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働くこと

「死ぬくらいなら辞めたら」と言わないで ブラック企業を辞められないのはなぜか

2017/10/13

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ブラック企業で自殺という痛ましい記事が出るたびに「死ぬくらいなら辞めればいいのに」というコメントを必ず見かける。
私もかつてはそう思っていた。

でも、自分がそこまで追いつめられたときに、「死なないと辞められない」と思った。
そして「死ぬくらいなら辞めればいいのに」という言葉を聞いて、誰かが簡単に言うことすらできない私はダメな人間だと、自分を更に追い詰めた。

あのときの私の精神状態はかなり異常だった。
だけど、自分では全く気づいていなかった。
そのときの心境を書こうと思う。
 

なぜ死ぬまで働いてしまうのか

そのとき何を考えていたか

・もっと頑張れば事態が良くなるはずだ
当時、自分の落ち度を責められまくり、心が殺されかけていた私は、私の頑張りが足りないから怒られるのだと思っていた。
頑張って、頑張って頑張って、全てを完璧にこなせば、怒られなくなると思っていた。

実際は、どんなに完璧にこなしても、重箱の隅をつついて怒られた。
もしくは全く無関係のことで怒られた。
まだ足りないのか、もっと頑張らなくてはいけないのか、とますます追い詰められた。

・責任を果たさなければいけない
社内でその仕事をやっていたのは私一人だったので、抜けたら大変なことになるだろうと思っていた。
どんなに怒られても、時々「この仕事ができるのは、しづかさんだけだよ。頼りにしているよ。」などと言われて真に受けていた。
頼りにされているのなら、期待に応えなければと思っていた。
今なら、怒鳴った後に甘いことを言うことで私の心を操ろうとしているだけと分かっているが、あのときは信じてしまった。

そして家族に対しての責任も感じていた。
ほんの僅かながらも給与は出ていたので、それが0になることに申し訳なさがあった。
夫はずっと「そんな会社は早く辞めろ」と言ってくれていたのだが、それでも踏ん切れなかった。

・情があった
同僚はいい人たちだった。
皆、怒鳴られまくり、ひどい目にあっていたが、それでも会社に来て頑張っていた。
こんないい人たちが頑張っているのに、自分だけ先に辞めるなんてできないと思っていた。

なぜ助けを求められなかったか

「死ぬ前に誰かに助けを求めればいいのに」というのも、よくあるコメントだ。
しかし私は、誰かに助けを求めることができなかった。
それはこういう理由からだった。

・友人に会うことが辛かった
転職したての心が元気なときは、プライドが邪魔をして友人に会えなかった。
意気揚々と転職をしたのに、入社1週間で怒鳴られまくってへこたれている自分が恥ずかしかった。
「仕事どう?」と聞かれたくなかったし、友人達が楽しそうに仕事をしている話を聞くのも辛かった。

心が殺されかけて、プライドなんてどうでも良くなったときには、どん底の自己評価が友人に会うのを躊躇わせた。
当時は、何をしても楽しくないし、心の底から笑うこともできなくなっていた。
こんな暗い表情をした私と会っても楽しくないだろうという思いがあって、友人に会うのを避けていた。

・自分だけ弱音を吐いてはいけないと思った
例えば「毎月残業が100時間ある」といったら「俺なんか150時間やっている」という人が必ずいるように、「今これだけ怒鳴られて辛い」といっても「いやいや私はこんな理不尽な怒鳴られ方をしたことがある」といったブラック度の競い合いというのが起こりがちである。
心が元気なときはそれも楽しいが、心が弱っているときには「あなたはまだまだ我慢が足りない」と言われているように聞こえるのである。

他の人達はこんなにも頑張っているのだから、私なんかが愚痴を言ってはいけない。
そう思いこんでしまって、「辛そうだけど、何かあった?」と聞かれても、適当なことを言ってごまかしていた。

・これ以上否定されるのが恐かった
上司から散々否定されまくられている話を誰かにしたときに、その人にまで「上司の言う通り、お前の努力が足りないんだよ」と言われてしまったら、二度と立ち直れないことに気づいていた。
私の努力が足りないのなんて知ってる、でももうこれ以上頑張れない。
そういう思いのときに、「もっと頑張れ」と言われることが恐かった。
だから誰にも何も話せなくなった。

これが心が死ぬということ

これを読んで、心の元気な人は「なんでそんなこと気にするの?!」と思うだろう。
でも、心が殺されかけると、こういったことでどんどん自分を追い詰めていく。
心が死にかかっていると、自己評価も判断力も低くなり、視野が狭くなるのだ。

死を選ぶ時

私は今は元気に暮らしているが、いっときは会社のオフィスの窓から飛び降りたいくらい追い詰められた時があった。

何度も会社を辞めようとはした

会社を辞めようと、何度も試みた。
その度に恫喝されたり、責任感がないと責められたり、共通の知り合いを指してその人の顔を汚すのかと言われたり、猫なで声を出されたり、家族のことを罵られたり、簡単に言うと相手のペースに巻き込まれて辞めることができなかった。

鎖に繋がれた象の話を知っているだろうか。
まず、捕まえてきた子象の足を鎖で繋ぐ。
鎖につながれた象は逃げ出そうと必死になって暴れるが、鎖と杭は頑丈で逃げ出せない。
それを一定期間繰り返すと、子象は観念して逃げることを諦める。
そうなれば、頑丈な鎖と杭は必要なくなり、細い鎖でも逃げ出すような行動はとらなくなる。

当時の私はこの象だった。
逃げ出そうと暴れる度に悪くなる環境。
常にどこかで響く怒声。
追い詰められて死んでゆく心。
私はすっかり疲れ果て、判断能力も低下し、逃げ出す気力を失っていた。

そのときの心境

ほんのちょっとしたことに希望を見出し、それにすがっている状態だった。
これさえ完璧にやれば、状況が良くなるかもしれない。
あの注文がとれたら、状況が良くなるかもしれない。
そして、その度に、その希望は打ち砕かれていった。

何度希望を打ち砕かれても、まだ他の希望を見出だせていたから、よかった。
もし全ての希望を使い果たし、絶望しきってしまったら、その瞬間から死に向かってまっしぐらに進んでいただろう。

私を救ってくれた言葉

心も身体も疲れ果て、視野がすっかり狭くなっていた私の目を覚ましてくれたのは、長い付き合いの先輩たちと友人だった。

目を覚まさせてくれた先輩たち

社長に、まともにやると法律違反になることを命令され、法律に違反せずに命令に応えるにはどうすればいいか悩んでいた。
ちょうどかつて同じ職場だった先輩達に会う機会があったので、命令に答える方法を相談したのが最初だった。

先輩達は驚き、「何が起きているんだ?」と聞いた。
私が会社の状況をかいつまんで説明すると、みんな大爆笑し、そして言った。
「お前がいる会社、ありえないくらい狂っているよ。ありえなすぎて、そこらのドラマより面白いって。」
「法律違反と分かっていて命令に応えようとするなんて、お前の頭もその会社に毒されている。早く逃げろ。」

私も自分がひどい状況にいるとは思っていたが、そこまで爆笑されるほどとは思っていなかった。
そして、自分がその会社に毒されているとも思っていなかった。

会社を何度も辞めようとしたけれど辞められないと話したら「もうそんな会社には明日から行かなくていいよ。」と言われて、とても驚いた。
何しろ先輩は、私がかつていた会社で人事部長をしていて、一緒にいた他の先輩も人事部と法務部で働いている。
人事や法務の人たちに「会社に行かなくていい」と言われるとは思っていなかった。

背中を押してくれた友人

その直後、古くからの友人にもこの話をし、「逃げろと先輩は言うけれど、今やっている仕事は私一人しかできないから逃げられない」と言った。
そのときはまだ会社から逃げるのは不可能と思っていた。

しかし、友人は言った。
「人間として扱ってもらってないのだから、人間としての責任を果たす必要はないよ。」

この言葉が決め手となって、私は会社から逃げ出すことを決意した。

何が救いだったのか

先輩や友人が、「何で早く辞めないの?」と聞いてきたら、私は自分の行動力のなさを責められていると思って、殻に閉じこもっていただろう。
私のいる環境を、それは変だと笑い飛ばしてくれて、私が悪いのではなく、その環境に毒されておかしくなっている、と言ってくれたことが、とても救いになった。

そして責任を果たせなくて落ち込む私に、そんな責任は果たす必要がないと言ってくれたことも大きかった。
自分に対する自信を少し取り戻すことができた。
この自信が私の心を生き返らせて、逃げるための力を振り絞ることができたのだ。

そのときに読んだ本

先輩たちと会った直後にたまたま読んだ本も、逃げようという決意を後押ししてくれた。
ヤクザについて書かれた本であるが、この本に出てくるヤクザの言動が社長の言動と全く同じだったのだ。
今、ブラック企業にいて苦しんでいる人には、これを読んで、相手の行動パターンを学んで欲しい。
ブラック企業で行われていることについて知りたい方にも、読んで欲しい本である。

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