仕事ができないから嫌われている?嫌われているから仕事ができない?
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やることなすことうまくいかないNくんの話
転職当初は仕事がやることなすことうまくいかず、自分自身は激しく落ち込んだし、見ている方もイライラしただろう。
それが、支社の人とコミュニケーションが取れるようになるにつれて、少しずつ仕事もうまくいくようになってきた。
そのとき思い出したのが、新卒一社目の刺身トレー屋で同期だったNくんのことだ。
Nくんの大クレーム
同期のNくんは、私と同じ営業をやっていた。
Nくんの営業エリアは熊本と鹿児島で、1ヶ月ほとんど全部出張だったので、会社の人とあまり親しくなる機会もなかった。
Nくんは、人に相談せず一人で物事を進めてしまうタイプで、先輩たちから疎まれていた。
私から見たNくんの印象は、やることなすことうまくいかない鈍くさい人というものだった。
いまだに忘れられないエピソードがある。
一社目の刺身トレーメーカーでは、ふぐの刺身を載せる硬いプラスチックのお皿も扱っていた。
Nくんの担当のお客様からそのサンプルを求められ、Nくんはお皿を1枚送った。
どうやらそのサンプルがお客様のところに到着したときには割れていたらしく、新しいのに交換してくれと返送されてきた。
(ちなみに、安かろう悪かろうがモットーの会社だったので、お皿が割れることはよくあった)
何を思ったかNくんは、その割れたお皿を瞬間接着剤でくっつけてお客様のところに送り返したのだった。
お客様は激怒し、大クレームとなった。
食品を載せるお皿を接着剤でくっつけるなんてありえない!
私はこの話を聞いたとき、何でそんな馬鹿げたことをしたのだろう?とNくんに対して疑問に思った。
その数カ月後、Nくんは転職をした。
転職先では仕事がうまくいっていると聞き、あんなに仕事ができなかったNくんがうまくやっているなんてと内心驚いた。
Nくんが仕事ができない理由、もしかして?
しかし、自分もやることなすことうまくいかなくなって分かった。
あのときのNくんは、周囲の人に相談することが怖かったのだろう。
相談しようとしても無視されたり、聞いてくれても「こんなことも分からないの!?」と言われたりするのが怖くて、割れたサンプル品の扱いですら相談できなくなっていたのかもしれない。
周囲の人の視線が気になると、自分がやっていることを隠すようになる。
そうなるとやれることも限られてくるので打ち手の数も限られる。
人からはコソコソしている印象になり、ますます疎まれる。
疎まれている空気が伝わってくるので、更に何もできなくなる。
話しかけられるのが怖くなるので頑なになり、頑固にもなる。
もしかしたら、最初のボタンの掛け違いがどんどんと大きくなり、やることなすことうまくいかない人になっていくのではないだろうか?
やることなすことうまくいかないから嫌われているのではなく、嫌われているからやることなすことうまくいかないのではないか?
私はNくんのことを、やることなすことうまくいかない鈍くさい人だから先輩たちから疎まれていると思っていたが、Nくんのことをやることなすことうまくいかない鈍くさい人にしてしまったのは私を含めた周囲の人たちなのかもしれない。
これは大きな気付きだった。
仕事ができないから嫌われているのではなく…
当時の私がやることなすことうまくいかなかったのは周囲の責任だ、なんて言うつもりはない。
私が最初のボタンの掛け違いの原因を作ったのは間違いない。
ただ、このことに気づいた後、人を見る目が変わった。
「あの人、頑固だから皆から嫌われているんだよ」と聞いても、「皆から嫌われているから頑固なのではないか?」と思うようになった。
実際にそう言われて嫌われている人と話してみると、最初は警戒されるが、警戒が解けると本人もただただ悩んで迷っているだけ、ということばかりだった。
今の私は、「あの人は仕事ができないから孤立している」と聞くと、一人でも味方ができれば今よりも仕事ができるようになるだろう、と思う。
やることなすことうまくいかなくて仕事ができないと悩んでいる人には、自分に合った環境を探すのも一つの手だと伝えている。
ただ、何度も環境を変えても同じ状況になる場合は、自分がその環境を生み出している可能性が高いので、自分を振り返ってみたほうがいい。
あのときの私のように、ボタンの掛け違いの引き金を自分が引いている可能性が高い。
人事部からのメール
こうしているうちに、時が経ち、月が変わった。
人事部から全社員宛にメールが送られてきた。
それは新人事制度導入のメールで、いくつかの部署への異動希望者を募るものだった。
その中には経理部もあった。
ついに、決断するときが来たのだった。
次回に続く
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