ストレングスファインダーの個別セッション、受付中です

今でも第一線で活躍中の元オリンピック選手の反省会に圧倒された話

スポーツジム


私が通っているジムは、個人経営の小さいジムだ。

そこに通っているアスリートがいる。
野球やサッカーといったメジャーな競技ではないため彼を知る人は多くないかもしれないが、その道30年以上のベテラン選手だ。
この競技における歴代最高記録をいくつも持っていて、オリンピックにも複数回出場している、この競技を知るものにとっては神様クラスの選手である。

50歳を過ぎ、全盛期ほどの輝きはなくなったと言われているが、それでも今も第一線で戦っている。

先日、この選手と、ジムの時間帯が一緒だった。

隣で交わされる会話を聞いて、この選手が長い年月、活躍している理由を理解した。

ベテラン選手と専属トレーナーの会話

このジムは少し変わった形態で、壁一面に大きな鏡があり、床の半分以上がマットで埋め尽くされている。
メンバーはそのマットの上で鏡を見ながら体の調子を確認し、その日の体調に応じたトレーニングメニューに移っていく。

私の隣に例の選手がやってきて、彼の専属トレーナーと話し始めた。
2日前に試合があったようで、その試合について語り始めた。
とても残念そうな口調で試合を振り返っている。

私は、その振り返りの緻密さに驚いた。

自分自身のコンディション

選手は言った。
「重心が少しずれているかもしれない。身体が思った方向に動かず、少し流れる感覚がある」

マットの上でいくつかのポーズを試し、身体の重心を確認していた。
専属トレーナーがほんの僅かなぶれている部分を指摘する。
数mmのズレが命取りになると言わんばかりに、バランスを細かく確認していた。

勝てなかった原因を探る

次にトレーナーが試合を言葉で再現し始めた。
ポイントとなった場面について、綿密に描写する。
隣にいる私にも情景が思い浮かぶような綿密さだ。

トレーナーは話を止め、選手に聞いた。
「相手が迫ってきたこの場面で、どうしてあなたは一歩踏み出さなかった?」

選手は答えた。
「もう体力に限界が来ていて、踏み出しても互角に争えるか躊躇ってしまった。
その瞬間に相手に詰め寄られ、どうすることもできなくなってしまった」

トレーナーは頷いた。
「なるほど、体力が足りなかったことが原因なんだね」

私はここで、次は体力をつけるトレーニングに移るのだと思った。
しかし、話は続いた。

トレーナーは言った。「ではどうして体力が持たなかったのだろう?」
そして、その日の試合について、スタートから一つ一つプレーを確認し、無駄な体力を使った場面を洗い出していった。

この選手は50代だ。
30年以上活躍している選手だ。
トレーニングで体力をつけるフェーズは、とっくの昔に過ぎているのだろう。
今ある体力を必要なところに全て注ぎ込むことが重要なのだ。

たとえわずかな無駄な動きであっても、積み重なると命取りになる。

その無駄を探すために、試合開始直後から全てのプレーを振り返り、ほんの小さな余計な足の踏み込み、腰が引けたところなどを全て確認していた。(なお、一試合数分の短時間で勝負が決まる競技である)

次の試合に向けて

全ての確認が終わると、トレーナーは言った。
「今回の相手はSさんだったけど、もしYさんだったらどうだろう?」

選手は答えた。
「YさんはSさんよりも持久力があるタイプ。Yさんにはあのやり方は通用しない」

「それではもしYさんだったら、どういう対策が必要だろう?」

そして、相手がYさんだったときの試合展開を想定し、シミュレーションを始めた。

私はここで時間が来て違う場所に移ったのだが、冒頭部部分だけでも情景が目に浮かぶ、リアルなシミュレーションだった。

実際の試合の結果は…

私は、家に帰った後、直近に行われたこの選手の試合の映像を探してみた。
Youtubeにアップされていた。

なるほど、実際にはこういう場面だったのか。
選手とトレーナーの振り返りと照らし合わせて、この時こういうことを考えていたんだよな、と興味深く試合を見た。

最後の最後、私は驚いた。

なんと、その選手が、勝利したのだ!

確かに途中追い詰められたシーンがあった。
なんとか相手をかわし、一歩前にでた。
そのまま勝利するかと思った瞬間に、相手の猛攻にあい、ギリギリの勝利だった。

それでも、勝利したのだ!!

ジムでの二人の口調で、私は負け試合の振り返りだと思ったのだが、実際は違った。

勝利したのに、その内容に納得がいかなく、まるで負けたかのように残念がっていたのだ。

活躍し続ける理由

もしこの選手が新人だったら、私は「とても頑張ってるなあ」という感想で終わっただろう。

しかし、この選手は30年以上も戦い続けているベテラン選手だ。
オリンピックにも出場し、多くの記録を持っている、圧倒的な実力を持つ選手なのだ。

その選手が、ここまで細かく試合を振り返り、ほんのわずかな至らなかった部分を拾い上げている。

実力が不足しているのを補うのではない。
実力はもう充分ある上で、更に向上するために無駄を削ぎ落としているのだ。

トップアスリートがトップアスリートである理由を知り、感服した。

第一線で輝き続けている人が持っていて、私が持っていないものを目の当たりにした。

これが、トップクラスのプロが日々やっていることなのだ。
 

※トップ画像はフリー画像素材サイトPIXABAYさんからお借りしたもので、私が通っているジムとは無関係です

この記事が参考になったら
いいねやシェアいただけると嬉しいです

Twitter で