12月の個別セッション、受付中です

B/S照合、マーケ編。残った難関…。連絡が取れない相手と仕事を進めるにはどうすればいいのか


シリーズ「会社員の歩き方、私の場合」の過去記事リストは→こちら

前の記事はこちら→ひょんなことで役員会議に参加が決定。「経営者視点」を学ぶ貴重な機会となる

2002年〜2003年

多少の失敗を重ねつつも、仕事は順調に進んでいた。
初めての決算も、手取り足取り教えてもらいつつ、なんとか乗り越えた。

私の仕事の一つである「B/S照合」もそれなりに進んでいた。
謎を解明するのはわりと得意なのだ。

しかし、致命的な欠点があった。
人を巻き込むのがとても苦手なのだ。

一人で進められることなら、どんどん進めることができる。
でも、誰かに教えを請うたり、質問したり、作業を代わりにやってもらったりすることがとても苦手だった。

人に頼めない理由は、相手に申し訳ないと思うから、と当時は考えていたが、もう少し掘り下げると、相手に面倒くさいと思われたくない、が正確なところだろうと、今では思う。

この欠点は「B/S照合」にも影響を及ぼした。
経理にある資料だけでズレの原因が解明できるのであれば問題なく解決できるのだが、そうではないものは解明が滞った。

未収入金:マーケ

苦労しながらも、他の人の手を借りつつズレを直していったのだが、どうしてもズレの原因が解き明かせない科目があった。
「未収入金:マーケ」という科目で、未だにシステムに登録するときの科目コードが105だったと覚えているくらい、悩まされた。

未収入金

未収入金とは、クライアントに請求する金額のうち、売掛金以外のものである。

この会社は人材派遣会社なので、派遣スタッフが働くことによって発生する請求額は、売掛金という科目で仕訳がされる。
それ以外のお金、例えば派遣スタッフが出張したときの交通費などは、未収入金という名前の勘定科目で仕訳がされる。

売掛金についてはシステム管理がされていたが、未収入金については発生件数が少ないため、各部署ごとにエクセル管理が行われていた。
そのため、請求漏れといった人為的なミスが発生しやすかった。

マーケ

「マーケ」とは、とある部署の略称である。
正式名称はマーケティングソリューション事業部で、営業職の人材を派遣する部署だった。
会社はそれまで事務職派遣をメインで行っていたのだが、新規事業として営業職の分野にも手を広げたのだった。

この部署から発生する未収入金がズレにズレまくり、追いかけることができなくなっていたのである。

というのも、会社がメインで行っていた事務職派遣であれば、派遣スタッフが出張に行ったりすることは少ない。
しかし、営業職派遣は、出張に行くし、接待もするし、外出先で備品の購入をするしで、他部署と比較できないほど未収入金が発生したのだ。

マーケに悩まされているのは経理だけではなかった。
人事も、「マーケでは人事が知らないうちに人が増えてる」と怒っていた。
法務も、「マーケは契約書を締結する前に人を送り込んでしまう」と怒っていた。

当時のマーケを一言で表すとしたら「イケイケドンドン」という言葉がぴったりだった。
とても勢いがあって売上がどんどんと上がっていくのだが、事務処理がずさんで後処理が大変、というのが、外部からの共通認識だった。

マーケ独自の特徴

マーケにいる数字を管理する担当の人に、私はメールと電話をし続けた。
「エクセルの34行目にある、N社の交通費、これって入金されてますか?」
「調べてみます」と言ってくれるのだが、調べた結果が私のところに戻ってくることはほぼなかった。
どうして返事が遅いのかと聞くと「ピーエムさんから連絡が来なくて…」と言う。

この繰り返しで数ヶ月が経過する。

経理部長からは「まだ分からないのか。なんで進まないのか」と詰められる。

まずは「ピーエムさん」が何者なのかを知るために、マーケの部署に足を運んだ。
事実は現場にしかないのだ。

派遣と業務委託

「ピーエムさん」について語るには、派遣と業務委託の違いを説明する必要がある。
会社は人材派遣会社だったが、このマーケという部署では、業務委託契約での仕事もしていた。

例として、家電量販店にいる、携帯電話販売スタッフを思い浮かべて欲しい。
ドコモとかauとかソフトバンクとかの各携帯会社ごとの揃いのジャンパーを来て販売をしているあの人達だ。

とある家電量販店で、とある携帯会社が販売キャンペーンをすることになる。
「販売スタッフを用意してください」という依頼を受けるのが、マーケの仕事だ。
キャンペーンチームの中の一部の販売スタッフを送り込むのであれば、それはただの派遣である。

しかし、中には「キャンペーンをうちの代わりにやってください」と丸投げされることもある。
それは契約形態的には派遣ではなく、業務委託となる。

このとき、そのキャンペーンというプロジェクトの陣頭指揮を取るのが「ピーエムさん」だ。
プロジェクトマネージャー(Project Manager)、すなわち「ピーエムさん」とは、「PMさん」である。

PMさんは、クライアントに課せられた「1ヶ月のキャンペーンで携帯電話を10万台売る」といった目標を達成するために、必要とあれば自分たちでPOP等を作り、販売に励む。

ズレの解明が進まない理由

派遣と業務委託は契約形態が違う。
人材派遣会社なので、派遣契約を管理するシステムは整っていたが、業務委託契約が管理できるようになってはいなかった。
システムの改修が進められていたが、当初の予定より随分と遅れていた。
それにしびれを切らしたのか、最初から待つつもりがなかったのかは知らないが、とにかくシステムの稼働を待たずに業務委託契約の受注が始まっていたのだ。

なので、業務委託契約は、現場でエクセルで作られた請求書が発行されていた。
数百億の売上を誇る企業で、まさか請求書がエクセルで作られているとはクライアントは思わないだろうが、当時はそういう状況だった。

そんな状態なので、契約の詳細な内容は、PMさんの頭の中にしかない。
そのプロジェクトで使用した経費をクライアントに請求できるか否かは、PMさんに聞かないとわからない。
それどころか、そのプロジェクトで使用した経費を請求したかどうかも、PMさんに聞かないとわからないのだ。

しかし、PMさんはプロジェクトにずっと張り付いている。
クライアントと握った営業目標を達成するために必死だ。

なので、日中に連絡しても、連絡がつかない。
質問しても返事が返ってこない。

私はすっかり途方に暮れてしまい、経理部長に「これを解明するのは無理です。いったんゼロリセットして最初から管理をやり直しましょう」と言った。
部長には「は?お前、自分が何言ってるか、意味わかってる?」と一蹴された。

何百万円にも膨らんだズレを、ゼロリセットなんてできるはずはない。
やっぱり、解明しなければいけないのだった。

次回に続く

次の記事は→B/S照合、マーケ編その2。PMさんたちとついに出会う

シリーズ「会社員の歩き方、私の場合」の過去記事リストは→こちら

この記事が参考になったら
いいねやシェアいただけると嬉しいです

Twitter で