直葬は自分でできるのか?自力でするために必要なものと、私が諦めた理由
葬儀を一切行わない直葬ならば、葬儀社に頼まずに自分でできるかもしれないと考えると思う。
私も最初は検討したが、調べた結果、葬儀社にお願いした。
手間を掛ければ自分でもできることは分かったが、その手間がとても大きいと感じたからだ。
直葬を自分でする場合、事前に準備するもの
直葬を自分でする場合、亡くなってから準備するのでは遅い。
事前に必要なものの用意をしておく必要がある。
直葬を自分で行うために、必要なものは下記である。
1.棺
火葬の際は、遺体を棺に収める必要がある。
棺はAmazon等で扱っているこちらで充分なようだ。
2.ドライアイス
遺体は、そのまま置いておくと傷むため、冷やして保管する必要がある。
冷蔵庫レベルに冷やしておくのだが、氷で冷やすと水が出るため、ドライアイスが最適解だ。
もし火葬までに日数が必要になるなら、ドライアイスも多く必要となる。
目安としては、1日10kg。
ドライアイスも通販で売っているが、購入後、到着まで数日掛かる店も多い。
3.遺体を運ぶ手段
遺体はタクシーでは運べない。
人間の身体は、生きているうちは人間だが、死ぬと貨物扱いになる。
貨物は認可された事業者でなければ事業として運ぶことができないという法律がある。
なので、バスやタクシーといった旅客を運ぶ事業者ではなく、貨物事業者にお願いする必要がある。
ただし、貨物事業者であっても、遺体を扱うとは限らない。
例えば赤帽でも、遺体の運搬を取り扱っているところと扱っていないところがある。
遺体を扱ってもらえるかは、近所の赤帽に自分で確認する必要がある。
事業として扱うのでなければ遺体を運ぶことは可能なので、自分で運ぶことには問題がない。
棺が収まる大きな車を持っていれば、自分で運べる。
レンタカーの場合、遺体を運ぶ目的でのレンタルは断わられる可能性もあるため、事前に確認が必要だ。
そして、遺体は数十キロの重さがあり、一人で運べるものではない。
遺体を運ぶためのストレッチャーなどがないなら、人手も必要となる。
4.遺体の安置場所
火葬までに遺体を安置する場所を確保する必要がある。
遺体は死亡後24時間は火葬できないと法律で決められている。
そして、火葬場にも営業時間がある。
午前中に亡くなれば、翌日の午後に火葬はできる。
しかし、例えば夜7時に亡くなれば、火葬可能時刻は翌日の夜7時以降となるが、その時間に火葬場がやっていなければ、翌日の火葬となる。
そして、火葬場が混雑している場合や、遠方に住む家族の都合などで、死亡から数日しないと火葬ができない場合もある。
その間、ずっと遺体を保管しておく必要がある。
室温が高いとドライアイスを入れていても傷みやすくなるため、室温を低く保てる場所を確保する必要がある。
5.骨壷
火葬後、骨を拾うときに入れる壺だ。
骨を拾う量によって、必要な大きさが変わる。
東日本であれば全骨拾いが基本、西日本だと一部の骨を拾うのが基本である。
焼きたての熱い骨を入れるので、燃えやすい素材は避けたほうがいいと思う。
6.事務手続きをする人手と気力
死亡したら、死亡届を役所に提出する必要がある。
死亡届を提出しないと火葬許可証がもらえないため、速やかに提出した方がいい。
火葬許可証を貰ったら、火葬場を手配する必要がある。
故人の住民票がある自治体の公営の火葬場であれば、安く火葬できることが多い。
火葬場の空き日程と、自分たちの都合のいい日程ですり合わせる。
人を亡くした直後にこういった手続きをする気力があるかどうかは人によるだろうが、自分が思っているよりガクッと来る可能性も頭に入れておいたほうが良い。
直接は関係ないけれど、考慮するといいこと
直葬をするにあたっての必須事項ではないが、事前に考慮しておく方がいいと感じたものが2つあった。
エンゼルケア
エンゼルケアについては全く頭になかったが、母の死亡後、病院の方でやってくれた。
あらかじめ病院に渡していたお気に入りだった服に着替えた母は、目を伏せた状態で穏やかに微笑んでいた。
幸せそうとすらいえる顔で、思わず「わあ!」と喜びの声を上げてしまったほどだ。
最後、口がきけなくなっていた母が何を思って逝ったのかは、私には分からない。
いくら死に顔が穏やかだからといって、穏やかな気持だったのかは分からない。
それでも穏やかな死に顔を見て、私の心にあった不安や戸惑いが消えて、心を安らかにもって見送ることができたのだった。
不勉強のため、エンゼルケアとはただ死に化粧を施すだけかと思っていて、顔の表情まで整えてくれるとは予想外だった。
でも、穏やかな表情になった母を見て、気持ちが救われた。
エンゼルケアの重要性について、こうなるまでは全くピンと来ていなかったが、やってもらえて本当に良かった。
今回はたまたま病院でやってくれたが、全ての病院でやってくれるのかは分からないし、自宅で看取る場合も想定しているのであれば、お願いできる専門の方がいるかどうかを確認しておくのをおすすめする。
全骨拾いが必須かどうか
我が家の場合、お墓には入らずに散骨のみのため、骨をたくさん拾うことは避けたかった。
風習的に、東日本は全骨拾いで、西日本は一部のみを拾うのが基本らしい。
母は福岡県で亡くなり、そのまま福岡県で火葬したため、骨の一部のみを拾って、残りは火葬場の方に託すことが問題なくできたが、東日本では骨を残さずに全部持ち帰ることを求める火葬場もあるようだ。
骨をどれくらい拾うかによって、必要な骨壷の大きさが違ってくる。
骨を少ししか拾わないつもりで小さな骨壷しか用意していないのに、その場で全骨拾いを求められたら、入り切らずに困った事態になる可能性もある。
もし一部の骨を拾うことを希望していて、火葬場が東日本なら、可能かどうかをあらかじめ確認しておいたほうがいいだろう。
自力での直葬を諦めた理由
上記のものを用意できるのであれば、自力での直葬もできることはわかったが、私は自分でやることは諦めた。
なぜなら、いつ亡くなるかがわからないのに、事前に用意するのが難しいと感じたからだ。
棺や骨壷のように保管できるものは問題ないが、ドライアイスは保管が難しいため、亡くなった直後に用意する必要がある。
遺体の安置場所も、母が住む自治体は火葬場で安置ができたが、月に一度の定休日は安置が不可能で、そこと重なった場合にどうするかも不安だった。
また、病院で最後を迎える予定だったため、速やかに遺体を運びだす必要があった。
家族の車は軽自動車で、大きさ的に遺体を乗せるのは不可能だった。
レンタカー屋は近くになく、いつ使うかわからないため、予約もできない。
遺体の運搬だけやってくれる葬儀社もあるようだが、一軒一軒葬儀社に電話をして確認する時間の余裕は無かった。
つまり、ドライアイスと遺体を運ぶ手段を用意することが難しかったため、自力での直葬を断念した。
そして、断念して正解だった。
母が亡くなった直後は精神的に集中が難しく、病院から家までを車で運転することさえ怖かった。
役所に手続きに行かなければいけないとしたら、運転がきつかっただろう。
また、自分で遺体を載せた大きな車を運転しなければいけないとしたら、もっと怖かっただろう。
死亡直後に必要な役所の手続きをお願いできたことも、葬儀社にお願いして良かった理由の一つだ。
頭がぼんやりしている中で手続きや日程調整をしたら、抜け漏れが発生しただろうと思う。
直葬を選ぶ理由が「一円でも安く済ませたい」であれば、手間を掛けても自分でやる意味があるかもしれないが、私はお金を払って専門の方にお願いして良かったと思っている。