「好きを仕事にする」の落とし穴と回避法〜初心者のためのマーケティング教室・2
前回の記事で、跳び箱教室を開催したい跳び箱大好きAさんに登場してもらった。
Aさんの跳び箱教室はどう考えても人が集まらないように見えるが、それはAさんが「自分の好き」しか見ていないからだった。
[box class=”box31″ title=”Aさんの跳び箱教室”]跳び箱歴30年のAが教える、初心者でも安心な誰でも跳べる跳び箱教室[/box]
「好きを仕事にしよう」とよく言われるが、この言葉を鵜呑みにすると「独りよがり」という落とし穴にはまる。
自分の好きと相手への価値を両立させることで、この落とし穴は回避できる。
ここでは、「自分の好き」と「相手への価値」を繋げる方法を見ていく。
「好き」と「相手への価値」
魅力は何ですか?
前回の記事で、「跳び箱の魅力を知っていたら、誰でも跳びたいって思うはず!」と力説していたAさんに聞いてみよう。
Aさん、跳び箱の魅力をもっと具体的に教えてください。
「跳び箱って、8段だと135cmあるんですよ。胸のところくらいまで高さあるんです。
こんなの飛び越えられるのかって不安になるんですけど、一歩踏み出すと頭の中が冴え渡って、タタタタッ、シュタッ、ターン!と飛び越えられるんです!
自分では無理だと思っていたものを乗り越えられる、この達成感は止められません!」
目をキラキラさせて語るAさん。
本当に跳び箱が好きなようだ。
では、この跳び箱の魅力を、もう少し一般受けするように置き換えてみよう。
魅力を置き換える
跳び箱の魅力が「頭の中が冴え渡ること」というAさん。
しかし、「タタタタッ、シュタッ、ターン!」だけでは、他の人には伝わらない。
どうすれば伝わるか、その方法を考えていく。
では、Aさん、その跳び箱の魅力で、誰かの悩みを解決することはできますか?
「え?え?意味がわかりません」
それではAさん、おみくじって引いたことがありますか?
「おみくじって、神社のあれですか?今年の初詣、大吉がでました!」
おみくじには何と書いてありましたか?
「めちゃくちゃ良かったですよ!
待ち人、来たる。失せ物、時間がかかっても出る。商売、よし。学問、努力が実る。
具体的なことは忘れちゃったけど、こんな感じでした。」
実はおみくじというのは、一般的な悩みリストである。
多くの日本人が抱える悩みについて書いてあるものなのだ。
恋愛、商売、学問、縁談、引越し、健康等々、おみくじの項目は誰かの悩みに通じている。
そこでAさん、「タタタタッ、シュタッ、ターン!」で解決できる悩みがないか、おみくじの項目を見ながら考えてください。
「恋愛はどうでしょうか。自分には無理目な高嶺の花の女性にも、跳び箱で度胸をつければアタックできます!」
なるほど、悪くないですね。
Aさんは実際、そうやって女性を口説いているのですか?
「いいえ。私は女性には奥手でして…」
うーん、却下!
頭の中で考えたことがいくら良さそうであっても、自分に経験がないことは力説しても説得力がない。
違うことを考えよう。
Aさん、跳び箱の魅力がご自身の経験に活きたことはありますか?
おみくじの項目に書いてあるような内容の経験が望ましいです。
「仕事にはとても活きています。
顧客相手にプレゼンするとき、とても緊張するんですけど、いざスタートすると頭の中がすっと冴え渡って集中力が増して、最後まで走りきれるんです。
そして、跳び箱って踏み切りの瞬間が大切なんですけど、プレゼンしてても、ここが踏み切りどころだって感じる瞬間があるんです。
そのタイミングを逃さず、顧客に訴えかけることで、契約に結びつけることができます。」
それは、いいですね。
ちゃんとAさんが自分の言葉で話していると感じます。
では、キャッチフレーズを変えましょう。
[box class=”box31″ title=”Aさんの跳び箱教室”]契約が取れる!プレゼンも怖くない!集中力を鍛える跳び箱教室[/box]
どうだろうか。
一番最初の「跳び箱歴30年のAが教える、初心者でも安心な誰でも跳べる跳び箱教室」よりは、どのような人がお客さんになるかイメージがつくようになってきた。
この章のまとめ
「好きを仕事にする」と「顧客が求めるもの」の融合
「好きを仕事にする」とはよく言われるが、自分がそれをどれだけ好きなのか、魅力だけを語っても伝わらない。
逆に「好きを仕事にするのは意味がない。顧客に求められたことをするべきだ」とも言われるが、いくら顧客に求められたことでも、自分が好きではないことをやるのは苦痛になる。
それに、もし同じことをする人が他にいて、その人はそのことが好きで24時間そのことを考えているとしたら、熱意も知識量も情熱もその人には敵わない。
なので、自分の好きなことを、顧客が求めるものと融合することが大切だ。
自分が好きなものを、相手が興味を持ってもらえるような形に変換するのだ。
そのためのステップはこうだ。
1.自分がどうして魅力を感じているかを言語化する
自分自身が仕事にしたいほど好きならば、そこに理由があるはずだ。
その理由はなんだろう。
理由を考えるときのポイントは、「〇〇だから、私はこうなる」と、自分への影響も合わせて言語化すること。
Aさんの場合は、「一歩踏み出すと集中するので、私の頭が冴え渡る」だった。
他にも、花が好きな人なら「きれいな花を見ることで美がもたらすパワーを感じるから、私の背筋が伸びる」かもしれない。
英語が好きな人なら「英語を話すことで海外の友人が増えたから、私の世界が広がる」かもしれない。
このように自分が好きなものの魅力と自分への影響を考える。
Aさんは文字数の関係で1つしか挙げていないが、複数あれば複数考える。
2.その魅力が他に活きていないかを考える
自分が好きなことの理由が見つかったら、それが他のことに活きた事例がないかを考える。
Aさんの場合は跳び箱で培った集中力が、顧客へのプレゼンの際に活きているようだ。
前述の花が好きな人は、美のパワーで背筋が伸びることで、自分自身のことも美しく保つことができ、それが集客に繋がっているかもしれない。
前述の英語が好きな人は、自分の世界が広がったことで、新たなビジネスチャンスを得ることができたかもしれない。
3.他の人にも応用できないかを考える
2で見た好きなものの魅力が他のことに活きた例は、他の人の悩み解決に繋がらないだろうか。
ここをじっくり考えることが重要である。
Aさんのように集中力が上がることで、プレゼンの際に緊張しすぎて悩んでいる人を救えないだろうか。
花を見て背筋が伸びることで、怠惰な自分に悩んでいる人に力を与えられないだろうか。
英語で世界が広がることは、新しいことに挑戦したいけれどどうすればいいか分からず悩んでいる人がチャンスを掴む機会にならないだろうか。
なお、悩みはおみくじに書いてあるような一般的な悩みであると、届く人が増える。
もし、自分の好きなことの魅力が他の人の悩みを解決できる場合、それがビジネスの種だ。
次はこの種を育てる方法を考えるといい。
前述のAさんの跳び箱教室も、まだまだ人が集まる気がしない。
この次の記事では、Aさんのこの先のステップを考える。
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