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創業者の思いは社員には伝わらないことに気がついた話


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フリーター時代のアルバイトの話

次の就職の話の前に、税理士試験受験生時代のアルバイトの話をいくつか。
アルバイトとはいえ、学ぶことが多かった。

この頃、私は3つの仕事の掛け持ちをしていた。
スーパー等の試飲販売の仕事と、喫茶店のウェイトレスと、携帯電話会社のコールセンターだ。

試飲販売の仕事についての一番の学びはマーケティングの基礎だった。
売れない商品を、見せ方を変えることで売れるようにする醍醐味を知った。

その詳細はこの記事に書いたので、ここでは割愛する。

カフェでの話

税理士試験に本腰を入れることを決めた私は、継続してできるアルバイトを探した。

条件は3つ。
・学校が始まる前の早朝の時間帯に入れること
・交通費が支給されること
・場所は梅田であること

単純に言うと、学校までの定期券が欲しかったのだ。

そして、条件にピッタリと合致した、JR大阪駅内のカフェのアルバイトを始めた。
そのカフェはオープンして1年ほど経過したチェーン店で、当時の大阪駅内のカフェの中では値段が高めの部類に入る店だった。
(なお、今はもう存在しない)

尊敬できるバイトリーダー

お店には、1日1回本部から社員が見に来たが、基本はアルバイトのみで回していた。

お店のオープンからいる女性がアルバイトリーダー。
彼女はいつも真面目な表情で、クールビューティーと言えば聞こえはいいが、とっつきにくさも同時にまとっていた。
厳しい人でもあり、いつもイライラしているようにも見えた。
そのため、他のアルバイト達は積極的に関わろうとはしなかった。

しかし、私は彼女が好きだった。
と言うのも、彼女の入れるコーヒーの香りが素晴らしかったのだ。

コーヒーは他のアルバイトが入れることもある。
けれども彼女がコーヒーを入れると、例えホールにいても「あ、リーダーがコーヒーを入れてる」と分かるほど、コーヒーの香りが華やかに開き、どこまでも漂ってくるのだ。

リーダーの思い

ある日、たまたま休憩用のロッカーでリーダーと一緒になった。
リーダーが世間話をするイメージがなかったのだが、構わず話しかけてみた。
「リーダーの入れるコーヒーの香りって、他の人のと全然違いますよね」

リーダーは、突然話しかけられたことに驚き、私が発した言葉の内容を理解してもう一度驚き、そして控えめににっこりと笑った。
そして教えてくれた。
「このお店が開店する前にな、アルバイトは全員神戸に行ってコーヒーの入れ方を習ってん」
そして、神戸に本社のあるコーヒーの有名企業の名前を彼女は口にした。

彼女は続けた。
「この駅、いつも慌ただしいやん?だからな、コーヒー飲んでる間は時間を忘れられる店にしようって言うてな、必死に特訓したんやで」
そして悲しそうに言った。
「でも社員さんも違う人に変わって、もうその頃の思いが分かる人、誰もおらへん。。。」

私はそれを聞いてびっくりした。
なにせ、私がその店を選んだ理由は「定期券が手に入るから」である。
お客様にゆったりとした時間を提供しようだなんて、ひとかけらも考えたことがなかった。

他のアルバイト仲間もそうだった。
コーヒーを入れるときも、お客さんを待たすより早くさっさと入れよう、くらいのことを話していた。
時間を忘れられるコーヒーがどういうコーヒーかなんて、一言も話したことはなかった。

他のアルバイト仲間の反応

私は、他のアルバイト仲間にこの話をしてみた。

「そうだったんや」と私と同じように驚いて、何ができるかを一緒に考えたアルバイトもいた。

でも大多数は、「ふーん、でも私アルバイトだし、関係ないし」という反応だった。

私を含めて皆、このお店のコンセプトを知らずアルバイトを始めている。
これが最もな反応だろう。

創業の思い

私はこの後、経営者のすぐ側で仕事をする機会に恵まれる。
何人もの経営者の方の側にいたが、共通して感じたのは「創業者の思いは社員には伝わらない」ということだ。

創業者と社員との温度差

創業者には創業者の思いがある。
自分の人生を掛けてでも成し遂げたい思いがある。

しかし、社員には社員の生活がある。
生活があった上での仕事である。

この温度差は埋められない。
そして、温度差があることに気づくのは経営者の方であり、多くの社員は温度差に気づいてすらいない。

私は、このときのバイトリーダーとの話がきっかけで、温度差があることに気がついた。
経営者に信頼してもらえるようになったのは、この温度差があることを前提で話ができるのが、一つの要因だと考えている。
経営者が思いに誰も気づいてもらえないと一人で歯痒い思いをしているときに、そこに寄り添うことができるのが大きいと考えている。

ストーリーの共有

では、創業者は、誰も温度差に気づかないと悲しい思いをしていないといけないのだろうか?

創業者の思いの裏には、どうしてその思いを抱くに至ったかのストーリーがある。
そのストーリーを伝えることで、伝わる熱が必ずある。

誰にでも伝わるものではない。
「ふーん、でも私社員だし、関係ないし」、という反応に傷つくときもあるだろう。

けれども、伝わる人は必ずいる。
その人は自分の思いをわかりやすく社員に伝えてくれるだろう。
悩んだとき、同じ思いで話を聞いてくれるだろう。

社内にいればベストだが、もし社外でもそういう人が1人でもいると、創業者の心の支えになる。

その人に出会えるかどうかが、企業を大きくするときの成功の一つの鍵だと考えている。

次回に続く

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