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夫婦の絆を取り戻すきっかけは、ホテルのスタッフの温かさだった

2017/02/08

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あれは7年前のことだ。
私の友人が開いたクリスマスパーティー。
とある外資系高級ホテルの一室で、シャンパンを飲みながらSATCでも見ようという、今でいう女子会的な催しに招かれた。
初めて足を踏み入れた高級ホテルに大興奮で帰ってきた私を見て、夫も興味を持ったらしい。
自分も行きたいと言い出した。

いったいいくらくらいするんだろうね、と開いた宿泊サイトは、タイムセールの真っ最中だった。
ホテル側に決められた日付限定だが、その日は半額で泊まれるらしい。
ちょうどひと月後に指定されていたその日は、偶然にも夫の誕生日だった。

 

今まで高級ホテルに宿泊したことがなかったので、とても楽しみにしていた。
しかし、夫が体調を崩し始めた。
最初は、疲れが出たのかな、と言っていたのだが、休んでも休んでも回復しなかった。
会社に行くとすぐに疲れてしまい、帰ってからはずっと横になっていた。
ほとんど動かないのに、食欲はあってたくさん食べる。
それなのに、体重がどんどん落ちていった。
もともとふっくらした体型だったが、急に痩せたので皮膚は垂れ落ち、その上、生気を失った肌は随分とかさついていたので、道ですれ違う人はギョッとした顔で夫を見る(と夫は思っていた)。
そして会社も休みがちになり、家にいるようになった。

 

夫が家ではずっと横になっているので、それまで分担していた家事が、丸ごと私に伸し掛かってきた。
それどころか、夫の昼御飯も出社前に用意しなくてはいけなくなった。
通勤に往復3時間以上かかっていた私には、相当な負担だった。

私は疲れて、夫に対してイライラしていた。
夫も自由に動けない自分と、それを理解しない私にイライラしていた。
家の空気は最悪だった。

 

そんな状態でも、誕生日は容赦なくやってくる。
楽しみにしていた宿泊の日だが、夫は外出するのを嫌がった。
しかし、そのタイムセールは、予約の時点でキャンセル料が宿泊料金の100%かかるという条件だった。
同じ金額を払うなら、泊まりに行きたい。
一人でも行く!と言い張る私と、私がいないとご飯の用意ができない夫。
夫は重い身体を引きずって、しぶしぶ付いてきた。

 

ホテルに到着した。
鍛えられているのであろう。ホテルの人は疲れた顔の夫を見てもぎょっとしなかった。
誕生日おめでとうございます、と、部屋を眺めのいい方角にアップグレードしてくれた。
それどころか、ワンランク上の広い部屋にしてくれた。
そして、夫と私の荷物を持ってくれ、部屋まで案内してくれた。

夫は驚いた顔をしていた。
荷物を持って部屋まで案内してくれることは、高級ホテルでは当然のサービスかもしれないが、体調を崩し、自信を失っていた夫にとっては、親切にされることが驚きだったらしい。
ホテルスタッフの親しみのこもったさりげない優しさが、とても有難かった。

 

部屋に着き、スタッフが退出し、2人だけになった。
アップグレードされた部屋は、リビングと寝室が分かれた広い部屋だった。
久々の外出に疲れた夫は、リビングにあるソファーにゴロンと寝そべり、大相撲中継を見始めた。

ソファーを一人で占有されて居場所のない私は寝室に向かった。
身も心も不安定な夫と一緒にいるのに疲れていた私は、寝室の大きなテレビで歌番組を見ていた。

会話もせず、顔も合わせず、別々にテレビを見ていた。

 

どれだけの時間が経過しただろう。
親密な空気が漂うホテルの、空調が程よく効いた、清潔で心地よい空間に身を置くことが、 夫と私の疲れを癒し始めていた。
何をしたわけでもないのに、肩の力が自然に抜け、こわばった心が柔らかくなっていったのを感じた。

リビングをそっと覗いてみた。
夫からも刺々しさが消えていた。
起き上がり、ソファーの隣をあけてくれた。
2人で並んで横綱の戦いを見た。

過去を思うと、どうしてこんな風になっちゃったのだろうという後悔があり、先を考えると、体調の悪化しか考えられない。
そんな2人に相変わらず会話はなかったが、一緒にいることを心地よく感じることができた。
ホテルのスタッフがくれた親密さが部屋中に拡がり、疲れた夫婦の間にも漂っていた。
そんな感覚は久しぶりだった。

 

夕食は、ホテル内のレストランを予約していた。
こういうレストランでは、女性の肌を美しく見せるために照明が工夫されているところが多い。
そのおかげで、夫の疲れた肌も人並みに見えた。
人目を気にせず食事ができることが、とてもとても嬉しそうだった。
そして、誕生日用に特別に飾りつけされたデザートを見て、夫ははしゃいだ。
心から笑う夫を見たのは久しぶりだった。

 

たった一泊のホテルステイだったけれど、疲れ果てていた、しかも疲れていることに気づかないほど必死になっていた夫婦の心をほぐすには十分な時間だった。

 

 

この後、夫の体調は更に悪化し、入退院を繰り返すハードでタフな日々に突入するのだが、この一泊の思い出が私たち夫婦を支えてくれた。
くじけそうになるたびに、ホテルからもらったクマとアヒルを見て、二人があの日取り戻した親密さを思い出した。
またダメになりそうときは、あの場所に帰れば、やり直せる。
あの場所があるならもっと頑張れる。その思いが希望につながった。

 

たかがホテル。されどホテル。
特別な空間に身を置くことの素晴らしさを、全身で感じたあの一夜。

 

あの日々が嘘のように、今は夫は元気であるが、それでも折に触れ、特別な空間に身を置きに行く。
2人とも温泉が好きなので、行き先は高級ホテルから温泉旅館に変わったが、目的は変わらない。
スタッフとの親しみのこもった会話で心を温め、美味しい料理を笑顔で食べ、空調が程よく効いた心地よい空間で疲れを癒す。
ホテルの方へ、そしてお互いへ、感謝の気持ちが沸き上がる。

 

元気で、また来れたね、一年無事に過ごせたね。
この一言を言いたくて、今年もまた旅に出る。

 

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