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元メジャーリーガーに会いにテキサスへ 阪急の助っ人バンプ・ウィルス アメリカ旅行記2016 vol.14


旅の最終目的地、テキサス。
ワシントン、フィラデルフィア、ニューヨークとアメリカ東部を周りつつ、なぜ最後に南部のテキサスかというと、会いたい人がいるからだった。

その名はバンプ・ウィルス
テキサス・レンジャースで5年、シカゴ・カブスで1年プレーした後、日本に渡り阪急ブレーブスで2年プレーした、元メジャーリーガーだ。
私の夫がなぜかFacebookでバンプと友達になり、もしテキサスに来ることがあるなら一緒に野球を見ようという話になったのだ。

バンプにもらった現役時代の写真

バンプにもらった現役時代の写真

本当にバンプに会えるのか?

これが単なるリップサービスなのかどうか、正直分からなかった。
しかし、会いたい人に会えるチャンスが一欠片でもあるのなら、馬鹿なふりして社交辞令を鵜呑みにしてしまえ!
もし会えなかったとしても、今まで行ったことがない球場に行けたと思えば無駄足にならない。
行かない理由はどこにもなかった。

観戦当日が近づくにつれ、バンプから頻繁にメッセージが届くようになった。
「どこの席で観戦しようかと妻と話しているんだ」
「チケットを今日受け取りに行ってきたよ」
「試合観戦前にキャプテン・モーガン(球場内にある飲食店)で軽く食事をしよう」

そしてついに、「明日は6時に一塁側入口で会おう」というメッセージと、「現在の俺を知らないだろうから」とバンプと奥さんが仲睦まじく写っている写真が届いたときは、驚きのあまり意味もなく立ち上がってうろうろしてしまった。
バンプよ、本気で見知らぬ日本人と野球を見るつもりなのか!

約束の当日、待ち合わせ

約束の当日は、朝早くからの移動で慌ただしかった。
球場近くのホテルに荷物を置き、球場へ向かう。
待ち合わせ場所に指定された一塁側入口はすぐに見つかった。

これは三塁側入口。一塁側入口に着いたときは既に精神的余裕を失っていたのか写真を撮っていなかった。

これは三塁側入口。一塁側入口に着いたときは既に精神的余裕を失っていたのか写真を撮っていなかった。

待ち合わせ時間までしばし待つ。
「本当に来るのかな…」と思う私に対して、「本当に来たらどうしよう…」と呟く夫。
私はバンプの現役時代を覚えていないが、夫は子供の頃から西宮球場で阪急戦を観戦していたので、バンプには強い印象がある。
私は元メジャーリーガーと会えるというミーハーな気持ちでここに来たが、夫は幼い頃に見た憧れの選手に会うためにここまで来た。
そういうわけで夫は、バンプに会いたいのか会いたくないのか本人もわからなくなるほど、すっかり緊張しきっていた。

本人、登場!

その夫が突然「うわわわわわわ!」と奇声をあげた。
(「うわわわわ」とは漫画の背景に描かれる擬声語の一種だと思っていたが、どうやら人は驚くと実際にそういう音を発するようだ)
「バ、バンプ来たー!」と震える夫の視線の先には、背はそんなに高くないが体格の良い男性がいて、こっちに向かって歩いてくる。
慌てて駆け寄る我々に気がついて、両腕を拡げて迎えてくれるバンプ。
「I’m glad to meet you.」という教科書通りの挨拶を、こんなにも感情をこめて使ったのは生まれて初めてだ。

バンプからチケットをもらい、バンプ夫妻、バンプ隣人夫妻、我々夫妻の総勢6名で入場する。
チケット

チケット代をどうすればいいのかは、我々の悩みの一つだった。
バンプは出してくれるつもりらしいが、ここは一応払う素振りを見せたほうがいいのか、ありがとうと受け取っていいものか、『初めてのデートマニュアル(女性編)』なんてものを読みたくなるくらい悩んでいた。
しかし、渡されたチケットの金額欄には、$0.00と書かれている。
よく見ると、小さな文字で「comp alumni」(無料優待 卒業生)と書いてある。
なんと元メジャーリーガーは、無料で試合を見られるのだ!

いきなり一つ豆知識を得られた嬉しさと、悩みが解決した安堵感でテンションがあがる。
チケットアップ

試合前にお食事

前もってバンプが話していたとおり、球場内の飲食施設、キャプテン・モーガンへ向かう。
キャプテン・モーガン内にはFOX SPORTSのスタジオがあり、プレゲームショーがあと少しで始まるところだった。
その準備をしていた解説者が、突然こっちに向かって走ってきた。
マーク・マクレモア
19年もの長い間、テキサス・レンジャースを含む数球団で活躍した元メジャーリーガーで、バンプと同じ二塁手だ。
談笑する2人を見て、「メジャーリーガーの友達はメジャーリーガー」という当然の事実に圧倒される。
談笑
バンプとマクレモア

試合前のキャプテン・モーガンは残念ながら満席で、外のテラスでビールを飲む。
バンプからメッセージ入りのサインボールと、サイン入りの現役時代のポートレートをもらい、感激する。
我々も持参した阪急ブレーブスのブレービーTシャツと広島カープのプリッツと福岡あまおう苺味のキットカットを渡す。(キットカットに一番興味を示していた)
夫が持参した阪急ブレーブスのユニフォームにサインを貰う。
サインを貰う

試合開始

そんなこんなのうちに、試合開始時刻となって、席に向かった。
バンプの用意してくれた席は、三塁側の通路側で、試合は見やすく買い物にも行きやすい席だった。
試合自体はグダグダだった。
両軍合わせて残塁20。エラーもあれば、四球も死球もあり警告試合になるほどの荒れた試合だったので、自然と試合そっちのけになる。

キャプテン・モーガンで試合前に軽く食事をする、という目論見が外れたため、球場内の売店で何か買おうという話になる。
バンプにオススメを聞いたら「ナチョス。テキサス名物だから食べとけ。」と言うので、それとホットドッグを買ってもらう。

トルティーヤ・チップスにチーズソースがかかっただけのシンプルなナチョスだが、ビールと合わせると止まらなくなる美味しさ。
時々バンプが「テキサスの人は辛いのが大好きなんだ♪」とハラペーニョの薄切りをナチョスに載せてくれる。
ハラペーニョの辛さがチーズソースに包まれて程よい辛さとなり、更にビールが進む。
ナチョス

まさかの申し出

バンプの2杯めのピールが残り少なくなったときに、次の一杯は私が買うと申し出る。
チケットにビールに食べものと、バンプに甘えっぱなしのため、せめてものお礼のつもりだ。
そうしたら意外な答えが返ってきた。
「アルコールはそう強くなくてビール2杯で充分なんだ。次は綿あめが欲しい!」

わ…綿あめ。
元メジャーリーガーが、綿あめ。
いや、別に、もちろん全く悪くない。
しかし、なんというか、ほら、1980年代のプロ野球選手って、お酒たっぷりお肉がっつりというイメージじゃない?そう思うのは私だけ?
そこからの綿あめ。
まさかの綿あめ。

でも本人が欲しいというものを否定してもしょうがない。
バンプは、遠くにいる綿あめ屋がこちらに来るのを待てずに追いかけようとしている。
慌てて後を付いて行く。

「キャラメルポップコーンも好物なんだ♪」とバンプが言い出す。
元メジャーリーガーは甘党だったのか。
こうなったらハーシーズでもスニッカーズでも何でも来い。
キャラメルポップコーンももちろん買う。

綿あめを手に野球を見るバンプ

綿あめを手に野球を見るバンプ

バンプはどうしてバンプなの?

バンプに聞いてみたいことがあった。
「バンプ」というあだ名がいつどんな由来でついたかだ。
バンプのフルネームは、エリオット・テイラー・ウィルス。
「バンプ」と呼びたくなる要素はひとかけらもない。

しかし阪急ブレーブスでの登録名は「バンプ」だった。
通常であれば名字での登録となるが、バンプの名字が「WILLS」、同期入団のブーマーが「WELLS」で紛らわしいからとニックネームの登録となったのだ。
このとき、ブーマーにはブームを呼ぶ男としてブーマーと名づけられた。
だからてっきりバンプも日本で付けられたあだ名だと思っていたのだが、来日前のテキサス・レンジャース時代もバンプ・ウィルスで登録されている。
そしてバンプの奥さんもバンプのことを「バンプ」と呼ぶ。
日本限定のあだ名ではなさそうだ。

バンプの答えはこうだった。
「お母さんのお腹の中にいた時、お腹を蹴りまくっていたので、「バンピー」と呼ばれていた。
生まれた後も足をバタバタ動かして、周りのものを蹴り倒して壊すような赤ん坊だったんだ。
それで「バンプ」と呼ばれるようになったんだよ。」

なんと、バンプは生まれる前からバンプだったのだ!
いまだにテキサス・レンジャースのシーズン盗塁記録を持つ脚力自慢の選手は、生まれる前から脚力が飛び抜けていたのだ。

BUMPの道路標識とバンプ

BUMPの道路標識とバンプ

バンプとモーリー

すっかり夜も更けた試合終盤。
「これ誰か分かる?」と1枚の写真を見せられた。
バンプの隣にドジャースのユニフォームを着た人が立っている。
モーリー・ウィルスだ。
元メジャーリーガーでシアトル・マリナーズの元監督であり、それよりなによりバンプの父親である、モーリー・ウィルスだ。
若きメジャーリーガーとコーチとなった元メジャーリーガー父子が寄り添う、ここはどこの球場だろうか…。

私の脳裏に、トウモロコシ畑を切り開いて造られた球場が浮かんだ。
映画「フィールド・オブ・ドリームス」のラスト、父子でキャッチボールをするシーン。
喧嘩別れをしたまま死別し、トウモロコシ畑の球場で再会した父子が、無言でボールを交わすあの静かな場面。

バンプが手にする写真の父子2人は、穏やかに微笑んでいる。
アメリカにとって、野球はやっぱり特別なスポーツで、フィールドは特別な場所なのか。
写真を手渡してくれたバンプの誇らしげな笑顔と、写真の中の面差しが似た2人の笑顔を見て、胸がとても熱くなった。

バンプ親子

アメリカ旅行記一覧

vol.1 ダレス国際空港からワシントンDCへの移動
vol.2 サンダーグリル ワシントン名物クラブケーキをユニオン駅で食す
vol.3 PRET A MANGE ワシントンでの朝食と観光地散歩とフィラデルフィアへの移動
vol.4 フィラデルフィアからニューアークへ移動
vol.5 ブルックリンとマンハッタン、NYの2つの街を散歩
vol.6 ニューアークからテキサスに移動
vol.7 最終日、テキサスからサンフランシスコ経由で帰国
vol.8 Good Stuff Eatery オバマ夫妻がお気に入りのハンバーガー店を訪問
vol.9 イチローはフィラデルフィアでも愛されていた
vol.10 シチズンズバンクパーク、フィリーズの本拠地の楽しみ方
vol.11 アメフトを本場アメリカで見る方法 メットライフ・スタジアム
vol.12 アメリカのお袋の味 トムズレストランのパンケーキ
vol.13 ハッピーアワー!グランド・セントラル・オイスターバーでお得に牡蠣を食べる
vol.14 元メジャーリーガーに会いにテキサスへ 阪急の助っ人バンプ・ウィルス
vol.15 レンジャーズの本拠地、グローブライフ・パークの紹介

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