私が先輩たちに注意されていた理由
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自分の内側の変化
前回の記事で自分の改善すべき点に気づいたことを書いたが、もちろん気づいただけですぐに改善される訳ではない。
今だって全てが改善されているかと言われると、そうではないと思う。
当時も、頭では理解していても、心が追いついていない状態だった。
特に「自分の価値観と違う人を馬鹿にする」などは、「自分と価値観が違う人を馬鹿にすることはおかしい」と頭では理解しているが、「でも、自分の好きなものがマスコミによって左右されるのはつまらないんじゃない?」と心では疑問に思っている状態だった。
当時はまだ「人というものは、経験してきたことも感じ方も一人一人が違うものである」「何が好きで、何を幸せと感じるかも人それぞれである」ということを理解しきれてなかったのだ。
ただ、一つ確実に変化したことがある。
心の奥底では自分に自信がないくせに、それを払拭するために頭で「私は何も間違っていない。私が一番正しい」とガチガチに固めていた私が、「私も間違っている」と気がついたのだ。
それは私の自信や自尊心を大きく揺さぶることになったが、その分、周りに目を向け、新しいことを受け入れる余裕にも繋がっていた。
とにかく、この思考のままでいたら環境を変えても人間関係はうまくいかないだろうことに気がついた。
今の場所に留まるか経理に異動希望を出すかを決める前に、まず自分自身を変えないといけないと悟ったのだ。
まずはできることから始めよう。
暗いオーラを出すのは止めよう。
仕事についても真剣に向き合ってみよう。
そう決めた私は、すぐに変化を感じることになる。
私が仕事ができない理由
暗いオーラを出すことはやめること。
仕事について興味を持つこと。
こう決めた私が最初に感じた変化は、いろいろな人に話しかけられるようになったことである。
他部署の先輩たちが、孤立していると思っていた私に話しかけてくれた。
そして仕事に関するいろいろな話を教えてもらった。
派遣スタッフが働いている会社を回っている先輩からは、それぞれの会社の雰囲気を教えてもらい、どのようなスタッフが求められているかのイメージをつけられるようになった。
派遣スタッフとクライアントとの面談の話を聞いて、仕事が決まりやすい派遣スタッフのイメージもつけられるようになった。
そして同じ部署の先輩もランチに誘ってくれた。
そしてやはり仕事の話をいろいろと聞いた。
そして、私はどうして仕事ができないかを理解していった。
怒られた本当の意味
他部署、自部署、それぞれの先輩の話を聞くにつれ、自分が注意された理由も分かってきた。
スタッフの特徴を覚えなければいけない理由
例えば、私が面談したスタッフの特徴を覚えられず、ノートにメモしていることが怒られた理由。
私の仕事の一番の肝の部分は、派遣スタッフを募集している会社と、派遣スタッフとして働きたい人をマッチングすることである。
それは、当時はこういう流れで行われていた。
派遣社員を募集している会社からオーダーが入る。
「〇〇社で営業事務を1人募集です。欠員補充のため、営業事務経験者が求められています。〇〇社は繊維問屋で、商品数が多いため、数多い商品を間違わずに扱える人を希望されています」
それを聞いた派遣スタッフ側担当の社員は、自分が面談した希望者を思い出し、手を上げる。
「〇〇さんという方が〇〇社のある心斎橋近辺でお仕事を希望されています。
前職は染料の会社で、商品数が多い部署の営業事務を10年されてました。
繊維用の染料なので、繊維の種類の知識もあります」
「では、その〇〇さんに、〇〇社を打診してください!」
システムが充実していなかった当時は、このようにアナログで仕事とスタッフのマッチングを行っていた。
なお、私がいた会社は当時から一人の応募に対し一人だけを推薦することを厳守していた。
当時は、一人の応募に対し4人も5人も面談に連れて行って1人を選ばせる派遣法違反の派遣会社も目立っていたのだが、私がいた会社は「遵法精神」が会社の特徴の一つだった。
そのため、このマッチングは相当ズレていなければ早いものがちで決まる。
つまり、派遣スタッフ担当社員がどれだけ派遣スタッフの情報を頭に入れているかがマッチングの鍵となる。
スタッフの特徴を覚えられない私に担当されているスタッフは、仕事が見つかる機会が少なくなってしまうのだ。
※なお、これは今から20年近く前の2001年時点の話で、その後わりとすぐ新システムを導入し、それ以降はここまでアナログではなくなっている
派遣スタッフのやりたい仕事をそのまま聞いてはいけない理由
私は、派遣希望者がやりたい希望は最大限尊重してあげたかった。
しかし、派遣スタッフを求める会社は即戦力を求めている。
未経験のスタッフでもいい、と言ってくれる会社はほとんどなかった。
希望者が未経験の仕事を望んでいる場合、そのままではいつまで経っても仕事が決まらないのだ。
中には、「時間ができたから新しいことに挑戦しようって思っただけで、急いで働く必要がないんです」と、自分の希望の仕事が見つかるまで、のんびりと待てる希望者もいる。
でも大半は、今すぐ働かないと金銭面で厳しい人だった。
のんびり待てるのか、すぐに働きたいのか、そこの希望を確認しないまま、希望者のやりたい仕事だけを聞いていては、本人の望みとミスマッチになる。
もしすぐに働きたいのなら、自分の希望をある程度諦めることが必要なことを伝えなければいけなかったのだ。
なお、以前の記事で書いた、事務職で働きたいけれどパソコンが使えない着ぐるみの中の人には、先輩がキッズ向けの洋服の販売職とマッチングしてくれた。
このお仕事は、業務終了後、在庫情報やショップの会員になってくれたお客様の情報をパソコンに入力し、お客様へのお手紙や店内のPOPもパソコンで作るため、パソコンの基本的な使用法が学べるのだった。
私との面談では販売職はイヤだと言っていたが、パソコンの使用経験がないと事務職は難しいと先輩が話をしたら、将来の事務職に向けての第一歩としてOKをしてくれた。
もともと着ぐるみの中の人として子供の相手は得意なのだから、会社側もパソコンの使用経験には目をつぶって大喜びで採用してくれた。
こういう調整が、私がやるべき仕事だったのだ。
知識が必要な理由
私の仕事のごく一部を切り取ったが、これだけでもあらゆる業界についての知識が必要なことが汲み取れる。
同じ営業の仕事でも、多くの繊維の種類や色を管理しつつ大量の発注を受ける繊維問屋の営業と、同じ部屋は1つしかないが単価が高いマンション販売の営業とでは求められる要件が全く違う。
同じ事務の仕事でも、力仕事の男性たちを取り仕切る建築現場の事務と、相談にくるお客様を対応する保険会社の事務とでは、事務所の雰囲気が全く違い、馴染めるタイプも違ってくる。
そういったあらゆる業種や職種の知識がないと、務まらない仕事だった。
それまでの社会経験が少ない私には、のんびり遊んでいる暇なんて無かったのだ。
※なお、ドラマにはこういった業界ごとの特徴を知ることができる、というメリットがある
見えてきたこと
仕事についての理解が深まるにつれ、理不尽に思えた先輩たちの言葉が理に適ったものであると理解できてきた。
そして、いろいろな先輩と話をすることで見えてきたことがある。
どうやら、私を無視したり、明らかに揚げ足取りな注意をしたり、そういうことをするのは2人だけなのでは?ということだ。
先輩たちの注意を理不尽に感じていたことが思い込みだったように、社内で孤立していると感じていたのも思い込みなのかもしれない。
そう思うようになっていった。
次回に続く
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