自分の人生とは? 「皆と一緒」が息苦しい羊の話

そのビジネスはうまくいく?ライフサイクルと行動について〜初心者のためのマーケティング教室・3


コンセプトがはっきりとしたAさんの跳び箱教室だが、どうも人が集まる気がしない。

Aさんの跳び箱教室
契約が取れる!プレゼンも怖くない!集中力を鍛える跳び箱教室

Aさんが参入しようとしている業界の将来性について考えてみよう。

※このシリーズの他の記事 第1回 第2回

Aさんの認識

Aさん、跳び箱って、今は特に流行ってない、という認識で合ってますか?
そして、この先ブームが来ますかね?

「今は全然ですけど、いつかは来ると思うんですよねー。一度跳べるようになったら、やみつきになりますもん!」

一度跳べるようになるためには、跳び箱の練習をする必要がありますよね。
跳び箱の練習ができるところは、どこにありますか?

「実は少ないのです。僕は近所のスポーツセンターを使っていますが、跳び箱を置いていない施設も多いんですよね」

Aさん…。
ほんとに跳び箱はこの先流行ると思いますか…?
  

「好きを仕事にする」の最大の落とし穴は、将来性の見極めにある。
自分が好きなものに対しては将来性を甘く見積もりがちなのだ。

勝てるマーケットの選定

新しい事業を行うとき、それが勝てるマーケットかどうかの見極めが重要になってくる。

マーケットという大きい括りでも、製品やサービスといったものにも、「導入期―成長期-成熟期-衰退期」というライフサイクルが存在する。

導入期

まだ認知度が低い状態。
イノベーター(全体の2.5%と言われている)と呼ばれている新しもの好きの人が体験し、アーリーアダプター(同13.5%)と呼ばれる情報感度が高い人に認知が広がり始める段階だ。

ここに参入するなら、自分自身が認知度を広める活動をする必要がある。
そして、認知されるまで待ち続ける体力も必要となる。

成長期

アーリーアダプターに浸透し、アーリーマジョリティ(同34%)という流行に敏感な人に広がる段階を指す。

新規参入がいちばんしやすいのはここだ。
市場が急速に伸びるので、その波に乗るだけでも成長が見込める。

その成長にあぐらをかかずに他者との差別化をできるかどうかが、そこから一歩突き抜けられるかどうかの鍵になる。

成熟期

認知がある程度行き渡った状態。
レイトマジョリティー(同34%)という慎重な人にも広がる。
成長のスピードがゆっくりとなり、下降に向かう。
商品の場合、値崩れを起こし始める。

この段階は多くの競合が存在するので、新規参入は難しい。
それでも新規参入するなら、はっきりと他者との差別化ができていないと、誰にも見向きもされずに終わる可能性が高い。

衰退期

競合が撤退に入りはじめる。
撤退した競合から保守と管理を巻き取ることで延命をかけるケースもある。

自分が再度盛り上げる確信がある場合以外は、新規参入するのは避けたほうがいい。

Aさんの跳び箱教室は

現状分析

Aさんの跳び箱教室に戻る。
跳び箱は、上記のライフサイクルのどれに位置するだろうか?

「まだこれからだから、導入期ですね」

うーん、Aさん。
残念ながら、跳び箱の認知度は高いんですよ。
跳び箱を知らない日本人の大人はほとんどいないと思います。

「では、衰退期?」

うーん。私の知る限り、跳び箱が世の中でブームになった記憶はないんですよね。。
跳び箱は見向きもされていない、が正しい認識かと思います。

「そ、そんな。。。」

ブームの種・1:試しやすさ

さて、これまで見向きもされていないものを、盛り上げることはできるのだろうか。
そういう例は、案外ある。

例えば、今や欧米にまで広まった、こんまりさんの「片付け」。
「片付け」は既に誰もが知っている言葉だったが、そこに「ときめき」という概念を持ち込み、「人生を変える」と言うことで大ブームになった。

 
「では、僕も!」

Aさんには申し訳ないが、「片付け」と「跳び箱」の間には大きな違いがある。
「試しやすさ」だ。

片付けは、思い立ったらすぐできる。
どこかに出掛ける必要もなく、部屋着から着替える必要もない。

跳び箱は、家ではできない。
どこでできるかも分かりにくい。
できるところがあったとしても、利用料が掛かる。
場所によっては会員になる必要もあるかもしれない。
運動着を用意する必要もある。
始めるまでにやることが多く、金銭的にも時間的にも精神的にも負担が掛かるのだ。

誰もが簡単に試せることなら、多くの人が試して、もし良かったら口コミで広まる。
簡単に試せないことは、試す人も少ないし、もし良かったとしても人に勧めにくい。

跳び箱は、片付けとは違ってブームになりにくいのだ。

ブームの種・2:結果

試しにくいものであっても、乗り越えたあとの結果によっては、試してもらえる場合がある。
例えば、跳び箱を飛べるようになると不死身の体になれるのであれば、挑戦する人が増えるだろう。
不死身の体になれる方法が他にはないからだ。

しかし、「プレゼンの度胸がつく」だけであれば、もっと楽に身につく方法を探したくなるのが人間というものだ。

残念ながら、Aさんの跳び箱教室は、Aさんがいくら頑張っても一般に広まる可能性は限りなく低いと思われる。

Aさんは趣味から始めよう

「それでは、跳び箱から撤退した方がいいでしょうか…。僕、本当に跳び箱が好きなんです…。」

Aさんの場合、Aさん自身が跳び箱の流行を仕掛けられない限り、収益を上げることは難しいだろう。
それで諦めるのも一つの賢明な判断だ。

しかし、Aさんは会社員でありつつ、今でも趣味で跳び箱を飛び続けている。
その趣味の仲間を募集するというレベルでスタートするのもありだ。

もし趣味の仲間ができたら、他の人が跳び箱に何を感じるかを知ることができる。
それが、跳び箱とは別の、新しい商売の種になるかもしれない。

趣味として細々と続けているうちに、跳び箱の流行が起きるかもしれない。
その場合、跳び箱教室の看板を掲げていたことが有利に働く。

Aさんがどうしても跳び箱をやりたいなら、会社員の趣味の範囲で続けることだ。
先走って、いきなり会社を辞めないこと。
借りて使える跳び箱があるなら、先行投資として跳び箱を買うことはしないこと。
会社を辞めることも、跳び箱を買うことも、事業としてうまくいく目途が立ってから決断すればいいのだ。

今回のまとめ

好きなことを仕事にしたい場合、それがライフサイクルのどこに位置するかを冷静に見極めることが大切だ。

もし導入期であるのなら、成長期への移行を待てる体力と、自分がブームを起こすための行動量が必要だ。
もし成長期であるのなら、波に乗りつつ、それに浮かれずに他者との差別化をつける冷静さが必要だ。
もし成熟期であるのなら、先行者と圧倒的な差別化をはかる強い個性が必要だ。
もし衰退期であるのなら、そこから全く新しい価値観を生み出す自信がなければ参入は避けた方がいいかもしれない。

もし今が会社員だったり安定した事業を持っていたりして今すぐに収益を上げなくてもいい状況であれば、ライフサイクルを無視して好きなことを趣味の副業で行うのも一つの方法だ。
しかし、もし今すぐ収益を上げたいのであれば、ライフサイクルとそれに対して自分が何ができるかをしっかりと見極める必要がある。

ビジネスがうまくいくかどうかは、ライフサイクルを見極める目と、自分がどういうポジションで参入するかの2点でほぼ決まるのだ。

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