天職が見つからないのは「Will Can Must」を間違えてたからのようだ
天職とは何だろうか。
やりたい仕事とできる仕事と求められている仕事が重なる仕事だ、と言われたりする。
私がかつていた会社では、「Will Can Must(やりたいこと、できること、やるべきこと=求められていること)」などと表現されていた。
私にとっての「Will Can Must」は何だろうかと考えてきたが、なかなか見つからなかった。
見つかったと思っても、少し経つとどこか違和感が出てきてしまう。
それは、「Will(やりたいこと)」に思い違いがあるのが原因だった。
Will Can Mustの重なるところ?
「Will Can Must」のフレームワークを語るときに、下記のような図が同時に使われる。
この中心の重なっているところが、自分にとっての天職という訳だ。
私もこの図に納得して、自分の中の「Will Can Must」を探し始めたのだが、まずここに大きな見落としがあった。
それは、私の「Will Can Must」はこんなに美しい形をしていない、ということである。
私の場合の「Will Can Must」図
自分の「Will Can Must」を知るために、まずは過去を振り返る。
私が就職したのは、1997年。
バブル崩壊後数年経ち、新卒採用は氷河期を迎えていた。
就職活動の最初は、「やりたい仕事」を考えるところから始めた。
鉄道が好きなので、あちこちの鉄道会社に履歴書を送ったが、返信はなかった。
OB訪問もしてみた。「女性は深夜労働ができないから採用していない」と言われた。
(女性の23時以降の労働が禁じられていた時代である)
好きな業種には行けそうにないので、他のやりたい仕事を考えてみた。
ずっと建物の中にいるのは飽きそうなので、外出できそうという理由で営業職を志望しようかとも思った。
だがしかし。
氷河期真っ只中にそんな贅沢を言っている余裕はなかった。
結局のところ、片っ端からハガキを送り(インターネットが普及していない時代だ)、合同説明会に顔を出し、ようやく手にしたたった1つの内定を握りしめ、迷うことなくそこに入社した。
なんとか引っかかって入社できた会社だ、やりたい仕事とは違う。
「Will(やりたいこと)」を考えることはとうの昔に諦めていた。
そして社会心理学専攻の学生が、プラスチックの加工メーカーに入社してすぐにできることなんてトイレ掃除くらいだ。
私が入社した直後は、「Will(やりたいこと)」は全く無く、膨大な「Must(求められること)」と、ほんの僅かな「Can(できること)」だけが存在した。
そこから、時が経ち、仕事を覚え、「Can(できること)」が増えてくる。
仕事ができるようになると楽しさも生まれ、「Will(やりたいこと)」もできてくる。
そうすると、下記の図3になるのだが、これは王道の図1とは似ても似つかないものである。
図1とは違って、「Will(やりたいこと)」が全て「Can(できること)」に含まれ、更に「Must(求められること)」にも含まれている。
だからといって、やりたい仕事がそのまま天職なのかというと、そんなことはない。
偽りの「Will Can Must」の成り立ち
あらためて、この場合の「Will(やりたいこと)」の発生の様子を見てみる。
まず最初に、「Must(求められること)」があった。
求められる仕事を必死で頑張った結果、できるようになった仕事と、それでも上手にできない仕事があった。
頑張ってもできない仕事はやりたくないので、やりたい仕事の候補から外れる。
できるようになった仕事の中にも、好きではない仕事があり、そんな仕事はやりたくないので、やりたい仕事の候補から外れる。
そうして残ったものを、「Will(やりたいこと)」と思っていた。
そして、この「Will(やりたいこと)」ができる他の仕事に転職した。
新しい「Must(求められること)」が加わり、またそれを必死で頑張った。
その結果、「Can(できること)」が増え、更に「Will(やりたいこと)」が増えていく。
でも、いくらできる仕事が増えてきて、楽しくできる仕事が増えてきても、心の片隅にある「何かが違う」という気持ちが消えることはなかった。
それも当然である。
この成り立ちから見てわかる通り、私が思っていた「Will(やりたいこと)」とは、与えられた仕事の中から消去法で導き出されたもの。
やりたいことではなく、やってもいいかなと思える仕事だったのだ。
本当の「Will」はどこにある?
世の中には、与えられた仕事の中に、自分の「Will(やりたいこと)」が見つかる人がいる。
もっと昔、幼少期に親から勧められた習い事が「Will(やりたいこと)」だった人もいる。
でも、私の場合は、自分で「Will(やりたいこと)」を探しにいかなければいけなかったようだ。
それなのに、ただ与えられるのを待っていたから、いつまで経っても「何か違う」と思い続けていたのだ。
世の中にはいろいろなものがあるが、存在を知らなければ、好きになることも嫌いになることもできない。
アイスクリームがこの世にあることを知らなければ、アイスクリームを食べたいと思うことはないのと同じことだ。
その仕事がこの世にあることを知らなければ、その仕事をやりたいとは思わないのだ。
与えられた仕事の中から自分がやりたい仕事を探すのではなく、自分がやりたい仕事は自分で探しにいかなければいけない。
ようやく気がついた。
「Will(やりたいこと)」を探すために必要なこと
私はストレングスファインダーでは「収集心」が強い。
これまでも自分の世界を広げてくれる出会いは、自ら情報を集めている中で見つけてきた。
(私の場合は「収集心」だが、偶然の出会いが世界を広げてくれる「適応性」や、人との縁が世界を広げてくれる「運命思考」、好奇心に導かれて出会いがある「学習欲」など、自分の世界を広げてくれる資質は人によって様々だ)
仕事についても、どのような仕事とどのような働き方があるかを、自らの枠の外に出て情報を取りにいかないといけなかったのだ。
実際、2021年の下半期は、いろいろな仕事をしている人に出会ってみた。
そう言っても、どうも人見知りな私は、他の人たちの動きをこっそり見ているだけだったけれど、それでも「ああいう働き方でいいんだ」「こういうことをやってもいいんだ」と気づきがあった。
これ以上の自分語りは、いったんここではしないでおく。
ただ、確かに言えることは、もし今、自分のやりたいことが見つからず、「何か違う」と感じているならば、自分が今いる世界を広げた方がいいということだ。
世界が広がると、自分が今いる世界を角度を変えて見ることができるようになる。
そうすると、これまで見えなかったものが、見えてくるのだ。
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