれた。
エルメス「彼女と。」
それは、国立新美術館でエルメスが行なった「彼女と。」という展覧会だった。
エルメスは銀座のエルメスビルの中に自前の展覧会場を持っているのに、あえて国立新美術館で行うのは何故だろうと興味を持ち、訪れることにした。
ただ陳列されているものを眺める展覧会ではないという以外ほとんど事前情報のないまま訪れたこの展覧会で、私は「人生の豊かさとは何か」を感じたのだった。
「彼女と。」
この展覧会は、映画の撮影現場を観客が見て回るような設定になっている。
一人の魅力的な女性を追って映画の撮影現場を回るうちに、観客自らも映画の中に入り込み、現実と虚構の境目が曖昧になっていく。
こういった観客参加型の展覧会は初めてで、次は何が起きるのか、楽しみながら進んだ。
セットの美しさにうっとりし、エルメスの製品がふんだんに使われたセットの備品の美しさにもうっとりした。
主人公の女性は、大人の嗜みと自由奔放さを併せ持った自然体の女性だ。
心が解放されている自由さが伝わってくる。
エルメスのミューズはこういう女性なのかと意外な気持ちで見ていた。
そして、私が憧れている人物像もこういった人間だったと、その人をとことん味わえるようにじっくりと感じていた。
鑑賞後
展覧会は40分程度で終了し、会場を後にした。
会場を出た後も、刺激を受けた心は弾み続けていた。
デザイン関係の仕事をしているわけでも、アパレルでもインテリアの仕事でもないので、ここで受けた刺激を仕事等でそのまま活かすことはないだろう。
しかし、確実に、私の中に何かが刻まれ、それはいつしか形を変えて出てくると感じた。
すぐに帰るのは何か惜しくて、一緒に行った友人とカフェに入って語らった。
お互い普段とは違う刺激を受けた後だったからか、普段は話さないような話をした。
とても豊かな時間だったと、帰りの地下鉄の中で1日を思い返した。
人生の豊かさとは
この日、この展覧会で、とても豊かな時間を過ごした。
そして、豊かな人生とは、豊かな時間の積み重ねだと気が付いた。
この日、豊かな時間は、心が素敵な刺激を受け、満たされた時に生まれた。
これまでを思い返しても、豊かな時を過ごしたことは何度もある。
ゆったりと自然を満喫している時だったり、美味しいものを食べている時だったり、いずれも心が豊かさを感じている時だった。
心が豊かな時に豊かな時間が生まれ、豊かな時間の積み重ねが豊かな人生となる。
人生の豊かさとは、心の豊かさのことだったのだ。
お金も健康も人間関係も仕事も、心の豊かさを得るための一つの要素に過ぎない。
逆を言うと、お金も健康も人間関係も仕事も、心が豊かになるような扱いをしないのならば持っている意味はない。
何によって心の豊かさを感じるかは人それぞれだ。
他の人がいいというものを何も考えずに真似しているだけでは、自分の人生を豊かにすることはできない。
自分の心がどうすれば豊かに満たされるか、それを考え、求めることが、人生を豊かにするということだったのだ。